「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
549
棚に入れた
2288
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (549)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

fuushin さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

名伯楽と、優駿。・・・それが希美とみぞれ。

最初に、私に声をかけてくれたのは、希美。
その日から、今日のこの時まで、私はずっと希美だけを見てきた。
希美は・・・希美は、私のすべてだった。
突然、希美は、私に何も言わないまま、吹部を辞めてしまった。
希美は・・・勝手だった。
私は、・・・どうしていいかわからないまま、吹くしかなかった。
なぜ、なんだろう・・・


最初は、私から誘ってみたんだ。みぞれを。
その日から、励まし続けた。いいことだと思ってた。みぞれには。
みぞれは・・・みぞれは、大切な友達のひとり。
ずっと、みぞれは、ぶれなかった。ひたすらに頑張っていた。
みぞれには・・・何も言えなかった。
私は、・・・私が、みぞれの本当の音を知らなかったんだ。
どうして、なんだろう・・・


{netabare}
高校3年生。
避けようのない、進路の選択。そして人生の岐路。
みぞれも、希美も、否応なく自我に向きあわなければならない。
空回りがあり、勘違いがあり、心中には深い葛藤と、妬み、もあった。

揺らぎだす不安。
麗奈にも意見される2人のハーモニー。
優子はみぞれを慮り、夏紀は希美を擁護します。
そこにわずかな不協和音のノイズも見え隠れするのですが・・・。

なぜか、久美子と麗奈が、見事なまでの演奏を奏でてくれました。
そのハーモニーの確かさ。
それぞれの絆への信頼を、馥郁(ふくいく)と醸し出すかのような笑顔。
これはもう、久美子と麗奈の真骨頂。
わずかな時間ですが、このシーン、お見逃しなきように・・。


リズと青い鳥。
昨日までは、必要とし必要とされ、たしかに繋がっていた2人でした。
今日からは、自分の能力を知り、その立場を知ることになります。
明日からは、各々の生き方を模索し、舵を切りだしていく。


希美とみぞれ。
希美は、原石を見出してしまっていたのです。
みぞれは、知らずに黙々と磨いていたのです。

ただ、その一点においてのみ。
・・・2人は、希望を見つけられました。
・・・そこに、2人の救いがありました。

希美には、みぞれのためのやるべき役割があり、
みぞれには、希美のためにやるべきことがある。
全国にチャレンジするために、それぞれの道を選びます。

まるで、リズと青い鳥の純真な愛の交歓のよう。
どこまでも気高く、清々しい。



葉月と緑輝の何気ないかけあいが、みぞれから希美への信愛のかけあいに活用されるシーンは、北宇治吹部ならではの妙でしょう。
こちらもきっとお楽しみいただけると思います。



音にはまったく素人の私ですが、みぞれのオーボエには、落涙でした。

本作が、3期にどんなシーンとして描かれるのか、楽しみです。

原作とは違うシナリオ、過去作とは違うキャラ描写が見られましたが、本作なりの味わいと魅力が、その脚本と演出に色濃く描かれていました。
メロディと、映像と、シナリオの美しい共演は、この作品を待ちに待ったファンへの「饗宴」でしょう。
京アニからのおもてなしを、心から堪能していただきたい。
そう思いました。
{/netabare}


●鑑賞2回目です。
{netabare}
初見は、原作・シナリオを追いましたが、今回は彼女たちの心模様の移り変わりにフォーカスして観てみました。


みぞれを見出したのは、たしかに希美。
でも、みぞれを導くのは、希美ではなかった。

滝先生や新山、橋本らは、世界を、本物の音を知っている。
だから、みぞれを導きたい。みぞれの才能に期待したい。
夢を、どこまでもふくらませたい。

でも、みぞれはリズ。夢は実感できない。

優駿は、地上を駆け巡るのが相応しい。でも・・・。
青い鳥は、大空を飛び回るのが相応しい。だから・・・。
オーボエに息を吹き込むことで、夢がふくらみはじめていく。


いつか、希美は、気づくのだろうか。
みぞれが言った言葉の意味を。 「希美は特別。私のすべて。」の真意を。

リズの、青い鳥への深い愛情を。
希美の、希美自身へのゆたかなプライドを。


みぞれに"人生の扉"を開ける鍵を渡したのは、希美。
だから、"音楽室の扉"に鍵を差し込むのは、決まってみぞれ。

みぞれの先に立って、"三歩進み、一歩止まり、二歩進んだ"。それが、希美。
希美の後ろについて、"見失わないように追いかけて、見失って待ち続け、いつしか追い付いて、ようやくハグできた"。
それが、みぞれ。


「オーボエが好き。」・・・それはたぶん、希美の背伸び。
だから、希美は気づいている。
みぞれへの友情を。彼女の確かな音楽性を。今ならまだ届くはずだと。

「希美が好き。」・・・それはきっと、みぞれの真実。
だから、みぞれも気づいている。
希美への信愛を。彼女と音を楽しむ嬉しさを。これからも繋がるはずと。



6年前から、決まっていた道ではないし、その道が分かれることは恥ずかしいことじゃない。

自分を見つめて、自分で選んで、自分で決めた道だから、それはとても嬉しいことなはず。
相手を見つめて、相手を気遣って、相手の進む道だから、それもとても嬉しいことのはず。



6年間の、みぞれの軌跡と希美の航跡が、交差する瞬間。

180度反転して、今まで見ていた景色から分離していく時間。

分岐点に気づけるのも、役割を見出し一歩踏み出せるのも人間。

disjoint から joint へ。

その"間"の微かな移ろうさまを、密やかに感じました。



その"間"に奏でられる2人のハーモニーを。2人の豊かな人生を。

早く聴きたい、観たい気持ちです。

"間"が持てそうもないのです。
{/netabare}

長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品が、みなに愛されますように。

投稿 : 2018/05/28
閲覧 : 450
サンキュー:

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