「けものフレンズ(TVアニメ動画)」

総合得点
83.2
感想・評価
1216
棚に入れた
4706
ランキング
327
★★★★☆ 3.7 (1216)
物語
3.8
作画
3.2
声優
3.6
音楽
3.9
キャラ
3.9

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ネタバレ

岬ヶ丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

絵本のような道徳的アニメ

 社会現象にもなった2017年を代表するアニメ。本編だけでなく、OP主題歌が音楽番組で取り上げられるなど大きな話題になった本作。放送から一足遅れの視聴になったものの、なんとか年内に滑り込めてよかった。

 本作を語るうえで欠かせないのはOPの「ようこそジャパリパークへ」。作曲者のオーイシマサヨシさんはアニメ「月刊少女野崎くん」でも主題歌を担当していたのは記憶に新しいが、今回もキャッチーかつ楽しい良曲。歌詞に「けものは居ても のけものは居ない」というフレーズがあるが、まさに本作を象徴したフレーズ。極端な話、「けものフレンズはどんな作品か」と聞かれたら、「本編を見るよりもとりあえずOP聞いてみて」と答えたほうが早いかもしれない。そのくらい作品全体をわかりやすく説明しながら楽しく聞けるこの曲は、本編のダイジェスト版と言ってもいいと思う。

 物語はカバンと呼ばれる正体不明のフレンズ(動物)が自分の正体が何なのかをサーバルや他のフレンズとともに冒険しながら解き明かしていくというもの。同時にパークに残された人工物から、かつてヒトがいたと推測されるのに、なぜ今はヒトがいないのかという不穏な空気も注目点だった。
 カバンがヒトであることは様々な知恵を使い、火を怖がらないといった描写から容易に予想できる。そしてついにカバンがヒトのフレンズだと明らかになるが、気になったのはその後の展開。例えばこれまで友好的だったフレンズが、カバンがヒトだとわかった途端にフレンズの敵だと冷たい態度をとったり。あるいは実はヒトを恨んだ他のフレンズがパーク内のヒトを絶滅させていたとか・・・。ダークな方向へ物語は急転していくのではないかと予想していたが、実際はヒトにとっては至極平和的な展開だった。
 いい言い方をすれば優しい世界だが、悪い言い方をすれば全く裏表があまりにも道徳的。もちろん最終話でフレンズ全員集合など熱い展開もあったが、それも含めて健康的すぎる。健康なのはいいが、やや単調という印象。

 朝アニメっぽい雰囲気の本作に、最後にとんでもないタブーやどんでん返しがあるのでは?と当初勘ぐってしまう部分はあった。ただ最後まで見終わって感じたことは、不必要な考察は不要ということ。変な考察は、かえって本作の魅力を損なう気がする。
 結局この作品は退廃したヒトのいないパークというポストアポカリプス的な伏線を匂わせながらも、基本的にヒトも他の動物も区別なくみんなで仲良くするのが大切という非常に模範的・道徳的なテーマを伝えたかったのだろう。物語構成は緻密ながらコンセプトは非常にシンプル、メッセージも至って明確。ただ随所にワクワク・ドキドキする仕掛けが施されており、まるで絵本のようなアニメだったと思う。絵本は深読みせず、そのまま読むのが手っ取り早い。

 とはいえ本作が深夜帯アニメで社会現象ともいえるほど爆発的にヒットした裏には、大人層の支持があったことは明らか。近年の深夜帯アニメの中で、原点回帰というべく伏線や謎をうまく散りばめた楽しいお話、というコンセプトが大人層を中心にウケたのか。その意味では今求められているアニメは変に奇をてらった作品よりも、お約束をきちんと守ってくれる作品なのかもしれない。しかしそれは裏を返せば、そうした作品が今のアニメには少ないかもしれないとも言えるわけで。そう考えると色々な意味でやや複雑な感慨にひたった作品だった。

投稿 : 2017/12/26
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サンキュー:

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