「STEINS;GATE [シュタインズ・ゲート](TVアニメ動画)」

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★★★★☆ 4.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

タイムマシンは実在する??

 バカなことを言っているはずなのに、なぜか泣けた9話や22話の終盤。でも、どうもしっくりこない。

 タイムパラドックスの話ではなく・・・自分はこの物語の根本的なところが難解だったので自分なりに解釈した。

<世界線の移動について>
 少なくとも7話では以下のような話だった。
・キョウマが過去のキョウマにDメールを送信した
・すると、世界は別の世界線へ移動し世界は改変された

 ということは、
・改変された世界では、「キョウマがDメールを送信した」という過去は存在しない。なぜなら、世界は過去も含めて改変されてしまったからである。(これは送信履歴がないことで示されている)

 しかしこれでは、
・「世界が再構築された」という事実も存在しないことにならないか。

 いや、正確には次のように問うべきだろう。
「世界が再構築される」という「事実」はいったい「どこに」存在可能なのだろうか。(キョウマの記憶にしか存在しない、という設定だが、これはどういう意味か?最後で議論しよう。)

<観測されない事実は存在するのだろうか>
 以下のような設定がある。

・タイムトラベルをすると世界が異なる世界線へ移動するとTitorは説明する(2話)
・世界線の移動は誰も観測できないとTitorは説明する(7話)

 ここで2つの疑問が生じる。

・世界線の移動が誰にも観測されないのなら、「タイムトラベルをすると世界が異なる世界線へ移動する」ことがどのようにして「分かる」のだろうか。そもそも世界線が観測されないのなら、タイムマシンはあり得ないのではないか。
・Titorは自分が言っていることが「本当に」正しいのかを知らないのではないか。つまり未来のキョウマが言い残したことを受け売りしているだけである。これはタイムマシンに乗ってタイムスリップしてきたときのセリフからも伺えることだろう。(ちなみに、後ほどTitorがスズハと「判明」するわけだが、これもDメール送信によって世界線が移動したからかもしれない。つまりTitorがスズハではないという世界もありえたはずだ。)

<時間の前後関係はどうなっているのか>
 7話では、「キョウマが過去に宝くじの当選番号を書いたDメールを送信したら、世界は(キョウマの意図とは無関係に)ラボの机にドクペが置かれた世界線へ移動した。」ということになっている。ここで、「具体的な時刻」を仮定すると、次のようになり日本語が意味不明になる。

・15:00にドクぺが飲めなかったキョウマがDメールを送信したら、15:00のキョウマはドクペが飲めるようになった。
 つまりこれらは「時刻は同じ」だが「同じ時間の出来事」ではない。

<メタ時間とメタ世界>
 15:00にドクぺが飲めなかったキョウマの「後に」飲めたキョウマが存在すると「書いたり」「考える」からには、どうしてもそれを行う主体に「別の時間」が流れている必要がある。この時間は、様々な過去や未来を大局的に「神の視点」で観ている主体に流れるものである。
このメタ時間に基づけば、キョウマはタイムリープを繰り返したために既に何十年も生きているかもしれない。つまり「歳を取っている」ので実質的には「18歳ではなくなっている」。ただしメタ時間を刻む時計は「世界」に存在しないため、キョウマは実社会の中では「18歳として生きる」しかないだろう。
 同様に、「世界の再構築」という事実が存在するためには、そこに「メタ世界」を認めるしかないだろう。

<タイムマシンは既に存在しているのか??>
 キョウマがなぜ「メタ時間」を過ごせたのか?この問に対する答えは「リーディングシュタイナー」の能力の存在である。つまり時間移動前の記憶が維持されていなければ、時間を移動したことを認識することができない。
 しかしもうひとつ、重要な点がある。それは「記憶の欠落」である。時間の移動前後の不連続性である。つまりタイムマシンによって「一瞬で」20年後に移動すれば、ふつうは「今から20年間の経験をしない」のだから(「ふつう」というのは、一瞬で20年間の経験をするタイプのタイムマシンの存在の可能性も一応考慮している、ということだ。かなり苦しそうだが。)、「今から20年間の記憶がない」はずだ。
 さらに時間を縮めて、「夜10:00から翌朝の6:00にタイムトラベルする」としよう。そうするとその間の記憶がない。しかし類似した経験が身近にないだろうか。そう、睡眠である。もし、タイムマシンに副作用として「夢」や「眠気」がついてまわるのだとしたら、なおさら区別が難しくなる。もしかしたら、未来へ行けるタイムマシンは既に実現しているかもしれないのだ。

<だがしかしタイムマシンの存在意義とは??>
 しかし本来タイムマシンの目的は、「メタ時間」なるものを持ち出さずに「15:00にドクぺが飲めなかったキョウマがDメールを送信したら、15:00のキョウマはドクペが飲めるようになった。」という現象を実現することではないのか?というのは「メタ時間」の中では、時間は逆行していないが、本来タイムマシンは「時間を逆行」できなければその装置の意味がない。「メタ時間」「メタ世界」なるものを持ち出しても詭弁になるだけだろう。

<過去を変えずに結果を変える?>
 そもそも、1話におけるβ世界線と22話におけるβ世界線は「同一」なのだろうか。というのは、1話におけるβ世界線は、Dメールによって再構築されてしまうため、Dメールを送信したところまでしか存在しない。ところが22話では、キョウマは中鉢博士の記者会見のチラシを眺めている。クリスはラボメンではないことを確かめている。クリスが死んだのかどうかは明示されていないが、おそらく死んだのだろう。もしクリスが死んだと22話におけるβ世界線のキョウマが思っていないのならばクリスを探しに行くのが自然であるし絶望もしないはずである。そうすると、これは「β世界線のキョウマがDメールを送信した後の出来事」なのだろうか。しかしもしそうなら既にキョウマはα世界線に飛んでいるはずである。あるいは、キョウマはDメールを送信していないのだろうか。それならば、α世界線に行った経験はしていないことになる。というのは、世界の再構築によりβ世界線におけるDメールの送信が「無かったこと」になると、α世界線への移動も「無かったこと」になるからだ。このように矛盾しているので、1話におけるβ世界線と22話におけるβ世界線は別の世界線、と考えるしかない。結局キョウマは「元の世界線」に戻っていないのではないか??

<キョウマの身に一体何が起きたのか>
 そもそもキョウマは時間移動や世界線移動をしたのだろうか。他の可能性は考えられないか。たとえば、9話で「アキバから萌えが突然消えた」のではなく、「萌えの存在するアキバ」がそもそも夢であったかもしれない。「キョウマがある日高熱を出して倒れ、長い間眠っていて、気が付いたら白衣を着た大人になっていて、夢に出てきた人達がそこにいる。」という説明をしても矛盾はない。これについて、「それではマユシーはどうやってキョウマと親しくなったのか?」という疑問が沸くかもしれないが、「キョウマがラボで歩きながら寝言を話し続けていた」という説明をしてしまえばよい。もしそれが「夢」ならば、「これまでのこと」は存在しない。我々は、「夢」という概念を活用することによって、決してタイムトラベルが起こらないように世界観を日常生活に支障のないように構築(場合によっては修正)しているのである。

<なぜアニメの鑑賞者は感動できるのか??>
 このようによく考えると矛盾や不明な点がいっぱいあるこの作品。でも感動できるのはなぜか。答えは簡単で、メタ世界線(世界線の世界線)という概念の枠組みの中でアニメを理解しているからである。つまり「キョウマが沢山の世界線を放浪する」「1つの」世界線、という形で理解しているのである。

投稿 : 2016/01/28
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