てとてと さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
日本製西洋風ファンタジーの草分け的名作。古き良き重厚さとディードリットの可愛さが魅力
全13話のOVA。英雄に憧れる少年騎士が、仲間のエルフやドワーフたちと共に、暗黒皇帝や黒騎士や悪い魔女の陰謀に立ち向かう。
光も闇もやがて崩れゆく 光あるところに闇もある。
それを受け入れた時、少年は真の英雄に一歩踏み出す…
【良い点】
「ウィザードリィ」「ドラゴンクエスト」と並び、日本における「中世ヨーロッパ風で剣と魔法の」ファンタジーの草分けとなった歴史的に重要な作品。
「エルフは美人で耳が長い」「ゴブリンやオークが悪の軍勢」などお約束の数々を確立、以降のゲームやラノベに多大な影響与えた。
重厚で地に足の付いた世界観や設定、キャラクターや描写の数々。
魔術師の魔法発動に長い詠唱が必要だったり、ドラゴンは一国の軍勢総掛かりでも厳しい規格外の化け物だったり、後世のコンピュータゲーム風のライトな無双作品とは一線を画すリアリティーが魅力。
対ドラゴン戦で人間側は投石機などリアル中世の技術で必死に対抗するも無常に焼き払われる9話が特に良い。
主人公パーンの剣技も超人的ではなく地味なのも含めて、渋いファンタジー。
また、後続作品のなんちゃってヨーロッパ中世(実質近世)とは違い、それよりも古い時代の神話が息づく世界を描けている。
英雄に憧れる主人公パーンが仲間たちと出会い、旅をして、英雄王たちの薫陶を受け、宿敵と戦い成長していく。
主人公らしい特殊能力やチートは一切無し、初期はゴブリンにも苦戦するが、着々と英雄に近づいていく。
成長の過程が地味ながら丁寧で、ゴブリンに苦戦する初期から、8話では狂戦士に剣弾き飛ばされるも空中キャッチして即座に反撃するシーンで実力付いているのが分ったり、こういう細かい描写の積み重ねが上手い。
冒険して功績を上げ、王様から認められ強力な武具貰うなど、英雄譚のお手本のような流れ見せてくれる。
ひたむきな努力と不屈の意志で少年は英雄に至る。
地に足の付いた英雄譚、後世のなろう系のお手軽さとは一線を画している。
(娯楽性重視な異世界系も別に悪いわけではないが)
パーンは未熟な一騎士に過ぎず、カシュー王やファーン王ら歴戦の老英雄らが暗黒の軍勢相手に大戦争するスケールの大きさを感じさせる。
邪神の復活?灰の魔女カーラの暗躍の意味とは?などなどロードス島を揺るがす戦乱の不穏さで終始ヤバい事起きている感が伝わった。
ハイエルフのディードリットの可愛さが圧巻。
耳長美少女で身軽で精霊魔法の使い手、日本製ファンタジーのエルフヒロインの元祖。
性格は至高のツンデレ。お転婆でお茶目。
パーンと次第に相思相愛になるラブコメ要素も非常に良い。
喜怒哀楽の感情が豊かで、パーンが憧れのカシュー王に執心するのに嫉妬してたりと大変可愛らしい。
時折長命なエルフらしい価値観から人間のパーンに助言する一幕も魅力的。
終盤は攫われるのも含めて、王道的な理想のヒロインだった。
その他敵味方共に魅力的。特に敵陣営の黒衣の騎士アシュラムと彼を愛し献身を捧げたダークエルフのピロテースは、パーン以上に魅力的だった。
ピロテースはアニメ版のオリキャラながら公式に逆輸入された人気キャラ。
覇道を往く寡黙な暗黒騎士と彼を愛し散ったダークエルフのロマンスは美しい。
作画がかなり美しい。
今風の綺麗さではないが、2010年代以降では再現出来なさそうな美しさ。
ディードリットが非常に美人。萌える美少女ではなく、美人。喜怒哀楽の感情描写も抜群。
殺陣や魔法やドラゴンなどヌルヌル美麗に動くわけではないが、重厚な臨場感溢れる。
楽曲も美しい。主題歌が非常に良い他、BGMも素晴らしい。
【悪い点】
壮大な叙事詩を描くには尺不足だったか、ダイジェスト感が否めず。
魅力的キャラ豊富な割に掘り下げが全然物足りない。
パーンの仲間たち、オルソンとシーリス組の関係など、何となく察せられるがそれだけ。
魔女カーラに乗っ取られたレイリアと彼女を救わんとするドワーフのギムの事情は分かるがアッサリ終わったり。
主人公パーンが地味、英雄たちの戦争の傍らで一騎士としてしか動けていない。
特に終盤はアシュラム対バグナードの悪役同士で盛り上がってしまいパーン蚊帳の外気味。
ディードリット救出は王道ではあるが、直接ラスボス倒せていないのであまり盛り上がらず。
盗賊ウッドチャックがカーラに乗っ取られてそれっきりなのもヒドイ。
総じて予備知識や先入観抜きの初見で、手放しで面白いかと言われるとやや微妙かも。
【総合評価】8点
名作だけど、後続のブラッシュアップされた諸作品に比べると素朴なファンタジー。
素朴で物足りなさを差し引いても色褪せない。
評価は「とても良い」
【余談】
灰色の魔女カーラは悪役だが彼女なりの正義あり、ロードスの繁栄の為には戦乱起こして世界の均衡保つ云々な思想。
後の水野良作品「グランクレスト戦記」ではよりブラッシュアップされて分かり易くこの思想が描かれる。
魔女でカーラって、めんどくさいヒーラーを思い出してしまうが勿論ロードス島戦記が大先輩。
灰色の魔女もある意味めんどくさいかもしれない。