要　塞 さんの感想・評価

4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

南極観測隊（民間）へのススメ

　この作品は、四人の少女たちが南極を目指すというストーリーである。

　ということは、南極での厳しい生活や、その長く過酷な道中記、
野生動物の観察、または気象観測やボーリング調査等、
これぞ南極といったオブジェクトを中心に、物語は進行する・・・。
いや、むしろそういった教養的要素の濃い、
ガチの教育テレビ的な科学実験番組のようになると、
当初の自分は想像していました。
　そして、実際に視聴してみると、
この作品の重点は、全く別のところにあることがわかりました。
つまり、教養やら科学やら、高名な探検家やら、
海上自衛隊やら、タロやらジロやら健さんとは少し距離を置いた、
四人の女子高生{netabare}（一人は対象外）{/netabare}の心の成長を描いた、
ヒューマンドラマであったと思います。

　「南極」という土地と「観測隊」という組織の活動に重きを置いた作品
を期待していた身としては、なかなか南極に向かわずに、
思い思い青春を満喫している主人公たちに、先行きの不安を感じましたが、
メインキャラクター四人の内面を丁寧に掘り下げていく展開に、
感情移入が促進され、{netabare} ついには南極に到達して物語が完結してしまうのを{/netabare}
惜しむ自分が四話目辺りにいました。
　そして、ヒューマンドラマとしてこの作品を見直してみると、
その完成度は「極上」の一言に尽きます。
　南極という土地は四人の少女たちの内面を掘り下げ、
絆を深めるための目標であり舞台装置的な、人生における通過点。
スポーツや芸術に青春を捧げるのと何ら変わらない、
ハイレベルな部活動と考えてもいいでしょう。

　あーだ、こーだ言い合いをして、浅はかな計画を立てて、実行して、
仲間が増えて、喧嘩して、僥倖に恵まれて、喧嘩して、
不安になって、また喧嘩して、以下略。かなり長い時間をかけて、
{netabare}やっとのことで到達した最果ての地「南極」。{/netabare}
　十代のころに南極を目指すとこうなるという、
星の数ほどある青春の一例として物語と向き合ってみると、
全く別の青春を絶賛送っている中高大生も、
青春など遠い昔に過ぎ去ってしまったという大人たちであろうとも、
多くの得るモノ、そして感動に出会えるはずです。

　青春らしいことを何もしていないと焦っている方、
バイトで稼いだ大金の使い道に困っている方、
煩わしい人間関係にうんざりしている方、友達に飢えている方、
上記のどれにも当てはまらないが南極に興味がある、
ここではないどこか、を目指したいという方々に、
この作品を強くお勧めします！