「PSYCHO-PASS サイコパス(TVアニメ動画)」

総合得点
90.2
感想・評価
5576
棚に入れた
26360
ランキング
61
★★★★★ 4.1 (5576)
物語
4.3
作画
4.0
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

逆転の発想が光る秀作

まどマギの大ヒットで一躍アニメ脚本家のスターダムに上り詰めた虚淵玄が手掛けたディストピア作品。もちろんグロあり。

まどマギは完全オリジナル作品ということで過去にエロゲ業界で培ってきた「ビックリドッキリちゃぶ台返し」と「少女虐めてお涙頂戴」という完成された伝統フォーマットに裏打ちされた迷いのない脚本により高い評価を得た。しかしこれは視聴者を裏切る準備を万端に用意できたからこその成功。

今作は「管理社会のディストピアもの」。この設定の時点でオチはもう全てバレてるようなもの。「管理社会でみんなシアワセばんざーい♪」などに出来るはずもなく視聴者を裏切りようがない。「管理社会」のワードを見た時点で「やっぱりそんなのダメに決まってるよね」という落としどころは多少マンガやアニメ、映画を見て来た視聴者には共通認識というより常識レベルで刷り込まれている。もう今更も今更な古臭いを通り越した古典と呼べるほどのテーマでこの手の作品は過去に腐るほど存在し名作駄作も数知れず。このベタベタどころかギトギトしそうなほど手垢が付きまくった素材に対してどのような味付けがなされるのか、虚淵ファンはさぞかし期待に胸を膨らませていたであろう。誰がどうやってもn番煎じにしかならない題材をここまで大ヒットさせた彼の手腕は称賛に値するという表現が安く聞こえるほどに素晴らしい結果をもたらした。この企画は構想が落ち着くまでめちゃめちゃキツかったんじゃないんでしょうか。

管理社会万歳にも出来ず裏切り展開が完全に封じられた為に取った手法はディストピア作品にも拘らずストレートにキャラアニメに振り切るというもの。このテーマの主な客層である中高生にターゲットを絞り、中二度を可能な限り最大化する手法を徹底した。出自が他業種ならではの業界の慣例に囚われない大胆な発想。

まずガジェットをカッコよくする。
喋る、光る、変形する。過度な程にわかりやすい。ここまで開き直られたらやり過ぎを通り越してもうアッパレ。攻殻で「複雑な機構は現場に不要」をやられて以降なかなかやりづらかった事を振り切ってやってしまう。刑事ドラマなのにも関わらずバトル作品かのような大型武器で大暴れするロマン溢れる絵面を堂々とやってのける大胆な決断。重火器とも呼べるあのサイズの銃を軽々と扱う描写を見せ、チタンなんかよりも遥かに軽いであろう超金属感がこれまた未来感を演出する。

それから人名をカッコよくする。
初見ではまず読めない名前の数々。現在主流ではなくなったがCD全盛期の頃の主にヴィジュアル系アーティストを売り出す手法。難読系とも言われるいわゆる「初見で読まれたら負け」なヤツである。「L'Arc~en~Ciel 」とか絶対最初読めんだろ?常識的に考えて、というもの。群雄割拠の中でいかにインパクトを出して興味を持ってもらうかというある意味姑息なマーケティング。読み方を調べさせるひと手間を強要することで親近感を感じさせるという悪く言えば心理学の悪用。現在では難しいのは逆にストレスなのでなろうの長文タイトルのようにわかりやすく説明する手法に進化したものがフックの主流。だからこそ難読手法が逆に新鮮に映り、そしてこれを登場キャラクター全般にまで徹底採用するという思い切り。ここまでやればお見事としか言えない。

ここまではまあ他で無いことも無い。本作の特徴はまさに逆転の発想。

「もしかして管理社会って逆に素晴らしいのかな?」など到底出来ず、オチはわかってるので、いわゆる「謎」が使えない。「謎」はキャラに意味不明なセリフを喋らせて興味を引くという作劇における鉄板セオリー。人間わからないものに興味を抱くもの。「これは何か意味があるはずだ」と不安を煽ることで好奇心を刺激する手法は現在でも主流な技法。しかし今回は無効。では何をもって好奇心を刺激していくか。観ればそのまんまですが「教養主義」ですよね。ここがちょっと背伸びをしたい中高生の中二マインドをギンギンに刺激していきます。そして哲学者の名前など教科書などで聞いたことはあるが詳しくは知らないという微妙なラインをつくラインナップのチョイスの妙。この絶好のギリギリ感が素晴らしい。視聴者はもうググらずにはいられないわけですよ。この知的好奇心をくすぐるセリフの数々がいわゆる「謎」と同等の機能「知への欲求を掻き立てる」を果たしているところが今作の突き抜けた独自性でしょう。セリフを喋らせるだけでいいので謎に必要な後の答え合わせも不要、しかもどのキャラでも使えるというコスパという意味でも非常に優れた演出。知的エンタメといいますか、刑事ドラマを観ながら知識も増やせるというなんともオトクで美味しい作品。


fate/zeroは最初から中二全開で世界観も完成済みなのでキャラ同士の見栄きり合戦に終始するだけで良かったから今作よりはラクだったんじゃないかな。大作のプレッシャーは別として。まどマギの一発屋で終わらず、さらに名を挙げた虚淵さんにはまだまだ業界を盛り上げていって欲しいですね。


ただ時雨はどうしても無理。

投稿 : 2020/12/11
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