蒼い星 さんの感想・評価

3.5
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態：観終わった

気持ちは大事ですが、人生は流れるもの。

アニメーション制作：Studio五組/AXsiZ
2016年11月12日に公開された50分間の劇場版アニメ。

原作は、原悠衣による『まんがタイムきららMAX』にて連載中の漫画作品。
監督は天衝。

【概要/あらすじ】

イギリス人留学生、アリス・カータレットは忍ラブ。
金髪フェチの大宮忍は、ちっちゃいアリスを愛玩してる。
内気な優等生の小路綾、よく言えばおおらかな猪熊陽子。
そして、アリスを追って家族ごと日本に引っ越してきた日英ハーフの九条カレン。
5人はいつも仲良し、そして彼女たちの高校2年生の秋が到来。

学校祭で忍のクラスでは演劇をすることになり、忍はリーダーとして頑張って疲れていた。
会話の流れの中で綾は、自分は忍と陽子ほどに付き合いが長くない。
アリスやカレンと違って金髪でもない。自分と忍の距離ってどうなんだろう？
綾は自分の立ち位置に悩んでいた。

そして、学校祭の準備で忍の家に5人集まって演劇で使う衣装を制作してるうちに、
綾は中学時代のことを思い出したのだった。

【感想】

原作漫画の5巻の、学校祭と中学生時代過去編という2つのエピソードをピックアップして膨らませた話。
といっても、TV用エピ2回分を劇場用に仕立て直したとも言えますが。

『きんいろモザイク』に一貫していることは仲良しこよしが一緒にいるHappinessであり、
少女たちのSmileがファンには最高の御馳走であろうことには変わりないのでしょう。

映画では、忍と陽子と綾の高校受験の話がメインであり、
結果としてどうなったかは本編を見ての通り。
離れること無くみんながいつまでも一緒にいるのが一番良いという趣旨で、
不変の友情をシンボルとして美談っぽく扱われている感じ。
しかし、それも裏を返せば馴れ合いであり停滞でもあります。
状況が変わって誰かが欠けてしまえば、
あの頃は楽しかったのに今は楽しくないと言わんばかりに笑顔を失ってしまうのでしょうか。
言わば共依存関係の肯定がこの話でやりたかったのかもしれませんね。

主題歌で、『なんでも解る家族みたい、いつもいつまでも』と5人の仲を讃えていますが、
イギリスにいる実の家族をほっぽって日本で友達とイチャイチャしてるアリスへの皮肉にも思えまして、
作品のテーマみたいなものに相変わらずの引っかかりを感じてしまいます。

高校を卒業してしまえばそれぞれに進路があるわけでありまして、いつまでも皆一緒というわけにもいかず、
彼女たちのうちの3人は、それに耐えられるだけのメンタルがあるようにも見えず、
作品の中で進級して年齢を重ねている以上は、その日が来るのが避けられないわけでありまして、
原作の今後できちんとその辺を描いてくれれば良いのですが、
まさに同じ学年を永遠に回り続ける作品向けである彼女たちはどうなっていくのでしょうね。

高校を卒業して自分の夢を叶えるために、大学進学や専門学校に通うために住み慣れた地を離れる作品を、
いくつか観てるだけに、時計の針を止めてしまいたいのが正義みたいな作品の空気に同調をしかねます。
まあ、学力の差を無視して全員が同じ大学に進学すると予想しますが。

時が流れて新しく入ってくる人がいて、今まで一緒にいた人が自分とは違う場所で人生を歩いていく。
変わりゆく状況の中で過去の幸せを唯一無二の物とせず、過去の自分が現在の自分に繋がっていて、
そして現在の自分の幸せが未来の自分の笑顔につながっていけたらいいね、みたいな物語を観たあとだけに、
この映画のストーリーが、どうにも引っかかるのですね。

結局のところ、心のオアシスを求めていつまでも変わらないままに浸っていたい。
『ビューティフル・ドリーマー』でいう“いつまでも終わらない学園祭前夜”
を肯定するようなあらすじになってしまったかの印象をこの映画を観てて思いました。
原作では、もう少しあっさりとしていますので印象が違うのですけどね。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。