「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 第2クール(TVアニメ動画)」

総合得点
88.5
感想・評価
723
棚に入れた
3107
ランキング
106
★★★★★ 4.1 (723)
物語
4.1
作画
4.3
声優
4.1
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

脳トレ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.2
物語 : 1.0 作画 : 4.0 声優 : 2.0 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

掘り下げるほど高まる「おまいう」感

<12~15話>
作画は非常に高水準で安定しているのだが戦闘シーンの動きが剣の初心者から達人まで、みな似たような動かし方と演出なせいで個々の違いや凄味が薄くなっている。種族ごとの生活様式の描き分けなどはしっかりしているので余計に気になる。
話やキャラも1クール目と変わらず。魔王を倒すとか元の世界に戻るとか、物語の主軸となる動機がなくどこに向かっている話なのかピンとこないので、作中でどんなに凄いイベントが起きてもいまいち物語としての起伏にかける。
14話にしてルディにようやくまともな正義感が芽生えてきたかと思えば人助けをしたその直後に助けた子供の裸を覗きそれを笑えるネタとして扱う。キャラを掘り下げるほどルディの、そして制作側の性暴力に対する認識・倫理観の欠如が浮き彫りになる残念な作品。またルイジェルドが人を殺すことであんなに揉めていたのに、いつの間にかルディもそれを受け入れてしまっている雑なキャラ描写。

<16~17話>
トラウマ描写について
{netabare}パウロと再会して早々責められたルディがいじめのフラッシュバックを起こす展開がかなり唐突で強引。2話以降ここまで一切触れられてなかったのでてっきりもうトラウマは克服したとばかり思っていたのだが。裸で晒し者にされた記憶というなら14話で獣族に全裸で監禁された場面の方がよっぽど状況が近いだろう。冤罪で投獄されてもまったく動じずネタをかます余裕すらあったのに、パウロの全く筋違いな八つ当たりで急に動揺する流れに説得力がない。そしてそんなパウロを止めようともせず、自分と同じ被災者であるルディ(しかも彼らからすれば11際の子供)に冷たい態度をとる周囲の大人たちも不自然。表面的な絵面をなぞらえて過去のトラウマと結びつけるための無理やりな演出にしか見えない。{/netabare}
第一クールで口喧嘩した時もそうだがパウロを極端に愚かな人間にすることで相対的にルディが知的で正当であるように見せているだけの幼稚な手法。

そして何度も言うが、ルディは自分がいじめられた記憶は何十年たっても、それこそ肉体が生まれ変わっても尚消えない魂の傷として残っているのに、自分がこれまでしてきた性暴力が同じように相手を一生傷つけ苦しめる行為だという事に全く思い至っていない。自分の加害を棚に上げる…どころか認識すらしていないのだ。
{netabare}「俺がこんなに落ち込んでいるのにこいつは何で能天気に、楽しそうに、無神経に、ヘラヘラ話していられるんだ」
女がレイプされてもネタで済ませ、ヘラヘラ笑いながら子供相手に痴漢や覗きの性加害を繰り返している奴がこれを言うのだ。ここまで完璧な「お前が言うな」もそうそうないだろう。
被害者意識だけ一丁前の痴漢とレイプ魔のなれ合いを「親子の感動エピソード」として見せられても醜悪なだけである。{/netabare}

魔力災害について
{netabare}ルディ達だけでなく領土丸ごと?が消失したとんでもない事件だったと発覚したが、それ程の大災害だったならいくら遠いとはいえ旅して行ける、人が交流している海外(魔大陸)にも情報は伝わるのではないか。
{/netabare}

<18話>
ロキシーの里帰り&前回と違いまっとうな親子のエピソード
改めて、土地や種族毎に異なる文化・風習をビジュアルだけで語ってみせる世界観の描き込みぶりは素晴らしい。{netabare}念話という特殊能力とそれにまつわるロキシーの想いをセリフ説明ではなくエピソードでしっかり描いた話運びも良かった。ベタな船酔いネタやミグルド族の長寿ネタも素直に笑えたしオチの下ネタも比較的抑えた描写にとどめて今回の話の雰囲気を壊さないようバランスに気を使っていたように思う。(何よりルディの性犯罪とは違ってこちらは大人同士の合意による行為である){/netabare}
この話だけ見ればいたって上質なファンタジーものである。もはや転生や主人公の存在の方がいらない要素に感じる。

<19~20話>
家族との再会&クズ同士の小競り合い。{netabare}この話でもパックスを分かりやすく悪者にすることで相対的にルディが上げられているがやってることは同じ性加害。パックスのセクハラは女性から嫌われ避けられる行為として描かれる一方で、ルディやパウロの性加害は何故か被害者から慕われるという何とも都合のいいくだらない話。
たとえ視聴者が共感できないような悪人同士の戦いでも、スリリングな騙し合いやハッとさせられるトリック、工夫を凝らしたバトルなど何かしらの見どころがあれば楽しめるが。今回のエピソードはそこに至る展開も適当、旅の目的のはずの家族との再会も淡泊。ピンチ打開の切欠となったフィギュアネタはおそらくこのアニメで初めて?現代のオタク知識が役に立つ場面だったと思うのだがキャストオフはまだしも「ほくろを乳首に見立てるエロス」はさっぱり意味が分からない。ロキシーとそういう場面があったわけでもないしフェチズムとしても納得もドン引きもできない中途半端なものでカタルシスも面白さもない。

そもそもほくろがどうこう以前にパンツ一丁の状態が恥かしいという当たり前の感覚が完全にすっぽ抜けている。しかもそれを「裸にひん剥かれてトラウマになった」という奴が理解していないのはどういう訳なのか。第一クールの感想でも語った通り、常識や正義感はあっても女の人権という概念だけが抜け落ちているからだろう。

ルイジェルド人形は人助けとセットで布教することで彼への偏見を払拭するという立派な目的があり本人にもそれを説明している。
今回のキーアイテムとなったロキシー人形はたんなる気晴らし、趣味で作ったものでありその内容もザノバが熱く語った通りいたる部分に性的強調を施し本人に無許可で裸まで造形された間接的な性加害である。
男の方は尊厳を取り戻すため、女の方は面白おかしく尊厳を弄ばれ、人形の扱い一つとってみても女性蔑視が透けて見える。{/netabare}

アイシャについて
{netabare}敵に捕まっていただけなのに、自分を毛嫌いしていた妹から何故かあっさり兄として認められる空っぽな展開。さらにそのアイシャ自身が「変態の魔の手から逃れるため」に「自分の体を売りに」ルディとの同行を望むという破綻した言動をとる。そして子供に手を出し続けるクズが常識人ぶってそれを窘める。なぜこうも一貫性のないキャラ描写を繰り返せるのか。

意味不明だったパウロの不倫&ダブル懐妊も、この文字通り毛色の違う妹キャラを侍らせるために入れたんだろう。ルディの未来のハーレムのバリエーションの為にゼニスは夫の不倫レイプを許し被害者母娘と仲良く子育てするというバカげた展開になったのだろう。とことん女を舐め切った作品である。{/netabare}

<21話>
恐らく物語上かなり重要なポジションのキャラと初遭遇・戦闘する話なのに、ルディの行動があまりにも馬鹿すぎて盛り上がるどころか怒りすら湧いてしまった。
{netabare}一年以上も命がけの旅を共にした仲間の異常な様子に気付かない、その仲間の忠告を無視してベラベラ相手に話しかける、ヒトガミとの関係を問われて驚いたり怪しんだりもせずあっさり認める等々…迂闊なんてものではない、いくらなんでも馬鹿すぎる。これまで様々な思考・策略( )を張り巡らせていたはずのルディがそれこそ「唐突に」空気の読めない危機察知能力ゼロの間抜けになる。作者は誰かしらを馬鹿に描く以外に物語を動かす方法を知らないのだろうか。

演出も盛り上がりを削いでいる。冒頭で何度も「唐突に~」と具体的な映像付きで全滅のピンチを示唆しているので全く唐突さはない。かといって様々な要素が絡み合って冒頭のシーンに至る、というような盛り上がりもない。「これからこういう事が起こります」と前振りされて何の起伏も無く前フリ通りのことが起きただけなので面白くも何ともない。ルディがサクッと死んでサクッと生き返って、本人も「まぁ仕方ないか」くらいの軽い反応なので突然の主人公の死という一大イベントなのに緊迫感さえゼロ。今後も起こるだろうピンチの緊張感まで削ぐ酷い内容。終盤に入ってから何を見せたい話なのかどんどん意味が分からなくなっている。{/netabare}

<22話>
帰郷と別れの話
{netabare}ルイジェルドとの別れ
さも感動的な場面のように見せていたが状況を俯瞰してみれば、「子供に手を出す40過ぎの犯罪者」が最後までその正体を隠したまま「子供だけは絶対守る」というルイジェルドの信念を利用したというゲスな話である。罪悪感どころか相手を騙していた自覚すらなく感傷に浸ってみせるルディの神経を疑う。

エリスとの別れ
前述のシーンと同じく。「子供に手を出す40過ぎの犯罪者」が最後までその正体を隠したまま15歳の娘と肉体関係を持ち、その後置いて行かれてビービー泣きわめくというしょうもないラスト。こんな話を哀愁めいた演出で見せられてどうしろというのか。
そもそもルディはひとりよがりの独断でシルフィーを何年も故郷に置き去りにした挙句エリスに鞍替えしているのである。それを忘れて(というかコレもまた認識すらしていないのか)彼女に捨てられて可哀そうな僕、みたいに被害者ヅラ出来る神経を疑う。{/netabare}

<23話>
いじけたルディが再起する話
{netabare}ここにきてまたいじめ被害の話を蒸し返してきたがその内容が現状と全然関連がない、むしろ生前の正義感やいじめられて傷ついた様子を詳細に描いて見せたことでその後の性加害の数々と更に整合性が取れなくなっている。自分は無理やり裸にされて今でも傷ついてるのに、何故あんな楽しそうに関係ない子供の服を剥ぎ取って興奮してるのか、それを軽いジョークとして描けるのか。他人の痛みが分からない自己中のおっさんの異常行動を延々と見せつけて何を伝えたいのか、理解できない。{/netabare}

生前の両親について
{netabare}てっきり理解のない親のせいで余計にルディが心を閉ざした~みたいな話かと思っていたら、むしろ息子を励まし学校側にきちんと責任を求める至って普通の両親である。そんな親に寄生し続けて最後は葬式にも出ず、姪の盗撮映像でオナニーしていたのが生前の人生だ。異世界に転生して大冒険の中で初めてできた彼女にフラれたのが現状。状況が重なるどころか何一つかすりもしていない。
剣と魔法の世界を外にも出れなかった引きこもりとは思えないほど図太く無神経に渡り歩いてきたルディが、被害者ぶりたい時だけトラウマを引っ張り出して弱者アピールしているだけである。{/netabare}

ルディの再起について
{netabare}パウロに信頼を裏切られたゼニスに対して、不倫相手とその子供を受け入れろと正論ぶって諭していた奴が
女子供に性暴力をくりかえし妊娠・出産・育児に至るまであらゆる女の尊厳と命を軽んじてきた奴が
自分の失恋(しかも勘違い)にはビービー泣いて悲劇の主人公を気取ってみせる。心底くだらない話だと思う。

その他にもエリスが別れを選んだ理由も話の前後繋がっておらず全く理由になってない。ルディに助けられてばかりというがむしろ戦闘で大した活躍もなくちょっと前にルディの迂闊な行動でパーティー全滅の憂き目にあっている。生き返ったのも敵の気まぐれ、偶々だ。そんな簡単に死ぬルディと生きてまた再開できる確証もない、再会したとしてその時にルディがまだ自分を想っていてくれる保証もない、むしろ独断で相手を置き去りにしたわけだから諦められてる可能性が高いだろう。また何をもってして「ルディに相応しい自分」とするのかも判然としない、パッと思いつくだけでもツッコみ所だらけで言動が滅茶苦茶だ。
ルディが失意から立ち上がる切欠になったゼニスとの記憶も前半のトラウマの流れと特に関係なし。ここまで23話の尺を使っても特に母親への想いも描いて来なかった(どころか隙あらば意味のない女性軽視を垂れ流す有様)なくせに見せ場を作るために取ってつけたような安い親子愛をねじ込んでくるチャチな演出。しかもこれが最終回、大冒険の末の最後の盛り上がりなのである。これだけの莫大なエネルギーを注ぎ込んで作られた作品で最後に語られるのが「性犯罪者のクズ中年の失恋、それでも頑張る僕」なのである。だから何なんだとしか言いようがない。{/netabare}

総評
最後まで評価は好転せず、物語を牽引する目的もなく主人公をはじめキャラの描写もブレブレ。女子供への性暴力を下ネタと言い換えて誤魔化す性犯罪者の幼稚な自己愛と女性蔑視を延々垂れ流すだけのしょうもない作品だった。

投稿 : 2022/06/05
閲覧 : 354
サンキュー:

10

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