「賢者の弟子を名乗る賢者(TVアニメ動画)」

総合得点
59.5
感想・評価
206
棚に入れた
674
ランキング
6091
★★★☆☆ 2.8 (206)
物語
2.5
作画
2.7
声優
3.1
音楽
2.8
キャラ
2.9

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.1
物語 : 2.0 作画 : 2.0 声優 : 2.0 音楽 : 2.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

スタッフ選びは大事。

【概要】

アニメーション制作:studio A-CAT
2022年1月12日 - 3月30日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載しているweb小説を改訂し、
マイクロマガジン社から刊行されている、りゅうせんひろつぐによるライトノベル。
原作イラストは、藤ちょこが担当し、
webサイト『コミックライド』にて、
漫画家の、すえみつぢっかの作画によるコミカライズ版が連載中。
監督は、元永慶太郎。

【あらすじ】

VR・MMORPG『アーク・アースオンライン』
四年前に突如現れたマイナーなオンラインゲームである。

はじまりは、深夜のテレビCMにVRMMO用のアクセスコードが表示されるだけだった。

しかし、その中身は幾多のゲーマーの探究心をくすぐるものであった。

一プレイヤーである咲森鑑(さきもりかがみ)は、ゲーム世界では、
ダンブルフ・ガンダドアという、老練な超一流の召喚術師として名を馳せていた。

ダンブルフが寝落ちしたあとでプレイを再開すると、
VR世界に今までにない嗅覚が実装されてるなどの違和感。

更には、自分がお気に入りの老人キャラでなくて銀髪の美少女の姿になっているのに気づいた。

期限失効直前のバーチャルマネー500円分で『化粧箱』を購入して、
つい本気を出して徹夜で理想の美少女をキャラメイクして遊んでいたら、
キャンセルをし忘れてOKでそのまま寝落ちしてしまっていた。
しかも、四年間、なりきりプレイで親しんできた老賢者ダンブルフで、
うっかりとアバターの上書きをやらかしてしまったのである。

このゲームには数多くのNPCが配置されているのだが、
そのNPCがまるで人間のような感情と反応を持っている、などの異変が起きている。
更にはダンブルフが活躍していた時代より、この世界では30年が経過していた。

だがしかし!この逆境に心が震えてきているダンブルフは、
ゲーム時代より変化した、この世界を楽しむことにするのだった。

少女の姿になって戻れなくなった彼は、
威厳ある老賢者ダンブルフの名前をそのまま使うことに躊躇して、
プレイヤーの本名の鑑(かがみ)から、ミラ。
賢者の弟子を名乗る賢者ミラとして、
アーク・アースオンラインの再スタートを切ったのである。

【感想】

原作や漫画を知らなければ、低クオリティなろうアニメ程度の認識で1話切りな内容。

原作者の、りゅうせんひろつぐ氏が2012年から10年間継続して、
「小説家になろう」で強い愛着を持って連載している、
なろう界隈では長く続いていて一応はそれなりに人気のある作品であって、
私の場合は、たまたま漫画版を5年近く読んでいますのでガッカリ感が強いですね。

私見ですが、ネカマ(ネットで可愛い女の子を演じる男性)の夢と理想を描いた作品かな。
作中では特級の美少女であるミラ(中身はアラサー男性)が、
可愛い服を着せられたり女の子扱いされることに戸惑いながらも順応していく。
視聴者へのあざといサービスシーンがあったりもするのですが、
ミラは作品の中ではセンターで最高のアイドル的な存在であって、
作中では絶対的な可愛さという設定の主人公を楽しむためだけの作品ですかな。
ぶっちゃけ、冒険とか戦闘とかはミラの可愛さや凛々しさを引き立てるためのパートですね。

これまではキャラクターデザインの挿絵担当者にもコミカライズ担当の漫画家にも恵まれて、
ドラマCDでは大ファンである丹下桜さんを主人公のミラ役にとの原作者の要望が通って、
アニメ化までは作品は順風満帆だったわけですよ?

ところが、待望?のアニメ化の監督が元永慶太郎氏。
「刀語」「ヨルムンガンド」「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」
などではプラスの実績としてカウントされているものの、
「デジモンアドベンチャー tri.」「うたわれるもの 偽りの仮面」などでは、
これまでのシリーズ作や原作ゲームなどの設定やキャラの描写を丁寧に拾わずに、
自分の趣味と感性を頼りに作ってしまうがために展開に矛盾や粗を作ってしまって、
原作粉砕機として、能力が不安視されている方ですね。
しかも、制作会社は作画がお世辞にも良いとは言えないstudio A-CATでして、
ビジュアルや美術面では期待できないです。

案の定、21年3月に公開された、ほとんど動かない第一弾PVと量産型のライトなキャラデザから、
原作小説や漫画版のファンからは、このアニメ大丈夫?と危ぶまれたわけですよ。

実際、第1話冒頭のアーク・アースオンラインの説明シーンで、既に?が付く内容。
数十年後の近未来なのにゲーム画面が2000年代前半仕様のマウスをカチカチ動かすPCネトゲ。
え?「ソードアート・オンライン」や「オーバーロード」と同じく、
現実世界と同じ視野で仮想現実を体験するVRゲームじゃなかったんかい?
と原作の地の文を読んでいればありえない理解不足による演出ミス。
このコンテを描いたのは誰だよ?と思えば、元永慶太郎監督と他の演出家での連名。

元永慶太郎という人物は業界に35年以上と昭和からいるベテラン演出家なのですが、
地頭が古いのか、『アニメを面白くするためにも原作は読みません!』
とドヤ顔することで有名だからこそ、適当な仕事で描写の矛盾が起きます。

そういや、「デジモンアドベンチャー tri.」の監督をやっていたのですから、
仮想世界へのダイブという概念を理解していて当たり前だと思うじゃないですか?
ところが1話冒頭でご覧の有様で、しかもアニオリパートではVRゲームやってる統一性の無さ。
フィーリングと自分の趣味でやってて、原作を予習復習しないうえに、
デジモンでもやったように誰得アニオリをゴリ押しするのが大好き。
このアニメでも原作などでは大して重要でもない老賢者パートがアニオリで長め。
やっとミラの姿になるのは17分あたり。
しかもそこから原作の展開から変えて5分近く無声パートという意味不明さ。

ずばり、この作品の最優先事項は『ミラちゃんカワイイ』であって、
どれだけ主人公の魅力を作画と演出で引き出せるのが勝利の鍵であって、
原作を知らない組にも、1話目でそこを深く刻みつけなければならないわけですよ。

そこをあきらかに予算が少ないのか作り込み不足で作画もショボければ、
原作で重要でもなく漫画では5ページほどで終わった老賢者姿で、
原作に無いつまらないアニオリを延々と垂れ流して、ショボいCGで老賢者無双戦闘が続くわけですよ。
しかも、本来なら物語が進むうちに逐次登場させるはずのキャラクターがアニオリパートで勢ぞろい。

これ、無意味で余計な引き伸ばしで誰も得しない最低の自己満足であって、
ミラを早く見たい人には嫌がらせに近いです。
しかも、1話目の主人公のセリフが最後の『わし、かわいい』の一言だけで、
ミラの魅力を視聴者にしっかりアピールする気無いでしょ?

2話目からは極端なアニオリは無くなって、
すえみつぢっか氏による漫画版をペースに内容を端折りながら進んでいくのですが、
相変わらずの作画と演出のクオリティの低さと同時に、この作品の重要ポイントである、

『本来男が可愛い女の子の姿になってしまったことに戸惑いながらも現状を楽しむ!』

を、TS性癖のある視聴者へのアピール、ルッキズム、ナルシズム、お色気表現らと共に、
美味しいものを食べたり飲んだり、旅の途中でショッピングやサウナらを楽しんだりの旅情などで、
この世界でミラが女の子ライフを楽しむ姿を、
しっかりとした作画で描けていればそれで良かったわけですが、
アニメでは主人公を楽しむそれらの要素の大部分がカットで、
アニオリ含めたクオリティの低い戦闘シーンを中心にで尺を稼ぎまくったのですから、
原作者らやファンが期待するような趣向のアニメには、ならなかったわけですね。

有り体に言えば、TSという性癖ジャンルに理解もこだわりもない監督の下で、
ストーリーをかいつまんだだけの心に残らない薄い映像がただ作られて垂れ流され続けただけですね。
ただ、見た目ロリ美少女が尿意を催す描写だけは元永監督にツボったようで、
原作以上に不必要に何度も何度もそのシーンを挟んでいます。しょーもないですね。

原作者は、ドラマCDからの丹下桜さんの続投でないミラ役の声優変更を後から知らされたり、
また、放送開始後はアニメの内容や出来に関しては一言も発言せず、
アニメ版ひどかったですねとのファンからの感想の山に、
『ご視聴ありがとうございます!』と繰り返すだけのbotになっていたり、
漫画家は、アニメではバトルが不必要に多めで原作の魅力を描けてないことを遠回しに婉曲に指摘。
ファンからはアニメが無かったことにされている始末。これらのことから、
アニメスタッフが作ろうとしたものは決して関係者やファンらの本意ではなかったと言えます。

今どきは原作から内容を変えずに映像のクオリティをつきつめたアニメが喜ばれる風潮がありますが、
仮に原作から内容を変えるとしても、きちんと原作を知ってるのと知らないのでは全く違うでしょう。

面白いアニメを作るのには監督のセンスと才能が必要!という声もよく聞くのですが、
キャラクターの動きなどが低予算相当に乏しくてスタッフの仕事の質が良くない上に、
原作のイメージに引っ張られるのが嫌だから原作を読まないと公言してる不勉強な監督では、
原作者の意図やファンの視点でこの作品の何を楽しんでいるのか?
を理解して映像化するのは無理でありまして、監督の言う「仕掛け」も滑りっぱなし。
結果として違和感のあるアニメになるのは必然でした。
原作からのストーリーの抜粋もファンから見て美味しい部分を捨てまくって良くはないですね。

他社の作品との映像のクオリティの差を敢えて評価基準から除外したとしても、
きちんと原作を研究した「明日ちゃんのセーラー服」「その着せ替え人形は恋をする」
また、作画のリソースは潤沢ではないもののTS物としてのツボを抑えてはいる、
「異世界美少女受肉おじさんと」との違いを見るに、
悲しいぐらいにスタッフの当たり外れの影響は大きいなと思った次第であります。

この場合はオレがオレがで自分のセンスだけを信じてアップデートと学習への怠惰さから、
原作に対しての不誠実で独りよがりな態度に疑問視をしますね。
元永慶太郎という演出家の仕事を信用しない根拠になりうるアニメです。
原作通りにやったら面白くなるかは別としても、原作者はアニメ版の被害者ですね。
好き勝手にやりたいなら完全オリジナルでもやってろよ!っていうのが偽らざる感想でした。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/06/06
閲覧 : 588
サンキュー:

35

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