「甘々と稲妻(TVアニメ動画)」

総合得点
77.9
感想・評価
921
棚に入れた
4593
ランキング
574
★★★★☆ 3.7 (921)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

父親に幼女とJKが合わさり最強に見える料理アニメ

このレビューを投稿した頃にはもう15歳になってるだろうか……アニメ「甘々と稲妻」は当時10歳の遠藤璃菜ちゃんの演技が輝く作品だ。
ただ可愛らしい声ではなく、子役ならではの純粋さをキャラクターに投影させており、結果、犬塚つむぎというキャラクターはまるで実在しているかのように自然な女の子になった。この声質はそんじょそこらの深夜アニメでは絶対に聴くことができないし、もしかしたら今後の作品では二度と聴ける機会が無いかも知れない。わかる人には開始5分でわかる傑作である。

【ココが面白い:明るくも淋しい父子家庭と「食育」がテーマのホームドラマ】
名子役が演じる幼稚園児と少しくたびれた若い父親の生活を、明るくも忙しない雰囲気を醸し出しながら描いている。ピアノを使ったリズミカルな劇半がそれを強く印象づけているようだ。
つむぎの父・犬塚公平は妻を喪ったシングルファザー。高校教師の仕事と家事、そしてつむぎの通う幼稚園の行事にも欠かさず参加している。溺愛する娘のために本当に忙しい毎日を甘んじて受け入れている良い父親だ。しかしそんな忙しい毎日と料理への苦手意識から、食事だけは惣菜やコンビニ弁当など出来合いの物を使った「中食」が浸透してしまっていた。
「今はコンビニ弁当でも、カロリー計算とか結構気を遣ってますしね」
同僚のフォローもあって、そんな中食の毎日に後ろめたさを感じることもない公平だったが────
ある日、帰りが遅くなった公平は今日もコンビニ弁当を片手に家路につく。そこで彼が見たものは、愛娘・つむぎがテレビにビタッと虫のごとく張りついている姿だった。テレビには圧力鍋の宣伝として角煮を作る映像が映し出されている。
「おとさん!ママにこれ作ってってお手紙して!…………ママ、これくらいお肉おいしく作ってくれるかなぁ?」
テレビに釘付けなつむぎの純粋な問いかけに、公平の手からコンビニ弁当がドサリと落ちるのだった。
この一連の流れに母を喪った家庭の淋しさ、中食を娘に強いた父親の後悔といった情緒が詰め込まれており、本当は母の手料理を食べたいのにずっと我慢してきただろうつむぎを想うと、最近涙もろくなったのか目頭が熱くなってしまった。
愛娘・つむぎに美味しいご飯──もちろん単に味が良いものではなく愛情のこもった手料理を食べさせるため、公平は亡き妻に代わって自炊に挑戦していく。

【ココが面白い:グルメ作品では珍しい初々しさ】
そんな公平と一緒にご飯を作るのが早見沙織さんが演じる飯田小鳥(いいだことり)。母が小料理屋を営む関係で料理の知識は豊富だが、ちょっと抜けている感じで行動や言動がいちいち可愛い。最初に彼女が土鍋ご飯を振る舞ってくれるのだが、その最中に裏手で「お母さんのバカ!なんで土鍋に炊飯用のメモリ付いてないの!?『できますよ』なんてカッコよく言っちゃったじゃん!」なんて半泣きで留守電を入れている、なんとも間抜けな姿が第1話から拝める。彼女もまた自炊経験が少ないのだ。
そんな初心者2人、幼稚園児1人が中心になって料理を作るのだが、こうも初心者揃いだと序盤は出来ることが少ない。初めの土鍋ごはん回は本当に土鍋ご飯しか出てこないし、次回はそこに豚汁を添えるだけだ。初心者あるある「おかずを沢山作れない」で共感を掴むものの、料理やグルメを扱う作品としてはハッキリ書いて地味である。
しかし、そんな地味な工程を丁寧に時間をかけて描写している。最低でもBパートは丸々使い、Aパートはその料理を作る切欠となる日常描写をこれまた丁寧に描写する。キャラの明確な目標が示されているからこそ、公平たちの料理はたどたどしくも見て楽しく、良い出来上がりを応援したくなってくる。
食べた後のリアクションは、いたって普通だ。グルメ作品の醍醐味と言えば過剰なリアクションでこちらを笑わせにくる所だが、この作品でそういうことはしない。しかし誇張の一切ない子どもの素直な「美味しい」の一言や食べることの大好きな女子高生の豪快な感想は、それら全てに勝るとも劣らない物語の締めとなっている。

【他キャラ評】
小鹿しのぶ・八木祐介
犬塚父子と小鳥の料理会にときたま参加するゲストキャラ。2人とも料理ができる故、普段の料理会の初々しさが損なわれてしまうデメリットが出てくるが、しのぶはそれを察しており餃子パーティー以降は小鳥たちの作業に手を出さないよう努めている。八木ちゃんはプロの料理人だから我慢できずに手助けしがちだが、その度にしのぶに怒られてるのが御約束になりつつある。
この2人も加えて作った料理は画的にも豪勢だ。焼き餃子に加えて水餃子に手羽餃子と初心者では作れないタイプの料理を並べてくれる。
食べた時の感想は八木ちゃんが面白いというか共感力がある。餃子にはビール、クレープにはラム酒……やっぱ大人は酒のアテとして考えちゃうよね(笑)

【総評】
全体的に見て非常に丁寧かつしっかりと作られた作品だ。調理の行程を丁寧に、そして料理に使う素材の描写も1つ1つ大切にし、完成した料理を“普通に”美味しそうに“作った本人たち”が食べる。料理が題材の作品においてもっとも重要な部分をしっかりと描き、そこに魅力的なキャラクターの日常が加わることで、1話から最終話までしっかりと楽しむことのできる作品だ。
日常や調理の中でちょっとした発言──例えば幼稚園児のつむぎと女子高生の小鳥が同じことを言ってたり──が自然なギャグにもなっており、思わず笑ってしまうシーンも多く退屈しない。
本作は只の料理アニメではなく「食育」がテーマのホームドラマだ。故に父と娘の関係性も丁寧に描かれており、思わず涙腺を刺激されるような話も多い。日常の中で出てきたつむぎの悩みや父子の不和も料理で解決するという流れに「食」のパワーを感じることができる。
さらに父子の間に女子高生が加わることでほのかに恋愛要素も匂わせている。本作の段階ではあくまで匂わせている程度ではあるが、早見沙織さん演じる女子高生の破壊力は凄まじく、彼女の行動や言動にニヤニヤしてしまう(笑)
ちょうど『ばらかもん』と『幸福グラフィティ』を足して2で割ったような傑作だ。料理には「飯テロ」の破壊力が出てるし幼女や女子高生を中心としたドラマもある。料理アニメが好きな人もそうでない人でも完走できる、欠点らしい欠点もない安定感がある。

投稿 : 2021/10/09
閲覧 : 315
サンキュー:

7

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