「ソードアートオンラインⅡ(TVアニメ動画)」

総合得点
88.2
感想・評価
3900
棚に入れた
22333
ランキング
125
★★★★☆ 4.0 (3900)
物語
3.9
作画
4.1
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.0

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ネタバレ

migratory さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9
物語 : 2.5 作画 : 3.0 声優 : 2.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

すくう話とすくわれる話。朝田詩乃と霧ケ峰とうごろう(そこの人)、紺野木綿季とアスナ、ふたつの対照的な物語。

ファントム・バレット編(第1~14話)とマザーズ・ロザリオ編(第18~24話)の感想。

ファントム・バレット編は、ガンゲイル・オンラインの世界を舞台とした物語。
たとえば、戦っている女性というのは告白をする男性より告白しない男性を選ぶ傾向にあるのではないか、と感じる物語。

そんな女性が告白をする男性と付き合おうとしないのは、社会で生きてゆくために、自身の価値基準ないし判断や確たる地位を手に入れたいとの思いが根底にあるからか―。更に女性の立場として、告白をしてきた男性を受け入れないのはそこに「甘え」のようなものを感じるからか―。単に関係を築く余裕がないからか。はたまた、そのような間柄で築く男女関係には良しとしないからだろうか。

今までの「ソードアートオンライン」より女性に趣きを置いているのではないかと感じています。それは単純にGGO(ガンゲイル・オンライン)というフィールドの特性が男性優位に働く世界だからということより、登場人物が少ないため感じる印象のように思います。そのため物語として分かりやすい設定にあり、これまで見てきたSAOとは違って、唐突に始まって終わる1話ごとの物語ではなく連続性を感じられる作りになっています。つまり前話との繋ぎを必要としない、物語が唐突に始まって終わるスタイルではない仕上がりになっていると感じます。


GGOの舞台は荒れ果てた遠い未来の地球で、これまでのSAOにはない銃器による銃撃戦が主(剣武器もある)です。プレイヤー及び参加者は銃器の特性を用い、自分だけの能力構成(ビルド→筋力、敏捷力、耐久力、器用度などの6つのステータス上昇や数百種類のスキルの駆使)を構成させていきます。また、実弾銃と呼ばれるものは現実の銃器をモデルとしているため、性能などリアリティーを感じさせる部分が魅力とも思えるので、導入部分は長くなってしまいがちです。また、参加者はいわゆるガンマニアが多いという設定。

その世界にはそこで生計を立てるプロゲーマー(月20~30万円稼ぐ)が存在しており、チームを組んで戦闘をするなど、銃器を扱う体力面やオタク性など男性優位に働いていると感じる―そんな世界からか女性が極端に少ないです。
そんな極端な世界で、社会に迎合しないで戦ってゆくことに現代を投影してる気がします。

なお、もっぱら主人公であるキリトはスペックの高い少年ですが、社会に飛び込んでいく姿勢というのは少し見習うところもあるのではないかと思うこともあります。

キリトは大人になりきれていない子どもという印象があります。そして、それを少し穿った見方をするとキリトは30代後半から40代の男のニオイがぷんぷんします。実際ニオイはしないのであくまで例えですが、中年的(中性的ではなく)です。
勿論キリトは大人ではないので、子どもなのに大人になりきれていないという言い方には矛盾してますが、なぜかしっくりきてます。
というか、彼はおっさんです。子どもっぽいおっさんです。理由は一夫多妻制を体現している点からという偏見を持って相違ないですが、妙な自信を持っていることからそこに不可解な大人っぽさを感じさせます。
たとえば、キリトが自身の夢を語るとき、ゲームを作る側になりたいという漠然な目標から具体的に「現行のフルダイブ技術に取って代わるマンマシンインターフェース」を作りたいという目標を挙げています。素人にはなんのこっちゃ分かりません。でも、素人に分からないことをそのまま口にする発言は、ある程度素養のある人間なら分かり易く「プログラミング技術を上げたい」という言い方でもいいような気がするし、わざわざ明言することは自身の夢を狭めることであり、寧ろ客観的感知を要するインターフェース技術においてその真っ直ぐな発言は意見を多面的に持っていない証拠とでも言えるでしょう。もしそれを理解できていないのであれば彼はごく小さな世界の集合体の内で生活している人間ではないかという見立てすら思い立ちますが、彼が大人であるならば納得できます。そもそも彼には素養がないのかもしれませんが、大人であれば自然と視野は狭まっていくものであるとともに、実行したい夢が具体的になるのは当然です。
しかも、「作る側になりたい」ではなく「なろうと思う」という強い確信を持った発言をしています。
でも、いくら仮におっさんだと決め付けてしまっても彼の考えに至るところが幼い点でそうとは言い切れないのも確かです。その強固な姿勢には寧ろ夢中になれるものがある彼の純粋性を感じます。その一方で、それが間違った選択ではなかったのかと思う後悔やそれに付随する苦悩に切り替わるとき、彼は彼自身と向きあって考えなくてはならない、そういった問題性も多くある(が、後々その内省は自ずから省みる問題となっているのではなくて外部からの影響で結果的に内省される問題ではあるが)のだから、そういった点でまだ幼いとも言えます。
その問題についての、どういった対処ないし行動をとるのかについてが物語の見所と解釈します。

特に単独的に行動する孤高とでも言える彼=大人と判断すれば当然なのかもしれませんが、子どもと見るなら、問題はつき物なので、「夢」は明言しないことをお勧めします。
まとめて言うと、いわゆる厨二病でも確かな自分の価値観を持ち、それを理解する仲間を持っているという体現を成しているところにヒーロー性を感じられる主人公なのだと考えられます。

基本的には、いちゃいちゃしているだけの1~3話ですから実質物語が始まるのは4話からです。
率直に意見すると、3話までは前シリーズの遺恨のようなものが語られていくばかりで、物語は始まりません。
また、もう一人の主人公「シノン」の苦悩するところも描かれていますが、SAOの世界観を説明するものとするには唐突なので、それは物語の始まる本編で明かされれば良い内容(序盤にする話としても重い)だと仮定した上で1~3話分の意図するところが消化不良です。GGOの物語は総集編14.5 話「Debriefing」を見れば内容は把握できるかと思います。
※3話で彼の言う「様子見」とは浮気、と解釈したいです

ちなみに、OP主題歌の「IGNITE」という曲が個人的に一番好きで、SAOの世界とシリーズ最高と言えるまでにリンクしている曲だと思えるのですが、「迷わずに今、矛盾だらけの世界をその手で打ち放て」という歌詞には矛盾を感じさせるだけの悪意があるように思います。

その中にある矛盾とは、キリト無双すぎることへの比喩、つまり構築された世界の困難さをチート機能で一蹴させてしまうことを差しているのではないのか、という妙な勘繰りを起こしてしまうから、マジで言っているのか狙ってのことなのかが分からない時点での評定は、単純に好きとは言い難いです。
打ち放て=自殺や或いはテロ行為の推奨を表しているように感じさせてしまうことが、その悪意と言える所以です。

たとえば仮に、それを反対の意味に解釈して
「迷ったりしてもいつか、この正しいと言える世界をこの手じゃないもので紡ぎ合わそう」
と言えた方が希望的で、このSAOの世界が根底に訴えたいことが真摯に伝わるような気がします。




「キャリバー」編についてはキリトの苦悩とは何だったのかを考える必要があるため触れませんが、「マザーズ・ロザリオ」編はちょっと長めに総括。

絶剣との出会いから始まる「マザーズ・ロザリオ」はアスナ編といっても過言ではないくらいにアスナがフィーチャーされていて、彼女の悩みの部分が明かされます。
性格が思ったよりヤンキー体質なんだと感じました。アスナの技?母直伝・精神攻撃が母とのバトルで開花する。
役割が彼女を強くしているってことに気がつけば楽になるのにね。家庭環境の悪い子はワルい人に嵌まると言うけれど、彼に付きっきりだと道を狭めてしまうというのは母親側の意見に同意せざるを得ません。少なくても彼女に必要なのは「courage」じゃなくて広い視野を知覚できる経験なのかも。でも、なんとなく、しぶとく生きていく気がする、彼女は。
いつかユウキに結婚を勧めたとき、相手にキリトを引き合いに出すことがなかった点で女子の怖い部分を持ってると感じたので。

それぞれのキャラについての感想も。
リズペットについても鯖読んでる疑惑を感じる。「もしかしてお見合い?」って言ったので彼女を30代前半くらいと見積もった。10代の言う「お見合い」という言葉にとても違和感を感じるのがその本意するところで、仮にアスナが日頃からお見合いの話をしていて日常化している言葉だとしてもそれを節操なく話してしまえるというのは10代の交わす会話ではないと思ったもので(現実ではあり得るけれど、ヒロインが言う言葉とは思えず)。
ユウキのキャラクターは初見で見たイメージでは少年だと感じていたので、あっというまに登場したり説明で補足されるだけの「絶剣」という存在での登場だったなら無理に設定を作らなくても良かったのではと思える。しかも、少年ではなかったので、作中に絶剣との落差というものを感じさせてほしい思いではあったからどういう気持ちでオンラインプレーに参加していたのか、なぜ等身大の姿でいたのとかの上辺だけじゃない下辺部分を彫り下げられていない気はする(結婚の年齢を意識してのユウキのキャラクターなのかな)。
アスナの壁を壊すような存在になっているので、ユウキの存在が必要になるのは、アスナの今のときじゃないと感じる思いです。

アスナの学校の古文?の先生も侮れない。顔の見えないユウキのことを「ゆうきさん」って呼んだこと(例えば、さん付けが義務付けられてる学校だとしても砕けた雰囲気の学校だと思ったので)や、いきなりユウキのことを名指ししたことから伊達に修羅場をくぐってきてねぇ先生だと思いました。
また、影ながら、アスナ母にはデレを期待していましたが、先に座ってアスナのことを待っていたり「がんばるのね」という言葉をかけたりできる優しさの、愛情を感じれる話は23話「夢の始まり」という意味深なタイトルで垣間見れます。
「マザーズ・ロザリオ」編の総評として「courage」ではユウキのことを歌っているように感じたのに、実際はユウキの話よりアスナ寄りの比重の話になっていたと感じるので、まっすぐ立つべき一本の幹のような筋道が示されるべきであって欲しかった。テーマを重要なこととして扱っているだけに。
SAOシリーズでも一番素敵な曲だと感じてる「シルシ」にはSAOのこれまでから最終を彩る曲としては素晴らしいんだけど、このストーリーに限って言うと明言はしていなくても死ぬことを前提にしている歌詞ではちょっとお粗末かなというところも見受けられるので、正直ユウキの存在が生ではなく死において意味を成していることにどう感じて良いのか分からない気持ちになります。


ソードアート・オンラインⅡ最終話、二人揃ってプロポーズしてる安寧さは本当に最終回らしい最後でした…。

投稿 : 2015/01/02
閲覧 : 235
サンキュー:

9

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