「きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい(アニメ映画)」

総合得点
65.1
感想・評価
37
棚に入れた
155
ランキング
3401
★★★★☆ 3.7 (37)
物語
3.3
作画
3.6
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
3.7

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ネタバレ

LPFRX08001 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

3人のリアルな成長物語。

見終わりました。40才の男性既婚者です。

きまぐれに出会ったのは小学4年のころで、この作品を見たのは高校ぐらいの時だったと思います。ひかるちゃんが可哀想すぎてトラウマものでしたが、肝試しでみました。また当時とどれくらい見方が変わったのか知りたくてみました。

私はこの作品は恋愛を通して、子供から大人になろうとする成長のストーリーだと思います。こんなのまどかや春日じゃないと思多数いると思いますが、私はこれはこれで一つの人生ドラマかなと思ってます。人間は成長していきます。アニメでは中学生の物語で、本作は高校から大学に向けてのストーリーです。
ずーっと仲良し3人組、内面も変わらないほうが違和感があります。漫画だから違和感があっていい、夢でいいんだよという方はさておいて。内面は環境と成長とともに移り変わります。時にその成長は無慈悲に大切な人を傷つけてしまうこともあります。人生における成長とは、悲しいことに人生思い通りにいかないということを知ることです。それが本作ではテーマになっていると思います。それぞれの立場から成長を見てみます。



まずはひかるちゃんですが、鮎川とひかるちゃんの性格や印象の違いははっきりしています。鮎川は大人っぽく、ひかるちゃんは子供っぽいところです。子供は自分の夢はなんでも叶うと思ってしまいます。わがまま。原作でも春日がイケてると思いきや、イキナリ相手のことを考えずにダーリンといい、一方的につきまとう。感情的で快不快で決定してしまう。それは子供の特権かもしれない。しかし私たちは子供でいられない。現実の厳しさ、つまり思い通りにいかないことと折り合いをつけること、夢を捨てることを学ばないといけない。学ばざる得なくなる。そうできない人は恋愛においてストーカー、またストーカーぽくなります。本作でもラスト強烈に春日につけ離されても、まだ春日のマンションに座りこんでいました。他の住民の迷惑や春日の試験の都合も考えずに暴走してました。春日が好きなのは分かりますが、これこそ子供っぽさの表れです。その子供っぽさを超えさせてくれる教師は、こういった思い通りにいかないことで傷つくこと、体験が教師になります。先輩とは思い通りにいかなったけど、舞台の主役はとれた、叶った。いいこともあれば、悪いこともある、だから支えてくれる人、今いる人やあるもの、なにより自分自身を大切にして、つまづきながらも前向きに生きようと気づけたら成長だと思います。


また春日もひかるちゃんと同じように子供っぼいですよね。優柔不断。選ばなかったらどっちも幸せにできるとか都合のいい夢をみます。先延ばし願望ですね。結果本命のまどかを傷つけ、電話から「私そんなに強くないよ」という本音を聞いて、目が覚めました。春日は方親で母親が不在です。まどかの大人っぽさ、つまりまどかに母親の姿を投影したんでしょう。ようはまどかの中に亡くなった母親をみていて、甘えたいんでしょうし、鮎川に気を引いて男として認められたくて色々背伸びしたり頑張ったりしてたんでしょう。ひかるちゃんが春日にどうして私じゃダメなんですか?私は先輩にとってなんなんですか?という問いかけに対する答えは、ひかるちゃんが悪いわけではなく、母親をのぞんでいる男性と勝負するわけですからハナから勝負にならないんです。鮎川は大人で強いと春日はおもっていた。本当はそうではなかった。鮎川も自分と同じ年でただの女の子なんだ、弱さがある人間なんだと勘違いしてた自分に気づいて我に返り、決断、行動に移ります。それでも出来事を通しての成長という意味では3人の中では春日が一番遅いと思いました。電話でまどかの本音を聞いて、猛ダッシュで鮎川に会い、抱きしめ、キスしようとしますが鮎川に拒まれ、ひかるをどうするのかを問いかけられて行動しました。ようは春日自身が自分の言動に対する責任を決めてなく、鮎川がいうからそうしたというのが動機の行動です。お母さんがいうからそうしたという感じでしょうか。まどか自身が春日の子供っぼさに惹かれているので仕方がないんですが。このまま鮎川というお母さんに包まれ尻に惹かれて幸せに生きていくんでしょうね。最後のシーンでコンビニでの涙は、ひかるちゃんへの思いもあるでしょうが、一方をとれば何かを失う、何かをとれば裏では何かが失われているというという、この世の現実ではすごく当たり前な事実を知った、涙なんだと思いますし、甘えていられる子供ではいられない万能感のある子供から卒業の涙だと思いました。


最後に鮎川ですが、鮎川はしっかりものです。中学ですでに成熟した大人の心を持っています。しかしそれが大人にならざる得ない環境だったらとしたら、子供の感情は置いてけぼりで我慢我慢になります。その描写は鮎川の部屋でのシーンに描かれています。強くなくちゃ、早く大人にならなきゃいけない、自立しなくちゃいけないとずっと思って学生時代から思っていたまどかに、ひかるちゃんと春日のキスを聞いて、我慢ができなくなり春日に本音をいって電話で甘えました。大人になるということは子供の心をどうお世話するかという課題もあります。キスの出来事を通じて、まどかは自分にとって一番大切なものは何かに気づき、妹同然の存在であるひかるがどうなるか、自分とひかるの関係がどうなるか全て覚悟していました。春日が家にくるまでに電気をつけたり消したりしたのも、ひかるちゃんを傷つけることになるという葛藤の表れでしょうか。『ひかるのことはいいの。それよりあなたの気持ち』という言葉に覚悟を感じました。ここら辺がさすが大人です。

また最後に春日からひかるちゃんとの顛末を聞いてただけで、落ち込む春日とは違い、涼しげな顔をしてるようでした。それはきっと今まで本当にほしいものは我慢してきた、欲求は我慢してきて、ぐれたり、つっぱった言動で自分を守ってましたが、ようやく自分が欲しいものに対して素直になれたという表情でしょうか。春日には弱い自分もだすことができ、自分は本当は弱かったんだと気づき、認めて、突っ張ってた自分の心の荷が降ろせて楽になったんだと思います。春日の子供っぽさが彼女は安心してるんでしょう。またひかるの子供っぽさもまどかは羨ましがってました。つまり自分は子供のように素直じゃない。素直になりたいという願望の表れで今回ようやく素直になれました。鮎川にとっての春日はきっと、あの日あの時小さい頃に忘れていた素直さ、子供ごころをださせてくれる、思い出させてくれる存在であり貴重な存在なんでしょうね。まどかは本当はつっぱって、大人びた女性になろうと思ってなったわけではなく、両親に対する反抗の表れです。本当は素直な自分でいたい。その安心できる自分がだせる相手が春日だけです。それが分かったからひかるちゃんに譲れないんです。

本当の成熟は、犠牲だけではダメなんです。日本は犠牲心を愛している段階に止まってますが、犠牲は美徳っぽく響きますが、実は美徳ではありません。他人と同じように自分も愛し、自分と同じように他者も思いやることができることが成熟です。本作品で一番成長したのは、一番描写が少ないまどかだったと思います。


以上きまぐれを使ったヒューマンドラマと思えば、納得して見ていただけるのではないでしょうか。ただひかるちゃんは本当に無邪気でいい子だけに壮絶に可哀想です。春日の強烈な冷たさもひかるちゃんへの想いがあった分が反動として、強烈に冷たくなったんだと思います。心を鬼にしなきゃいけないほど、ひかるちゃんを大切に想ってきたんだと。悲しいですね。

原作が好きで愛している人にとってはきっと胸糞です。覚悟して見てください。

投稿 : 2016/08/19
閲覧 : 368
サンキュー:

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