「聖戦士ダンバイン(TVアニメ動画)」

総合得点
67.7
感想・評価
140
棚に入れた
583
ランキング
2281
★★★★☆ 3.7 (140)
物語
3.8
作画
3.4
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.7

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

異世界に召喚されたら聖戦士。

アニメーション制作:日本サンライズ
1983年2月5日 - 1984年1月21日に放映された全49話のTVアニメ。
監督は富野由悠季。

【概要/あらすじ】

『バイストン・ウェル』

地上人である我々が通常は行くことができない、「海と大地の狭間に存在する」とされる異世界。

「魂の安息地」、「輪廻の魂の修業の場」とも呼ばれ、現世で死を迎えた魂が行き着く場所。
この世界の住人にも肉体があり、死ねば記憶を持たぬまま地球で生まれ変わるらしい。

文明レベルは中世で、人間とほぼ同一のコモン人が国家群を形成し、国王が統治している。
ミ・フェラリオと呼ばれる羽根の生えた小さな妖精種族は、
成長すると人と同じぐらいの大きさで力を持った上位種族エ・フェラリオになる。
他には人間基準では醜い姿だが高い身体能力で有償で陰働きを請け負う蛮族ガロウ・ランが存在。
この世界の生物は巨大で獰猛な種が多数存在し、魔獣に等しい。

数年前にエ・フェラリオの開くオーラ・ロードにより呼びよせられた“ロボット工学の天才”ショット・ウェポンなる地上人。
この世界の生き物の肉体を生体部品として用い、コンピュータで制御されたオーラマシンを作り、
ドレイク・ルフトという権力者に協力したことで、バイストン・ウェルに戦乱がもたらされた。
ドレイク・ルフトはアの国の地方領主であり、
主君であるアの国王フラオン・エルフ(惰弱に過ぎ王の器ではない)への下克上、
そしてオーラマシンの武力によるバイストン・ウェルの統一支配を目論んでいる。
騎士の時代に妖精に似た空を飛ぶ巨大な人型兵器オーラバトラーとなれば圧倒的である。

オーラバトラーを操るには高いオーラ力が必要とされ、適性を持った地上人を召喚し、
聖戦士として他国侵略の手駒として扱われる。

主人公のショウ・ザマもその一人として、ドレイクに命令されたエ・フェラリオによって、
昭和の東京からオーラ・ロードを通ってバイストン・ウェルに招かれたのである。

ドレイク・ルフトの野心を良しと思わぬ者が多数いる。
反ドレイク勢力にギブン家があり、
当主の息子のニー・ギブン、テキサス出身の聖戦士マーベル・フローズンなどがショウと深く関わっていく。
オーラバトラーに対抗するにはオーラバトラーしかないのも事実であり、
オーラバトラーの開発に関わった後にドレイクの反対勢力に加わった技術者が存在する。

下克上を起こし武力支配を進めていこうとするドレイクたちと、野心の芽を摘もうとして武力に頼ってしまう勢力。
やがては国と国の戦争に発展してオーラバトラー同士の争いで戦禍は広がっていく。そして愛憎渦巻く人間模様。

これは、状況に翻弄されながら成長していく聖戦士ショウ・ザマのみならず、
様々な人間が絡み合う群像劇。戦争の物語である。

【感想】

監督である富野由悠季によるリメイク小説『オーラバトラー戦記』のタイトルが示すとおりに、
戦記物として観るのが良いのかもしれない。

地上人である日本人の少年がファンタジーな世界に召喚されて、
特別な力に目覚めて物語の中核を為していく。

字面だけなぞっていくと今流行の、“なろうもの”っぽいのだが実態は全然似ていない。

地上人はファンタジー世界『バイストン・ウェル』の野心家ドレイク・ルフトに、
兵として利用されるために招かれただけの存在であり、
主人公が現代の常識や知識を中世世界に持ち込んで実践しては、『流石、○○!(主人公の名前)』
と現地人を驚き役に徹しさせては、主人公無双状態で俺tueeeさせて読者の承認要求をくすぐって行く。
そういった今時の安直で飽和気味な異世界転生系の要素はない。
(転生先の異世界人を噛ませか頭の悪い存在として主人公の引き立て役にしかしてない作品を読んだので)

敢えて、なろう主要素を持っている人物といえば、主人公の数年前にバイストン・ウェルに召喚された、
ショット・ウェポンであろうか?
権力者に取り入って出世をし、オーラマシンなんて強力すぎる兵器を開発してしまい、
世界そのものの転換点になってしまうのだから。

主人公は物語の中で成長しダンバイン(のちにビルバイン)は強いのであるが、
敵も新たな機体を開発したりしてメキメキ強くなって苦戦の連続なので無双感はない。
政治とか戦略とかを考えるのは偉い人の役目なのである。
主人公は、目の前のことに対処するので精一杯であり、
異世界人も己の意志や理想を持っている一人の人間であり、そこには上下はない。

現代人が後世の知識を持っているがために中世レベルの異世界人を○カであるかのように描いている、
一定数の量産作品とは違うのである。(“なろう”“理想郷”出身でも面白いものは存在するが)

今言ったことと若干矛盾するようであるが、気になったことが。
中世世界と現代技術の関わり方ではあるが、個人的には、
オーラマシンを兵器としてしか用いなかったのでドレイク・ルフトは支配者として疑問。
バイストン・ウェルの産業は古来の農業ぐらいしかなく、経済的に豊かとはいえない。
城構えは立派で兵士も多いのであるが、城の外には整備された城下町はなく村と変わらない。
国を支えるだけの経済基盤が民衆の暮らしからは見えない。
農作業の効率化やパトレイバーみたいに建設機械にオーラマシンを用いれば、国は飛躍的に発展したであろうに。
未知なるものへの好奇心、吸収して自国の文化発展に転用する柔軟さ、経済への理解度。
ドレイク・ルフトが織田信長的な存在であるならば、そういった描写も欲しかったのではあるが、
昔のアニメ作品にそこまでを求めるのは酷かもしれない。

ドレイク・ルフトは支配そのものが目的であり、統治者としての手腕が作品からは見えない。
領地を広げるよりも今ある領地を発展させるほうが支配者の器が大きく思えるのであるが、
ロボット戦争アニメであるからには、そういう発想が無かったの知れない。

ドレイク・ルフトの野心の源が、出自が上で気位の高い妻ルーザに己を認めさせる。
男を手駒にしか思っていなく野心を焚き付ける毒婦ルーザが争いの元凶らしいのだから、
それに囚われない野心家の軍人以外の側面、政治家としてのドレイク・ルフトを見たかったかも。
だが、それではアニメのジャンルが変わってしまうしスポンサーが許さないかもしれない。

基本的なストーリーはいつもの富野であり、『Zガンダム』と被る。
葛藤する主人公ショウ・ザマは両親とは上手くいっておらず空手が特技というカミーユ・ビダンとの共通点がある。
ジェリド・メサの立ち位置に近いライバルキャラのバーン・バニングス。
気に入らなければ内輪揉めがしょっちゅうあるし、鉄拳制裁も当たり前。
嫉妬もすれば、自分の状況にカリカリして当たり散らす人物もいる。

今時のアニメとは毛色が違っていて若い人には合わないのかもしれない。
だが、これが一時代を作り根強いファン層を形成しているのだから、そういうものとして理解するしか無い。
エリートが叩きのめされ悔し涙を流して強くなったバーン・バニングス。
ある意味裏主人公と言えるバーンの顛末を見れば味わい深いものがある。
思えば、このアニメに出てくる登場人物はプライドが高い。
負け犬のまま終わるのは死ぬより苦しい騎士のプライド。
王のプライド。貴族のプライド。技術者のプライド。男のプライド。女としての意地。
誰ひとりとして納得せずして誰かの風下に立つのを心のなかでは受け入れない。これぞ、まさしく群像劇なのである。

兵器の開発と量産のスピードが早すぎるだろ、
戦いは戦略・戦術よりもいつも乱戦で個人の能力任せで決まるフシがある、
と戦争アニメとしては疑問や偏りがあるもの、

人間劇を中心とした戦記物の一つの完成形として、
今時の作品の傾向に一石を投じて欲しいアニメであると思えた。

本音を言えば『地上編』が無ければ印象が薄い作品になっていたかもしれない。
最初はオーラマシンとの性能差で一方的にやられるだけのアメリカ空軍が、
とある作戦をとることで異世界からの侵略者に何度も痛手を負わせるところに、
技術差や性能差で上下を付ける作品群に無い良さを感じた。

大事なことを言い忘れていたので最後に!
Blu-ray BOX の若本規夫新録のPVだが、例の巻き舌喋りが酷すぎる。
昔の若本は良かったが今の若本は変な喋り方芸人でしか無いことが悲しい。


これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2018/12/29
閲覧 : 504
サンキュー:

51

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