「遊戯王デュエルモンスターズ(TVアニメ動画)」

総合得点
71.2
感想・評価
386
棚に入れた
2150
ランキング
1355
★★★★☆ 3.9 (386)
物語
3.9
作画
3.5
声優
3.8
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

恥ずかしながら帰って参りました

全224話。これだけ膨大な尺があると1話1話を深夜アニメのように真剣に観るということは出来ず、一昨年リリースされた『遊戯王 マスターデュエル』を遊びながら────さながら「決闘を観ながら決闘をする」感じでおよそ1年かけてさらりと通した。小学生の時に1度観ているしね、ご勘弁を
某動画サイトではMADムービーも多数制作された週刊少年ジャンプの人気作。そして国内TCG(トレーディングカードゲーム)の最長にして最大手に君臨する『遊戯王オフィシャルカードゲーム』の原作の魅力をこのレビューでも伝えていきたい。

【ココがすごい!:モンスターの秀逸なデザイン】
ヴァンガード、Z/X、ウィクロス、バディファイトetc.様々なカードゲームを遊んだ後に改めて『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』に復帰して感じたことは「モンスターがカッコいい!」である。現在でもこのシリーズが根強い人気を誇っている理由がこの点にあるのだと思う。
恐竜のような造形を目映い白銀の鱗と翼で飾った『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』。
黒い甲冑を身に纏い、魔法使いながら一流の戦士のようにも写る『ブラック・マジシャン』。
どちらも一目で脳裏に叩き込まれる、独特かつ洗練されたデザインをしている。
{netabare}『バトルシティ編』から登場する神のカードの圧力も凄まじい。とくに『オシリスの天空竜』は東洋龍をモチーフとしつつも目は白眼、口は2つ持たせるという一歩間違えればかなり醜悪になってしまう要素を多分に秘めているのだが、そのバランスは絶妙だ。3体の神の中でも威圧的かつスタイリッシュなデザインがなされており、神の中では主人公が1番愛用していくのも納得感が深い。{/netabare}
青眼の白龍とブラック・マジシャン。放映開始から終了までの長きに渡り、この2体が各々の決闘者(デュエリスト)の“切り札”として支えて活躍することで、25周年を迎えた遊戯王シリーズの看板モンスターとして多くの人の心に刻まれている。

【ココが面白い:罠カードの存在と駆け引き】
モンスターデザインも秀逸だが、何と言っても遊戯王最大の特徴は『罠(トラップ)カード』の存在とそのルールだ。
TCG最大手の遊戯王にあるので意外かも知れないが、手札から直接使えず場に伏せて相手の出方次第で発動するカードというのは、隅々までカードゲームを調べてもこの遊戯王にしかない。すぐには使えない代わりに強力な効果(相手モンスター全滅など)を持つものが多い罠カードは、相手の物は警戒しなければならないと同時に、自分が使う場合にも場に伏せれば魔法カードなどで事前に取り除かれるリスクを鑑みなければならない。
だからこそ「ブラフ」という戦術も有効だ。相手にとって詳細の解らない伏せカード。実は何でもないカードをいかに危険な代物だと思い込ませるのか。そういった駆け引きが劇中でも描かれることで本作は、カードゲームを題材とした作品群の中でも頭一つ抜けて面白くなっている。

【ココも面白い:意外とストーリーは風変わり】
原作初期では闇の人格を得た主人公・武藤遊戯が「遊戯(ゲーム)」を仕掛けて悪人を負かし、罰ゲームという制裁を与える勧善懲悪モノであった作品。そんな闇人格が実は主人公とは違う人物──{netabare}古代エジプトの王{/netabare}──であり、彼の記憶とそこにあった出来事を紐解く鍵を握るのが劇中で取り扱うカードゲーム『デュエルモンスターズ(以下、DM)』にあるというストーリーが、実は2作目のアニメである本作で展開されていく。
相手の心を読み、自分に絶対有利なカードを創造するDMの生みの親・ペガサス。
そんな親でさえも創り出しながら使うことが出来なかった『神のカード』を巧みかつ豪快に操る墓守の末裔・マリク。
2人の敵の濃いキャラクター性が主人公側のこれまた濃いキャラクター性と激しくぶつかり合い、台詞の応酬が絶えずに各エピソードを彩っている。
また主人公側が2人にたどり着くまでにも様々な「決闘者(デュエリスト)」を下さなければならず、彼ら決闘者も脇役ではあるものの、決して端役ではない。彼らはモンスターの種族・属性を自分好みに寄せて独自の戦略を引っ提げてくる。そして時には身勝手なものから仕事人(ワークマン)として、はたまた同情すべき切ないものまで多岐に渡る「決意」を抱えて主人公らに立ちはだかるのだ。
飽くまでニチアサレベル、ジャンプ作品レベルではあるものの次代の玩具アニメとは一線を画す程のストーリーの面白さがあり、また全てのカードゲームアニメのストーリーの雛形ともなっていることは間違いない。

【でもココがつまらない:全ての元凶はドーマ編】
しかし原作(初期を省いて単行本30冊程度)の内容には文句が無いものの、全224話ともなるとどうしても質の悪いアニメオリジナル展開が入ってきてしまう。「ジャンプで人気・長期連載」された作品──とくに00年代──の宿命と言っていい。
とくに『バトルシティ編』の後に挿入された『ドーマ編』は現在も賛否両論だ。SNSの無い当時だからこそ最期まで事なきを得て放映された代物だが、仮に現在、あの内容を放送しようものならとてもじゃないが炎上は避けられないだろう。
{netabare}まず原作より先んじて「世界滅亡の危機」を描いてしまったことで、後にやる『王の記憶編』のゾークが何故か二番煎じにまで追いやられる。これは原作へのリスペクト精神が不足している、その表れとも言えてしまう。
オリジナルカードを活躍させるために、遊戯が全て手中に収めた神のカードがアンティ(賭け)もせずに強奪され暫く封印されてしまうというのも今後、スケールがバトルシティ編以下のものをやりますよという宣言以外の何物でもない。
キャラクターの扱いも褒められたものではないだろう。多くの登場人物が主人公含めて「闇堕ち」し、漏れなく無様な敗北を辿る。単純に大きな力・非常なる勝利を求めた者の愚かさを描写するわけだが、そんなものは原作の範囲で何度も描いていくものである。
一際、不味かったのが主人公の闇人格とされる闇遊戯をオリキャラで負かしてしまったことだ。彼は原作の範囲内では実質的に全ての決闘を「無敗」で終えており、その点が原初のカードゲームアニメでもある本作の「カリスマ」として成り立たせている部分でもある。そこをアニオリが勝手に黒星という汚点を付けてしまえば原作ファンに反発されることは必至だ。
その時の決闘では「モンスターを生け贄に捧げること」がまるで悪いことのように描かれていたが、それもどうなのだろうか。これも原作ではバトルシティ編以降、ゲームバランス調整として設けられた上級モンスターを召喚するルールの一部であるし、それ以外にも唯一の勝利を手繰り寄せるために必要な行為という側面もあり、決して咎められることはなかった(こう書くと「パンドラ戦の時に『貴様の僕が泣いている』とか言ってたじゃんとツッコまれるけど、アイツは別に遊戯が攻撃を封じてるわけでもないのに無理やりモンスターを生け贄にしてダメージ与えにきてたからね。もっと他にモンスターと共に戦う戦術があっただろう、という意味の遊戯の台詞だと思いますよ)。墓地(トラッシュ)にモンスターを置かないことを信条とするオリキャラ──ラフェール──が非難するのはともかく城之内ィ!お前は『王国編』で遊戯がカタパルト・タートル使うのを2回は見たことがあるだろ!{/netabare}
決闘の棋譜(きふ)も主要キャラ3人が各々『名も無き竜』を使った場当たり的な融合カードを創り出してピンチを切り抜けるというご都合展開が多く、なんとか『遊☆戯☆王』自体のメインターゲット層の「子供だまし」にはなっているが、時の経った現在だからこそ何度も観れるカードゲームとしての戦略性とそれを組み立てるキャラクターの魅力といった部分は唯一、大きく欠けているエピソードだと主張したい。

【キャラクター評価】
武藤遊戯{むとう ゆうぎ}/闇遊戯({netabare}アテム{/netabare})
1つの身体に2つの心を持つようになったヒトデ────じゃなかったゲーム屋の息子。後述する2人と比較して使用デッキのバランスが良く、弱いモンスターやピーキーな魔法カードにも活躍を与える。「カードゲームは戦略ゲー」の旗印を掲げる、このテのジャンルではオーソドックスな主人公だ。
特筆すべきは中の人────風間俊介さんの演技の成長。第1話こそ『なにこれぇ』などの棒読みが目立っていたが、『決闘王国編』を終えてバトルシティ編に入ってからは表遊戯の優しくて気弱そうな少年の声と闇遊戯のクールで鋭い声の演じ分けが見事に成されるようになった。アニメ1作目では緒方恵美さんがCVを勤めており「そちらが良い」という意見もあるが、彼女を始め本職の声優(役者)に負けない演技を4年半の月日で培ってきたのが元ジャニーズの風間さんであり、現在となっては遊戯役は彼しか考えられないだろう。
ジャニーズに色々あったからこそ、風間さんには今後、アニメ関係の活躍にも期待したい。

海馬瀬人{かいば せと}
みんな大好きKC(海馬コーポレーション)社長。プライドの高さに相まって財力・権力を駆使したとんでもない行動力や突飛な発言が毎度、遊戯王ファンの心を鷲掴む。
闇遊戯のライバルであり頭脳プレイも魅せるけれども海馬が掲げるは「カードゲームは資産ゲー」。残酷ながら最もトレカの真理に近い。愛する青眼3枚も全て金の力で手に入れ魔法・罠も『ウィルスカード』という相手のデッキを直接軒並み破壊するようなパワーカードを投入している。ここまでしといて成金感は微塵も感じさせないのだから本当に不思議なキャラクターですよね(笑)

城之内克也{じょうのうち かつや}
ここまでカードゲームは戦略ゲー・資産ゲーだと書いてきたが、最後に忘れてはならないのは「カードゲームは運ゲー」。極論、運さえすこぶる良ければお金が無くても頭が悪くても紙束40枚で上級者たちに肉薄していける。そんな姿を熱く──時としてコミカルに──魅せ続けてくれるのが城之内だ。
貧乏学生であり不良からは足を洗った城之内に強いカードは中々、手に入らない。強いカードとは「効果が安定している」カードのことでもある。ならばその逆は────「ギャンブル」だ(笑)
コイントスで大量ドローを狙いサイコロの出目で自軍を強化する。それでも相手のカードの方が強ければ『墓荒らし』や『モノマネ幻想師』で逆利用したりあろうことかルーレットに勝敗を投げてしまう。不安定な効果のカードは相場が安いのか城之内の単なる好みか、とにかく彼の決闘には引き運とは別の運ゲーが常に絡んでいく。
運任せなプレイングや手癖の悪さは正々堂々とした勝負とは程遠いものの、カードゲームというジャンルだからこそそれらの要素は面白く輝く。そして運が良い以前に、運に身を任せる「度胸」とそれに対戦相手を捲き込んでいく「牽引力」が格好良く映り、そんな対戦相手からアンティという形で譲り受けた切り札カードをデッキに加えて着々と強化されていくという「成長」にカタルシスすら感じさせてくれた。

【総評】
やはり何度観ても『決闘王国編』『バトルシティ編』の面白さは鉄板だ。各々ルールが全く異なるものの共通して故・高橋和希先生の秀逸なモンスターデザインが盤上に限定しながらもアニメーションで息づいており、それらを僕(しもべ)とする人間キャラクターたちの魅力も申し分ない。
他のカードゲームアニメがとかく、新カードを販促するための只の対戦動画になりがちな中で、本作は『千年アイテム』の謎やその摩訶不思議な力を掲示したり、トランプゲームやカジノで見られる「イカサマ」などといった盤外戦術によって主人公側が不利になる展開も描いていく。されども飽くまでカードゲームのルール範囲でそれらを正々堂々と打ち破り、夢や栄光を手にする主人公たちの逆転劇がジャンプ作品らしくとても熱い、観てて燃えるストーリーだ。
およそ4年半を通して切り替わる豊富な主題歌は、臆面もなく書けば神曲のオンパレード。これまで闇のゲームを仕掛けてきた初代遊戯王の面影を引き摺りながらダークな曲調を奏でる『voice』、奥井雅美さんの力強い熱唱で遊戯王の世界観を深めた『Shuffle』、ノリの軽さが気になると思いきやサビの歌詞が後の展開を考えるととても深い『WILD DRIVE』、闇の力に侵食されつつある危機的な劇中展開に合わせたかの様にシリアスな『WARRIORS』、そしてイントロから疾走感が凄まじく、サビの盛り上がりにおいては全曲最高潮な『OVERLAP』というOPリレーで絶え間なく本編へのワクワク感を与え続けてくれる。
BGMも熱く壮大。『クリティウスの牙』や『My turn』、そして『熱き決闘者たち』が流れる中、切り札を切ってピンチを乗りきる主人公たちという1セットは多くのカードゲーマーやアニオタを魅了している。
長い連続放映の中で作画やエピソードの出来映えといった点にはどうしてもムラが出てしまっているものの、それらも含めて長年オタクから愛されている素晴らしいコンテンツ、そしてカードゲームアニメだ。私は一応、これとは別に懇意にしているカードゲーム作品があるのだが、それもそろそろ「していた」と改めるかも知れない。半端なライバル作品を寄せ付けない、国内においては“唯我独尊”とも言える化け物コンテンツ。そのアニメシリーズ初作の門戸は広く、カードゲームをやらない方にもオススメだ。

投稿 : 2024/02/08
閲覧 : 38
サンキュー:

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