アニメ記「脱力視聴」 さんの感想・評価

4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

すばらしい◆作品全体に原作への愛を感じる◆まるで手抜きのない◆上質な映画のよう

原作ありのアニメです。見ていない人のためにネタバレは書きません。
少し､映像的に過酷で見る人によっては精神的な負荷が大きい場面が10話以降から
あるとだけ記しておきますが。内容については実際に見てご体験ください。
それから、徐々に面白くなるスロースタータータイプの作品です。3話～6話まで見ても展開が進まないので
視聴を打ち切るという人をSNSでたびたび見かけたのですが、それは勿体無いので
短気は抑えて視聴してみてください。我慢する価値は絶対にあります。

もひとつ、話題になったので第●話だけ見るという「ぶつ切り視聴」は本作を見る上で何もいい事はありません。
話の前後がわからなくなる話題の場面だけの視聴や特定話数のみの途中視聴は非推奨､
途中からではなく1話から見る事を強くお勧めします。

原作漫画は未読のほうがより深い驚きを体験できます。（既読でも十分満足できます。）

少しだけ､原作から省かれたシーンがあるのと､9話がアニメオリジナル要素が多く
前後のお話のつながりに戸惑ったのでストーリー評価は4.5。
ですがそれ以外は完璧で音楽と背景画の美的センスに圧倒されました。
最終話の13話と､10話の演出は過酷な原作を省略せず､自主規制的な配慮を加えなかった
制作側､監督の判断に賞賛と拍手を送りたい！

特定の話数のシーンの一部に精神的､見た目にきついと敬遠されるのも納得の場面があります
(その話数は上記に)が、もしもそれを省いてしまったりするとこの物語は何がなにやらわからなくなります。
たとえというか、過去に出来事があり､登場人物は過去に何かしら体験した出来事で今登場してる
時点で性格や考え方が形成されているので､その主要人物の過去が作品の重要な鍵だとするとします。
その場合､過去の悲劇､事件を「グロテスク」だからと省いちゃったりするとまるっきり意味不明になりますから。
だからつらいシーンでも飛ばしたりせずにで見るべきだと思います。

先述の物語の展開が遅い、原作のあの部分まで進まないという意見について、
自分としてはコミックスのアニメ版ダイジェストを見たいわけではないのであれでいい。
心理描写が必要な作品ならじっくり見せてくれた方がより深く､お話と人物に
感情移入ができるというもの。
日常系､ギャグ､主人公が強すぎる大活躍系､、ハーレム系ではないのだから
むしろこれくらい丁寧に作られているのが当然で、原作へのリスペクトが
とても感じられ、制作陣の作品への愛情を感じました。

先述しましたが9話がアニメオリジナルのお話で13話構成の話数なのに
あの9番目という位置にあり､それまでのお話とのつながりを考えると
戸惑いを覚えた部分はあります。（原作の打ち切りになった場合のお話で実質番外編)
しかし、9話がなければ13話は話数の構成を考えた場合、1時間ではなく
分割で個別の12話&13話となったかもしれないし、そうなっていたなら
あの最終話のカタルシスは薄れてしまったでしょう。
最終話が1時間であってこそ､あの内容でこそ完成品となるのだと思うのです。
決して30分づつの2話放送に分割すべきではない(分割すると台無し)内容だったので
9話は最終話のために用意されたサブストーリーだった（話数調整のためだとしても)と今では思う事ができます。

熱演､音楽､美術、進行の速度､それから最終話の原作と異なるアニメ独自の幕引き､
原作のつくし先生が原画で参加したラストは美しかった。
最終話のエンディング数分は映画的で幕引きの作法に美が感じられます。

命を描き､悲しみを描き､視聴者をどん底の怖さに突き落とし､そこから
救い上げる､感情の揺らぎを存分に与えてくれ最後まで飽きさせない
作品でした。