「白い砂のアクアトープ(TVアニメ動画)」

総合得点
75.8
感想・評価
443
棚に入れた
1336
ランキング
751
★★★★☆ 3.6 (443)
物語
3.4
作画
4.0
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

漂いながら生きれば良い

東京でアイドルの夢が潰えて沖縄にやって来た宮沢 風花。
沖縄で祖父の水族館を続ける夢を追う海咲野 くくる。
二人の少女や水族館を軸に青春を描く2クールのオリジナルアニメーション。

【物語 3.5点】
挫折した時、心が折れないための柔軟思考のヒントが詰まっている。

一つの視点に固執しないで視野を広げてみる。
苦手だったあの人も思わぬ一面を持っていて、踏み込めば理解が深まった。
希望しない部署でも取り組んでみれば得るものがあった。
終わった夢を追いかけていた際に磨いたスキルが、次の夢でも意外と役にたった。

のどかな沖縄で、寄り道、回り道もいいじゃない?
と登場人物と共に漂っていると人生のヒントが拾える感じ。

感動作!というのとは違うけど、
転び方の引き出し目当てで、心の片隅に常備しておきたいポジション。

反面、夢に向かって一直線!というアニメではないので、
ビシッと決めて欲しい気分の時は、
シナリオもキャラと共に迷走していると感じ、折り合えない危険性。


【作画 4.0点】
アニメーション制作・P.A.WORKS

最近、撮影、色彩が良い仕事をしていると感じるアニメが多いですが、本作もしかり。
夕暮れ時も、熱気を残した沖縄の空気感が伝わるよう調整されている。

手描きの人物作画は、カロリー低減するシーンもあり、決して圧倒的ではない。
そこを水槽内を泳ぐ魚群等を処理する3DCGも交えた総合力で、
色々な意味で複雑怪奇な水族館バックヤードを再現し、
お仕事アニメメーカーの面目躍如。

水族館もアニメ制作も多彩な役割を担うスタッフが
ワンチームで作り上げるものなのだなと感慨に耽ってみたり。


【キャラ 4.0点】
水族館もキャラも生物多様性かつ多面的で、視聴者のキャラ許容力が試される。

元アイドルの風花。
一流芸能人の素質を持っているが、
当人は誰かをサポートすることで幸せを得る性格。
まず、このヒロイン像を受け入れられるかで視聴満足度が上下しそう。
才能持ってる人間はそれを生かして輝かねばならない
という意識高い系の邪念を払拭して、風花を温かく見守れるかどうか。

JK水族館館長代理・くくる。
おじいの「がまがま水族館」を存続させるのが夢と言うが、
この夢、序盤はフワフワしていてどうにも怪しい。
具体性も乏しいし、夢と言い換えた亡き両親への未練が、
くくる自身の世界を狭めている感すらある。

この違和感を形にしてくれるのが、南風原 知夢(はえばる ちゆ)。
彼女もまたもう少し視野広げた方が良いおかたい研修生。
(但し、16話観たら、くくるに苛立つ理由にも納得させられます)
飼育員の道を計画的に歩んでいる彼女とくくるを衝突させ、
くくるの夢に不足している要素を明示する良いスパイス。

他にも{netabare}表情も仕事も厳しい副館長さんや、
ウエディングプランナーの論理を譲らない三浦さんなど、{/netabare}
くくるは、ぶつかる人間に恵まれています。

できれば南風原さんを3話くらいまでに投入すれば展開が締まったのでは?
そう思う私は、1クールですぐに結果を求める風潮に毒されているのでしょうか。


それにしても{netabare}ティンガーラ編で"がまがま"と揶揄される移籍組。
合併会社あるあるみたいで、生々しいですw{/netabare}


【声優 4.0点】
風花役の逢田 梨香子さん。
こんな麗しい声の元アイドルが、水族館でペンギンについばまれるなんて。
序盤は場違い感がよく表現されていて申し訳なくなりますw
が、沖縄に居場所を作ってからは、側にいると安心するボイスで、くくると視聴者に癒しを提供。

くくる役の伊藤 美来さん。
喜怒哀楽が激しい沖縄人を好演。
というより{netabare}このリアクションボイスなしじゃ、
プランクトンはパワハラ、ブラックなティンガーラを乗り越えられませんでしたw
一度、心が折れる前、感情が平坦になっていく表現も○。{/netabare}


おじい役の家中 宏さん。
照屋月美役で沖縄出身の儀武 ゆう子さんの方言指導も受けながら、
くくるを優しく諭す、柔和なボイスを構築。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は出羽 良彰氏。
ピアノ、ストリングスの心情曲に、適宜、沖縄の三線もアレンジ。
サントラはゆったりしたカフェラウンジのムード。

OP主題歌は前・後期ともARCANA PROJECT
特に前期の「たゆたえ、七色」の歌詞に回り道を是とする本作の志向性が凝縮。

ED主題歌は前期がMia REGINA。後期がでんぱ組.incの相沢 梨紗さん。
前期の幻想的なムードといい、後期のバラード表現力といい、
最近のアニソン歌手やアイドルは凄いですね。
……これは、風花ちゃん芸能界諦めて正解だったかもw


【感想】
私が地味に好きなのが17話。
{netabare}くくるたちが部屋で同僚らと親睦会を開く件。
シフト時間帯、仕事への本気度など様々な価値観の人間が交流するのを見ていて、{/netabare}
和やかな空気の中でふんわりと相互理解の輪が広がっていく。
そういうムードが現実社会でも拡散して欲しいなと願ってみたり。

投稿 : 2022/02/10
閲覧 : 467
サンキュー:

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