「やくならマグカップも 二番窯(やくも)(TVアニメ動画)」

総合得点
66.1
感想・評価
60
棚に入れた
166
ランキング
2524
★★★★☆ 3.4 (60)
物語
3.4
作画
3.3
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.4

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ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

陶芸を主題に家族関係を描き出した良作(一部改訂)

2021年のTVアニメ。春季に1期、秋季に2期が放送。1期2期を通して評価しています。

岐阜県多治見市を舞台に陶芸部の少女たちを描く作品。
地元IT企業・株式会社プラネットが発行するフリーコミックが原作で、10年続くコンテンツです。
2019年に日本アニメーション側からアニメ化を打診して実現しました。

私は全く違う地方の出身ですが、中学校に陶芸窯がありました。クラブ活動で陶芸もやっていたので興味が湧いて視聴しました。


【物語】
家族や友人との関係と、陶芸の魅力がこの作品の二つの柱。とても上手に繋げて描いていたのが良かったです。
{netabare}
父母の故郷である多治見市に父と共に移住した女子高生・豊川姫乃が高校の陶芸部に入部するお話。
部員同士の友情や家族関係・陶芸を愛する人々の悲喜こもごもを、多治見市を舞台に陶芸に絡めて描きます。

陶芸を始めた時の気持ちを追体験でき、私は共感するところが多かったです。
何より、陶芸の「日用品」「美術品」「伝統工芸品」という3つの側面を劇中でシームレスに描き切ったのが素晴らしい。
全ての民芸品に言えることですが、使いやすさを求めれば日用品になり、美しさや思想を織り込めば美術やアートになり、歴史を備えれば伝統工芸になる。それを台詞や説明なしに描いて見せたのはお見事と言う他ありません。

アニメスタッフが目指したのは陶芸の豆知識をただただひけらかすような作品ではなかったということですね。{/netabare}


【声優・キャラクター】
主演キャラクターが素朴で可愛らしく、あざとすぎない塩梅でとても良かったと思います。声優さん達もとても合っていました。
親世代や年配者の描写も良かったです。流石のベテラン脚本家、年代別の描写が丁寧でした。


【作画】
仕草が細かいのにくどさが無く、陶芸に関わるシーンが丁寧なのが良いですね。この方向性がとても好きです。
特に2期11話の姫乃のろくろシーン、作業中の手の作画が神掛かっていて必見。
東京から越してきた姫乃の視点で美しい風景を沢山見れるのも良いですね。


【音楽・音響】
貫入音やろくろの音など、陶芸に関わる音が演出に使われているのが面白かったです。
OP、EDも合っていましたし、可愛らしく素朴な雰囲気で良かったです。
音楽や音響そのものも違和感がなくて好きでした。


【陶芸を題材にしたアニメとして】
物語が人間関係を軸にしているのと共に、陶芸のアニメとして私が良いなと思った点は以下の4つ。
{netabare}
・芸術作品としての描写
姫菜のオブジェが地域で愛されていたり外国でもファンが生まれている
河童の瀬戸物や地元の子供達が作ったオブジェなど街の背景

・日用品としての描写
喫茶店「ときしろう」や部室で使用されるマグカップや時四郎の茶碗
割れてしまった姫乃の座布団
ヒメナの作った仏様用のミニチュア食器

・伝統工芸品としての描写
陶磁器の歴史や各地の陶芸の紹介、土のお話
十子の祖父や窯元の描写、両親が十子に窯元を継がせたくない気持ち
コンクールに臨む十子の葛藤

・作り手のモチベーションの色々
陶芸が好きという気持ち(全員)
著名な先人への敬意や上手になりたいという向上心(十子、姫乃)
自分の発想を形にする楽しさ(三華、姫菜)
迷いや悩みが作品そのものや陶芸への向き合い方に現れる

・陶芸の知識の描写と作画の丁寧さ
様々な説明の挿入
成形する時の手の作画が細かい
焼成までに行われる各工程が会話シーン等に挿入される
作品の形や釉薬の色の表現の繊細さ

以上の内容以外にも音響など、物語を邪魔しない形でわざとらしくなく描かれるのが良いですね。{/netabare}


【親子の関係性について】
{netabare}姫乃の陶芸に対する心の移り変わりが物語の柱。
姫乃のモチベーションは、「お父さんを感動させたい」から「上手くなりたい」、さらには「賞を取りたい」、そして自分の心に正直に作ることへと変化していきます。

個人的には1期のお父さんのために茶碗を作る展開がちょっと引っ掛かっていたのですが、見直してみると姫乃の願いは「お父さんを喜ばせたい」から「お父さんを感動させたい」へと変化していたのですね。
だからこそ、次の目標が「陶芸がもっとうまくなりたい」なんだと気づいて感心させられました。

多治見に越してくるまでの様子からは父子二人の密接さが感じられます。
最終話でお父さんが見ている幼い姫乃の写真、全てお母さんと同じ髪型なんですよね。良くも悪くも家族内の繋がりが強かった。それは亡くなった母親のことも含めてです。
そして多治見に移住したことで、父も娘も周りの人への関り方が広がっていきます。

母と娘の結晶釉の作品には対比が見られます。
姫菜の結晶釉のオブジェは皆を感動させるけれども特定の誰かの物ではなく、偉大な先人の遺産として長い年月多治見に在ります。

その反対に、姫乃の座布団は「お父さんを感動させる」という願いを叶えながらも、最終的には壊れてしまいます。
父のために作られたはずだったのに、座布団は欠片(ストラップ)となり時四郎ではなく姫乃の手元に戻るのです。

何故かと言えば、それは姫乃自身がステップアップした証だからです。実物が無くなったからこそ、姫乃にとって座布団はゴールではなく通過点となる。
作品を作ることが「父のため」ではなく「自分自身のため」に変化したのです。

2期では時四郎の目線から子供にプレッシャーをかけてしまったのでは、というジレンマを描くのがまた良いですね。
けれど姫乃は母親に対するプレッシャーを自覚した時、母と自分の作品同士を並び立たせることではなく、母が導いた出会いやそれによって誕生した新しい物を、さらに別の誰かに見せる(出会わせる)ことを選んだ。
子供は親の予測を大きく超えて大人になっていた、と描くのが素晴らしい。
子供の成長を子供の視点と親の視点の両方から描くのは大切なことです。{/netabare}
全てを通して観ると、実に練り込まれた良作でした。
ほのぼのや家族関係が好きな人にオススメします。


【おまけ】
{netabare}2期4話でまっどでいえもん(部室の前にある頭に花を植えられたペンギンの瀬戸物)視点のユニークなお話があるんですけど、土の一人称で進むのが面白いし時系列が変更されています。土の説明が目的なのでしょうが、何より楽しくて和む回ですね。
(…実は(それだけ大きいと焼成で割れない??背中にでも穴開けておかなくて良いの!?)とか(植木鉢にするなら底に穴開けました…?)とか思っていたのは秘密…(笑))
公式サイトで調べた所、原作のフリーコミックも時系列順で連載されているわけではないんですね。それもあってアニメの構成でも息抜き回としてこういう順序なのかなって感じます。
原作もいずれ時間を作って読んでみたいと思っています。{/netabare}
(2022.1.1)

投稿 : 2022/01/06
閲覧 : 71
サンキュー:

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