「planetarian ~星の人~(アニメ映画)」

総合得点
72.5
感想・評価
373
棚に入れた
1897
ランキング
1110
★★★★☆ 3.9 (373)
物語
3.9
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.9

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

夢見る星くず

「金持ちが、天国に入るのは難しい。」
マタイ福音書19章です。
続きはこうです。
「らくだが針の穴を通る方が、まだ易しい。」

・・・穴があったら入りたい気分・・・。


「近墨必緇(きんぼくひっし)、近朱必赤(きんしゅひっせき)」。
傳玄(ふげん)の『太子少傳箴』です。
「朱に交われば赤くなる。」の元文・語源と言われています。

どんな気丈夫でも、より影響力のある人には吞み込まれるもの。
転じて、選ぶ友人で人生のQOLがあらかた決まる・・・(汗)。


「泥中の蓮(はちす)」。
仏教典の一つ、維摩(ゆいま)教に見えます。

ビジュアル的には、泥田に咲く蓮は、泰然として清凛としたさま、です。
転じて、渾然のなかにも秩然の心あり、となります。・・・(大汗)。


~ ~ ~ ~ ~


ほしのゆめみはチャットボット。

誰からも愛される "プラネタリアン" 。
星先案内人です。

来館者あっての彼女ですが、肝心のお客さまは誰一人として姿を見せません。

ですが、ゆめみのデータチップに蓄積されているのは、ありがとうの言葉と、幸せにあふれる笑顔ばかりです。



その青年は自分を "屑屋" と名乗っています。

物色するのはロボットに支配された無人の街。
銃撃に逃げ込んだのは、放棄されたプラネタリウム。

人間と見れば誰かれなく攻撃する。
忌むべきは、油断も信用もならないロボットたち。

ゆめみの心づくしにも、彼のポリシーは揺るぐことはないのです。


~ ~ ~ ~ ~


プラネタリアンは、過去も未来も操れる"魔法使い" 。

しばしの陶酔を供するのが、何にも優さる悦びなのです。

長きに待ち侘びた、とっておきの投影プログラム。


"お客様に喜んでいただきたい。"


そんなささやかな夢を、うんと魔法に込めるのです。


~ ~ ~ ~ ~


何を思ったのか、青年は力を貸すことに。

そしていつしか、ゆめみの魔法の囚われ人になるのです。


それは天上からの啓示?

それとも地上の厭戦からの逃避?

あるいは身上を無下としてきた背徳への懺悔?


とまれ、人類の罪を贖う十字架を、青年は背負ったのです。


~ ~ ~ ~ ~


ゆめみは、バグを感知します。
躯体内に見つけようとしますが、それは館外にあったのです。

プラネタリウムの外は、お客さまが歓びを持ち帰る場所。
ゆめみにはたどり着けない、安息の家なのです。


使命を果たすために。
人との未来を紡ぐために。
ゆめみは、自らを鞭打ちます。


その姿は、あまりにも悲しき殉愛。

その願いは、あまりにも遠い殉教。

ゆめみに託されたのは、たしかに人の想いです。

では、人は、何を受け取ったというのでしょう。


~ ~ ~ ~ ~


プラネタリウムには、流れ星の煌めきを。

プラネタリアンには、流れぬ涙の輝きを。



流浪と漂泊の旅路は、ついに託願へと至ります。

満天の星々から、地上の人類へ。

独りの人から、みどりごたちへ。

証は "ちいさなほしのひと" に付されます。



星をめぐり想いを巡らせてきた語り部と伝道師。

身を呈し、また窶(やつ)しても、友愛(とも)なる願いで繋がっているメッセンジャー。

同志なのです。



屑屋は、もうお客様なんかじゃありません。

「プラネタリウムはいかがでしょう。」

そう語れる資質を十分に持っているのです。

投稿 : 2021/11/16
閲覧 : 373
サンキュー:

15

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