「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(TVアニメ動画)」

総合得点
72.6
感想・評価
420
棚に入れた
1601
ランキング
1095
★★★★☆ 3.4 (420)
物語
3.1
作画
3.7
声優
3.5
音楽
3.6
キャラ
3.3

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 2.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

最初から楽ばっかしてると面白いアニメの作り方忘れちまうぞ

1話冒頭からイヌカレー空間全開。魔女が生み出す不気味で幻想的な空間は健在であり、叛逆の物語の続編を待ち望んで早7,8年のファンを背景作画から再度、魅了する力がある。
ただし、主人公は鹿目まどかではない。彼女と違って第1話から魔法少女として活動する環いろはを中心とする物語だ。

【ココが熱い!:まどマギの外伝!新たな主人公は“既に魔法少女である少女”】
当然だが一般人と魔法少女とでは立場が大きく変わる。まどかでは出来なかった戦闘に参加できる新主人公は、話数を重ねるごとに魔女に加えて“ウワサ”と呼ばれる新しい敵との死闘を他の魔法少女と共にし、対等な関係を築いていく。とくに行くアテのない深月フェリシアや二葉さなを率先して受け入れる描写は皆も尊いものを感じるだろう。
一方で、このシリーズで既に魔法少女になっているということは遅かれ早かれ魔女となって終わる運命も背負っているということだ。グリーフシードの獲れ高次第では最終話前にでも死んでしまうかも知れない。後戻りできない破滅のレールに乗ってしまっている主人公の行く末が、前作を観た人も観ずに設定だけ聞きかじっている人でも気になるところだ。
そう分析できたところで今作の舞台となる神浜市。そこでは「ここで魔法少女は救われる」 という噂が広まっており、他所から多くの少女たちが神浜へ向かうシーンも挟まれている。
例え魔女化のことを知らなくとも、終わりの見えない魔女との戦いで精神的に疲弊している魔法少女が多いようだ。前作の美樹さやか程ではないが、願いと使命のバランスが崩れて「魔法少女にならなければよかった」と後悔している。彼女らが救われるか否かを見届けるだけでも一見の価値があるかのように思えた。

【でもココがひどい?:ジェムが穢れても大丈夫!神浜だけの現象・ドッペル】
{netabare}話を追ってみると、4話で早速いろはのジェムが穢れきってしまう。(ちなみにその時点で魔法少女の真実は明かされてないので初見には何が危ないかわからない)。前作知識しかなければ「主人公退場!?」と焦るところなのだろうが、御丁寧にも1話で「神浜に来れば魔法少女が救われる」噂があることを説明してしまっている。その噂を証明するが如くいろはは魔女化ではなく“ドッペル”という別の現象を起こし、その力で強敵を倒す。その後は元の姿に戻ってソウルジェムもグリーフシードなんて要らんとばかりにピカピカとした輝きを取り戻す──と、前作にはなかった至れり尽くせりな展開に安堵を越して拍子抜けしてしまうのが正直なところ。
ドッペルそのものには起源や使用条件、他のデメリットなどの興味が湧くのだが、どういう裏があろうと前作の鬱展開の代表たる魔女化を無かったことにしつつ、逆に必殺技として利用してるのだから「こりゃ大層便利なものだな」以上の感想が今のところ出てこない。前作と比較すると随分とシナリオが生温くなったと思う。 {/netabare}

【ココがひどい:魔法少女多すぎ問題】
{netabare}魔法少女の死ぬ要因が1つ2つと減っているからか、本作はメインキャラクターとなる魔法少女が全く退場せず、多人数のごちゃごちゃしたストーリーになっている。
キービジュアル等でよくみかけるいろは・やちよ・鶴野・フェリシア・さなでもう5人だ。加えて度々出番のあるももこ・かえで・レナ・みたま、敵となる魔法少女に灯花・みふゆ・天音姉妹・アリナ、第1話からとんで最終話でも顔見せした黒江、そして前作からマミ・杏子・さやかも参戦する。
計18人。目くじら立てるほど大勢ではないと言う人もいるが、モブやチョイ役抜きにしてこの人数だ。全員ではないが主役回など一定の出番も確保されている。1クール13話を18分割した結果、1人に与えられた時間は20分にも満たず、新キャラの掘り下げが微妙になってしまっている。これでは前作の境遇込みで語れるマミ、杏子、さやかの3人ほど熱く語れるような新魔法少女は誕生しないだろう。
Cパートで主人公らとは別行動の魔法少女の様子を写しての幕引きから、そのキャラが次話に登場しない構成も良くなかった。やはり観ている最中に「前話の最後に出てきた娘はどうしたんだろう?」という疑問が片隅に引っかかる上、出てこなかった時の肩透かし感でモヤモヤとしてしまう。 {/netabare}

【そしてココがつまらない:話の進みが遅い】
{netabare}18名の団体御一行様を公平に掘り下げていくと、あおりを受けるのは主人公・いろはだったりする。
彼女の妹の捜索や神浜に流れる『魔法少女が救われる』噂の正体を突き止めるのが本作の第1話で挙げられたメインストーリーの筈だ。しかし途中で登場したばかりのかえでとレナの喧嘩が挟まれその和解に乗り出したり、フェリシア回やさな回を経て彼女らを仲間に迎え入れたり、マギウスの翼と名乗るカルトじみた集団と一、二戦交えたり……とゲームで言えばサブクエストに取り組んでるかのようなストーリー展開がなされ、焦れったい。全てが後の展開に必要らしいことは聞いているが、あまり寄り道ばかり見せられると行方不明の妹を捜している姉・いろはの焦燥感がぼやけて伝わってこなくなる。
ドッペルも神浜で起きる特有の現象らしいことはわかるが、当の神浜魔法少女たちもその存在を認知して積極的に使っているわけではなく、詳細を知っているマギウスの翼のメンバーも中盤では勿体ぶった会話しかしてくれない。なにせそのときの勧誘材料はドッペルではなく幸運水のウワサや魔女の撲滅などだ。
もちろん最初から魔女化のことをすんなり信用する魔法少女はいないし事実とわかればショックも大きくて迂闊には話せない内容ではある。しかし後の展開で結局“講義”という形でいろはたちに教えていることだ。ムダに後回しにして尺を消費するくらいなら6~7話時点で団体としての理念を誠実に打ち明ていれば敵対する必要は全くなく話も早く進むだろうに。
最終話の一歩手前でようやくウワサやドッペルの必要性を説くために魔法少女の真実が暴露されるものの、ドッペルそのものの詳細を語るには尺もないせいか、残りはマギウスの手先と化したらしい巴マミとの新旧魔法少女対決に使った。バトルシーン自体は見応えのある素晴らしい殺陣だが、それで本筋が何一つ解決されていないのを誤魔化された気分にもなる。
ウワサ退治もそうだ。前作で魔法少女の敵だった魔女はワルプルギスの夜以外にフィーチャーはされておらず、平均1話以内に撃破していた。しかし本作ではナントカの噂があってそれを調査し、その裏に潜むウワサ(劇中では同じ読みなのでややこしい)を退治する流れを1体につき2~3話消費で描いている。これでは特撮の仮面ライダーとまるで一緒。1年間放映で行っている手法を1クールの本作でやる豪華な尺のムダ遣いだ。
そして主人公を奈落へ落とし、叫ぶやちよ。この続きはseason2へ……というクリフハンガーと呼ばれる手法で一旦、締める。物語全体の評価は2期次第というわけだが、それも当時は2年近くお預けという形だったのはあんまりな話だ。ドッペルを材料としたマギウスへの勧誘や巴マミとのバトルは間違いなく見どころの1つなので、それらを中盤に持ってってseason2の内容を終盤に入れてくれれば中弛みはしなかったのではないだろうか。{/netabare}

【キャラ評】
環いろは
前述した通り、本作仕様の魔法少女であり妹を捜す姉なのだが、そうとは思えない発言や機微の方に印象を覚えた主人公だ。 {netabare}
「姉なら不眠不休で妹を捜すべし!」とまでは言わないが、あんまり普通に生活するものなのでむしろ『神浜にいればいつか妹に逢える』という確信を持って行動してるように見えてしまう。
かと思えば魔法少女が本来は魔女になることを知っても、妹を捜す姉というポジションを盾に灯花の勧誘からあっさりと逃れてしまう。そこは従来の魔法少女らしく1度は絶望に打ちひしがれるのを期待していただけに、勧誘に対し「わからないよ」と答えるのは妙なズレを感じた。
転校前の学校では「何を考えているかわからない人」と陰口を叩かれていたが、まさにそれだ。メンタルが強いというのはそのキャラの魅力なり得る要素だが、見せ方次第では格好よさよりも不気味に感じてしまう。 {/netabare}

巴マミ
あまり二次設定に近い“弱メンタル”ネタで弄るのは好きではないが、『魔法少女まどか☆マギカ』の第10話で「みんな死ぬしかないじゃない」と(杏子を)殺った娘だ。魔法少女の真実を知れば似たようなことをするとは思っていたが…… {netabare}まさか敵側に付くとは……
それだけに物語そのものよりも、その裏で彼女に何が起こったのかの方が遥かに気になってしまう。もちろん彼女がマギウスの翼に就いた理由は容易に想像がつく、と言うかほぼ口にしている。だが登場する度に状況が激変している彼女を見せられて、すぐ引っ込めてまたいろはたち新魔法少女に視点を戻すのは我慢ならない。
とくに10話では自身の苦渋の決断でマギウスに入ったかのような描写だったのに、最終話では興奮時に目のハイライトが消えて発言も「福音」や「マギウスの導きのままに」など信者めいたものになっている。灯花に魔法か何かで強い洗脳を施されたと伺える。だがそれだと自身の判断でマギウスに付いた巴マミを描写した意味がない。前作キャラが敵に回るというシチュエーションは確かに熱いが、それが洗脳などキャラクターの人格を尊重せずに塗り潰してしまうものでは起用の意味すら薄まるからだ。
ただこう言い切るには劇中の描写が拙いので、とりあえず現在は彼女の出番を長時間観たかったという願望が強い。 {/netabare}

【総評:最初から楽ばっかしてると面白いアニメの作り方忘れちまうぞ】
本作を観て、次作への期待は確かに高まった 。{netabare}行方不明の妹は相変わらず行方不明であり、むしろ妹そっちのけで悪?の魔法少女軍団と主人公が対峙する。他の仲間や巴マミまでもが敵に回る中、味方は七海やちよと美樹さやかしかいない絶望的な状況だ。 {/netabare}
ただ、そうやって見どころを次作へ投げ、伏線の回収も次作に任せ、話の着地点も次作に用意させる──とありとあらゆる要素をseason2にぶん投げた結果、このseason1の作りはハッキリ書いて手を抜きすぎている。
序盤は神浜の世界観と謎に惹かれる部分はあったものの、ほとんどの話が噂を解決しながら仲間集めをすることで終わってしまっているのは看過しがたい。無くてもいいような平坦なシナリオに退屈してしまうのだ。全ての話を食い入るように視聴できるのは原作ゲームもプレイして「マギレコのキャラクターが動いてるのを見れるのが幸せ!」となっている“マギアレコード”のファンくらいだろう。 {netabare}主人公が新しい土地に訪れ新しい仲間をつくる──このストーリー構成がどうでもいいところに尺を使ってしまっている。初めから神浜在住でやちよ、鶴野、フェリシア、さなと共にチームを組んで魔女退治をしてる設定にしておけばいいのだ。そうすれば少ない描写で互いの交友値が高いことを我々が認識でき、最終話で3人がマギウスにつく展開もより強く哀しみを誘える。そういったシナリオでの創意工夫が全くなされていない。現状ではとくにウワサに囚われていた二葉さなが仲間になってこれから絆を深めていく──というところで離脱し再びマギウスの方へ行ったので滑稽にすら見えてしまった。 {/netabare}
見どころは巴マミら前作キャラに頼り過ぎており、マミや杏子、さやかの登場や戦闘以外に心揺さぶられたシーンは挙げづらい。作画のリソースも前作キャラを優遇しているのか、後半は太ったり顔のバランスのおかしな新魔法少女が随所で見られた。前作からおよそ10年が経ち映像技術は上がっているだろうに、キャラのクオリティに統一感がないだけで全体の作画が後退してるように見えてしまうし、前作のレジェンドたちが新魔法少女の割を食ってしまう惨状はまどマギファンでも手放しでは喜べないだろう。
「本番は2クール目だから1クール目はキャラ紹介だけでいい」
「前作の人気キャラを出せばそれが見せ場になるから他にはなくていい」
そんな制作のテキトーな姿勢が透けて見えるかのような薄い出来栄えに肝心のseason2に対しても不安が高まってしまった。いろはたち新魔法少女5人+まどかたち旧魔法少女5人で10人の物語なら喜んで待機するところだが、既にまどかほむら抜きでその倍以上の人数を出して掘り下げが甘かったのが本作だ。追加キャラもいるとも聞くし、次作はさらに輪をかけてとっちらかった話になることは想像に辛くない。
あの『魔法少女まどか☆マギカ』のスピンオフということで期待していたが、その前にソーシャルゲーム発の作品だということを強く悲しく実感させられた。比較対象が伝説級な故に「まどマギが面白すぎるだけでマギアレコードがつまらないわけじゃないから!これから面白くなるから!」という現行プレイヤーらしき者の擁護も目にするが、本当にそうならその面白い部分を上手く再構成するなりして初めから面白いマギアレコードとやらを見せてほしい。今の形では制作からその擁護を本気で伝えようとする強い意思が感じられない。

投稿 : 2022/04/11
閲覧 : 1432
サンキュー:

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