「喰霊-零-(TVアニメ動画)」

総合得点
88.6
感想・評価
4583
棚に入れた
20585
ランキング
103
★★★★☆ 4.0 (4583)
物語
4.1
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
4.0

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woa さんの感想・評価

★★☆☆☆ 2.0
物語 : 2.0 作画 : 2.0 声優 : 2.0 音楽 : 2.0 キャラ : 2.0 状態:----

ヒロインが闇落ちする理由

原作未読の自分は実際的な部分の設定(殺生石とか)がいまいちよくわからないため、彼女が闇落ちせざるえなかった心境を考えたいと思う。

本作のヒロインは退魔師という霊感体質の家系の長としての様々な責務(除霊、紀之との婚姻)に殉じる事を強要されながら、自身の優れた資質と家長としての立場を妬む人間たちの迫害を受ける。身寄りのない自分を引き取ってくれた養父の期待に応えるために自身が望んでいない責務に対しても真摯に取り組むのであるが、そのような心情がわからない外部の目には身をわきまえない不遜な行為として映るのである。責務そのものの困難と責務に対しての批判という内外の圧迫が彼女の中に分裂した感情を生んだことは想像に難くない。

世の中の穢れを祓うというヒロインたちの生得の責務とはなんだろうか?カッコいい霊を使いこなし、さまざまな特殊技能で戦えるなんて素晴らしいと思うかもしれないがよく考えて欲しい。

ヒロインたちがお勤めに行く際に学校側に講じる言い訳は「入院する母親の容態の急変」なのである。また彼女が霊に取りつかれた保険医を霊ともども斬った後、代わりの新任保険医が勤めで負った傷の手当をしてくれるのであるが、その際に前回包帯を巻いてくれたのが自分が昨夜斬り殺した保険医であり、彼女も新しい保険医同様にヒロインに優しい言葉をかけてくれたことを思い出すのだ。

これらのことから分かるのは、ヒロインたちの責務、その家に生まれた人間が生得の義務として行わなければならない世襲の世界は級友がそれはおかしいというように一般人を役割としてしか見れない視点なのだ。例えばヒロインにとって自身の婚姻は家と家を結びつける媒介としての意味しかない。お互いに惹かれあっていても家の決めた婚姻と見てしまうと好いているという感情自体も強制された煩わしい喧嘩のもとにしか思えなくなるものである。

つまり今日の保険医と昨日の保険医は役割において同じ「保険医」であり、「カテゴリー」Dの屍鬼となればそのわずかな個性も失い、見分けがつかないのである。家の責務に殉じる、常人には見えないものが見える、作中の霊感体質というのはこのような視点で世の中を眺めるということだ。

とはいえ、両親を霊に殺され退魔師に面倒を見てもらっているヒロインに責務以外の生き方など分からない。分からないのに他の人生を選ぶことは出来ないしそれは彼女の縁談への複雑な心情変化を見抜けなかった養父もまた同じ穴のむじななのである。行き場のない彼女の憤懣に追い打ちを受けるようにその責務に対して外野ならではの羨望や権力欲でもって親類が様々な妨害を行うのだから堪ったものではない。

しかし責務の困難や周囲の嫉妬など最終的には彼女の闇落ちにとって決定的要因ではないかもしれない。

一番ヒロインに堪えたのは同じしがらみを共有し自分を姉と慕うもう一人のヒロイン・神楽が剣術や料理の腕だけでなく責務や周囲に対する意識においても自分を超えた場所に行ってしまったという疎外感だろう。神楽は黄泉とは違って残酷な責務の過程でも学校の友達とも分かり合うことができるのである。このような日常描写は黄泉には一切無い。

親類との軋轢が決定的な段階まで進んでしまい未来の可能性が閉ざされたとき、結局黄泉は神楽にも自分の憤りや過ちの真相を話せず、彼女の前から永久に去ってしまう。

そして今度は自分を今まで縛ってきたあらゆるものに復讐を開始するのである。

黄泉は最期、私自身がどんな姿になっても妹を守るといい話は終わるのだが、今まで神楽が責務や周囲に対して絶望せずにいられたのは実は黄泉によって守られていたからではないだろうか。

洗脳下にある黄泉もこの疑似家族的関係に特別な感情を持っていたのは室長らの苦しそうにしていたという証言からもわかる。

自分のことを姉と呼ぶなと言って神楽に斬りつける黄泉は自身が作り上げた神楽との疑似家族を自ら終わらせるのであるが、これは神楽を自分自身の力で生きていかざる得ない状況に押し出すことでもあり、結果として神楽は黄泉の保護下から退魔師として、一人の人間として自立するのである。

最初黄泉の家に来た時の神楽には表情が無かったが、最後ようやく現れた主人公と表情豊かに会話しながら責務に励む彼女の姿は神楽を初めて現場に連れて行きいいところを見せようとはしゃぐかつての黄泉を思わせるのだ。

投稿 : 2014/11/23
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サンキュー:

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