「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.8
感想・評価
692
棚に入れた
3064
ランキング
346
★★★★★ 4.2 (692)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

2016年の劇場公開アニメは当たりが多い

 端的に言うと主人公であるすずの目を通して見た戦前・戦中・戦後といった感じ。
 この時代の庶民の暮らしぶりを描いた作品はドラマなどでよくあったが(個人的には昔の
NHKの朝ドラに多かった印象)、ここまで綿密な描写は無かったような気がする。
 ここで生きてくるのはすずの受身な性格で、自ら道を切り開いていくタイプではないために、
逆にあるがままを素直に見ており、この時代というものを客観的に描くのに役立っているように
思えた。
 次第に暗い世相になっていく中、それでも明るいエピソードが随所に盛り込まれているところ
などはいかにも庶民の生活といった感じでリアリティを感じる。
 ただ、随所随所に年月が表示されるのだが、後代に生きる自分らには昭和20年8月に何が
起きたかは知っているわけで、この年月表示が進むにつれて時限爆弾のカウンターが進んでいく
ような怖さを感じてしまう。

 空襲を始めとする描写はかなり恐ろしくも怖い。
 個人的にはミリタリー好きの人間であるため、普段は兵器や戦史のような部分に目が向いて
しまうが、やはりこういう部分を忘れてはいけないなと改めて痛感した。
 こういったシーンではすずの絵を描くのが好きだという部分が効を奏しており、写実的描写
だけではなく、絵画的描写になっている部分があるのが印象的。これはすずの心象的映像なの
だろうが、感情をも映像にすることである意味、単なる写実的映像よりリアリティを感じる
部分でもあった。こういう演出は実写だと難しそうでアニメの特性をうまく活かしたものだと
思う。
 この空襲ですずも右手と姪を失ってしまう。この展開自体、かなりショッキングなもの
だったが、日々を生きていくためにこの悲しみに浸りきる余裕さえないという状況がより
大変さを感じさせるものだった。

 そして、広島に原爆が落ちるが、思いの外淡々とした感じで描かれる。
 原爆の恐ろしさを伝えるという意味では、広島の地獄絵図を描写する演出もありだった
かもしれないが、本作はすずの見た感じた世界であり、近いとは言え、広島市外の人間の感覚は
こういったものなのだろうと、ここでもリアリティを感じてしまった。

 終戦に関してはすずの生々しい感情が見られるが、ここで感じられるのが「負けて悔しい」と
いうこと。
 現代の作品では「戦争が終わって良かった」という感情に終始している作品がほとんどだが、
この時代に生きた人間としてすずのような感情を抱く者がいたとしてもおかしくない。
 軍人以外も日々の生活において戦っていたのだと改めて思った。

 戦後もまだまだ大変な時代が続くわけだが、それでも前を向いて生きていく、すずや身の
回りの人達、それ以外の多くの市井の人々も含めた強さ、たくましさを感じた。

 キャスティングに関して本職の声優主体の中、主役のすずを畑違いののん氏が担当
しているが、すずののんびりした性格にマッチしており、かなり良かった。

 それにしても「君の名は。」、「聲の形」に本作と、今年はテレビシリーズを受けてではない
劇場公開アニメの当たりが多い年だなあと思ってしまった。

投稿 : 2016/11/28
閲覧 : 238
サンキュー:

19

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