「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(アニメ映画)」

総合得点
91.1
感想・評価
561
棚に入れた
2612
ランキング
39
★★★★★ 4.4 (561)
物語
4.3
作画
4.7
声優
4.4
音楽
4.3
キャラ
4.3

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

【更新】蒼い瞳の女の子…それは永遠に語り継がれる、不変で普遍の愛の人生譚。

2020年9月 原作 暁 佳奈(第5回京都アニメーション大賞 大賞受賞) 制作 京都アニメーション。全シリーズ視聴済み。数々の賞をとり、観るものを圧倒する美しさと完成度。主演︰石川由依、助演︰子安武人。本シリーズ最終章。京アニの万感の思いの結晶。不滅の名作の最終章…「愛してる」を貴方に…。

【まえがき】
その少女は、ディートフリート・ブーゲンビリア海軍大佐の軍艦が遭難し、漂着した孤島で動物の様な状態で拾われた…。

少女の身柄を引き取ったギルベルト・ブーゲンビリア陸軍少佐は少女に「ヴァイオレット」と名ずけ「その名が似合う女性になるんだ…」と願った…。

原作者 暁 「すべては此処に至る為の物語」であり、1人の少女の18年間の軌跡と奇跡の物語…。

【本編・みどころなど】
オープニングで表示される「sincerely(心から…)」この一行の言葉に心が震えます。

本劇場版は、TV版第10話「愛する人はずっと見守っている」での母クラークの愛娘、アン・マグノリアの娘を母(夫妻は医師)に持つ、デイジー・マグノリアの孫の視点で、時代は60年後。

デイジーは祖母が他界後も大切に保管されていた古い手紙を見つけ、自動手記人(ドール)の存在を知り、アン宛の50通もの手紙を代筆したヴァイオレットの軌跡を辿ります。

まず、印象深いのは、序盤、ヴァイオレットとディートフリートの墓地での会話と描写。供花はブーゲンビリア。細かい気遣い。素敵です。ヴァイオレットの想いを感じ、ディートフリートの心境に変化があらわれているシーンに心が揺れます。

{netabare}
そして後半のクライマックスへの布石となる、入院中のユリスの依頼で家族宛に手紙を書くヴァイオレット…。お金が無いユリスに「Emergency Provision(緊急的お子様割引。実在しませんw)」と書類を見せるシーンにクスッと。
けど…小学生程度?の年頃の子供が、自身の寿命を察し、自分が逝っても両親と弟が元気が出るような内容の手紙を依頼する…こんな勇気ある決断を?と思わず目を伏せてしまいました…。

ユリスの病室から帰社するヴァイオレットに、ディートフリートが墓所でヴァイオレットが落としたリボンを届けます。そしてギルベルトの思い出の品を受け取らないか?と告げます…。喜ぶヴァイオレット…。本当に嬉しそうです…。
船の中の会話でディートフリートは、弟ギルベルトへ想いを馳せ、それがヴァイオレットに伝わった事に驚きます…。別れ際の甲板で「忘れるなんて出来ない…あいつは俺の弟だからな…また会えたら…」と語る彼に「はい…」と頷くヴァイオレット…。心に染みる素敵なシーンです…。

ユリスの手紙を仕上げる中で、ヴァイオレットはこれ迄の経験から「~本当の気持ちは伝えなければ解らない場合も多いです…」書き終えた三通の手紙…。
ユリスが「俺が天国に逝ったその日に渡して」と告げるのを、ヴァイオレットは義手の拳を握りしめ悲しみを堪えます…。そして指切りをして必ず届けると約束をします…。この指切り…実はエンドロール後に映されるシーンに繋がっています…。

ヴァイオレットはユリスに「伝えたい事はできる間に伝えた方が良いと思います…」と語っています。であれば…であれば…このシーンはヴァイオレットは手紙の代筆を受けず、ユリスを勇気づけ、ユリスの口から家族への感謝の気持ちを伝えさせる…そんな描写にしてくれたら…ヴァイオレットの心の成長と言葉を伝える大切な術がもう1つ示されたら…っと思ってしまいました…。

でも…それは形を変えて示されるのです。

後半…ユリスの親友リュカへの想いを電話で伝えるのです…。あぁ…暁 佳奈氏は読む者、観るもの気持ちに寄り添ってくれていると…改めて本作に感銘を受けました。

ホッチンズ社長が宛先不明の一通の手紙の筆跡から、ギルベルトかもしれない…と直感します。差出人の住所はかつての敵国領土エカルテ島…。ギルベルトが存命している事は、それ以前の描写で視聴者には知らされますが、ヴァイオレットを含め、全てのキャラクターはそれを知りません。

ホッチンズは「まだ不確かだが…」としながらも、ヴァイオレットにギルベルトの消息について語ります…。
ヴァイオレットの驚きと期待…そして不安と混乱…それをそっと受け止め助言するカトレア…このシーンのカトレアが好きです。

ホッチンズと共にエカルテ島を訪れたヴァイオレットは、島の子供達からギルベルトの存在を聞き・確信し感情が溢れ出します…。その時、ヴァイオレットのシリーズ初めての心からの笑顔に心臓が高鳴ります…。

でも…。
ギルベルトはヴァイオレットを兵士にしてしまった後悔の念を拭えず再会を頑なに拒むのです…。
逢いたいと願い・望み・心から叫ぶヴァイオレット…。
「少佐は後悔しているのですね…私の存在が…私が少佐を苦しめているのですね…今の私には少佐の気持ちが解るのです…」と言い残し雨の中を走り去ります…。

ギルベルトにホッチンズが吠える「このっ!大馬鹿野郎~っ!」。心が共鳴してしまい言葉になりません…。

ずぶ濡れで…泥だらけになりしゃがみこんで泣きじゃくるヴァイオレット…これ程切なく・悲しく・美しい描写を私は見た事がありません…。

嵐を避け、一時島の灯台兼郵便局に身を寄せる2人…。そこにでユリスが危篤との電信文が届きます…。
少佐に逢いたい…でも…ユリスとの指切りした約束を守りたい…。揺れるヴァイオレット…。自分で届ける手段は無い…。

ヴァイオレットは電信文で、ベネディクトとアイリスに、ユリスの手紙を届ける事を依頼し、2人はユリスの病院に急行します。
アイリスがヴァイオレットの代わりに来たと告げるとユリスは「愛してるを教えてくれた人?」と…。
頷くアイリスに「生きてたんだ…良かった…」アイリスの感情描写もとても美しく素敵です。そしてアイリスは…2人(相手はリュカ)に手紙では無く電話で話させる選択をします。これは前半で何れドールは電話に取って代わられるとされたシーンの感情描写と重ねたものです。「あのいけ好かない機械もやるわね…」と…。

そしてユリスは逝ってしまいます…。
本シリーズを通じ、書かれた手紙を読まれるシーンは、これ程までに言葉や文字が人の心を紡ぐものなのかと改めて感じずにはおれません…。

ラストシーン…。ギルベルトに逢わずに島を離れることを決意したヴァイオレットは最後の手紙をギルベルトの生徒に委ねます…。

{/netabare}

島を訪れた兄と再会するギルベルト…。
ディートフリートは再会したら謝るつもりだった、としながら「今は麻袋に詰めこんで、お前をヴァイオレットの前に放り出したい気分だっ!」と叱ります…。ヴァイオレットを戦場に駆り出したと後悔の言葉を連ねるギルベルト…。美しい描写と相まって初めてギルベルトを嫌悪した自分に驚きました…。

そこへ、リフトでヴァイオレットの手紙が届きます…兄は「お前宛ての手紙だ」と…。

ヴァイオレットのギルベルトへの愛する想い。ラストラブレター。
「愛してる…をありがとうございました…」「愛していると言って下さった事が、私の生きていく道標になりました」「そして、愛してるを知ったから、愛してるを伝えたいと思いました」と。

行けよ…と兄に背中を押されたギルベルトは走り出します。それをそっと見送る兄ディーフリート。感情描写が素敵です。

そして二人は…。万感の想いを込めて…。言葉に成らないヴァイオレットの想いが心を掴んで離しません...。
手書きの作画でこれ程の美しさを描ける。芸術です…観てね♪
そして夫々の人生は進むのです…。

【おまけ】
本作、エンドロール(エンディング・クレジット)後にヴァイオレットとギルベルトが窓辺て指切りをしてHAPPY ENDの演出を終えています…。続きがあるので少しね…。(劇場に出向いて観られた方は知っているかも…)。

「朝と夜、どちらも意識を失う時、目覚める時、確認できます。いらっしゃることを」「本当にそうだな、ヴァイオレット。私達は、もう大丈夫だ」お互いの欠けた形が、寄り添い合うとぴったりとした円形になる。

「朝食は、何を作ろうか…」ギルベルトが、優しく微笑みながら言うと、ヴァイオレットも唇の端を上げた。
「せっかく来て下さったのです。もてなしたいと思います」
「私は嬉しい驚きでした」
「君との時間が減るだろう。私達にだって予定はある」
「ホッチンズ社長は、少佐のことがお好きなのです」
「ベネディクトも私達の生活がどんなものか心配してました」
「彼が心配しているのは君のことだけだろう。結婚式でも随分と釘を刺された」
「少佐、そろそろ抱擁を解いて頂いて…その、朝食を作り始めませんか」「…もう少しだけ、君を抱きしめていたい」「…はい」ギルベルトは、もう怖いことは何もないと思えた。いきることも、死ぬことも。君という『最愛』を得たから、もう怖くない。
(ギルベルト・ブーゲンビリアと儚い夢より)


【あとがき】
本シリーズ全てに通じるが、本劇場版はスクリーン用と言う事もあり、背景・小物細部・光源・カメラワークが格別に素晴らしい。
本作を最後まで視聴後、改めてTV版を観たくなります。

劇場版 主題歌 WILL 歌唱 TRUE 作詞︰唐沢美帆、作曲・編曲︰Evan Call
ED曲 未来の人へ ~orchestra ver 作詞︰唐沢美帆、作曲︰川崎里美、編曲︰Evan Call

尚、公式ページのメニューからSPECIALを選ぶと、絵コンテ~動画になるまでの工程が見られます。

ヴァイオレットの花言葉︰謙虚・誠実・小さな幸せ・愛…そして「あなたのことで頭がいっぱい…」
(ギルベルト)ブーゲンビリアの花言葉︰溢れる魅力…そして…あなたしか見えない…。

余談…以前のレビューでも、本シリーズのキャラの命名は花にしていると記しましたが、ベネディクトも同様で、愛用のブーツの模様もベネディクト(花言葉︰旅人の喜び、精神の美)です。そして、原作では彼に生き別れた妹が居る…とされており、その妹はヴァイオレットなのでは?…と…。
ベネディクトはヴァイオレット同様、戦闘養成所で育てられ、傭兵として戦場で戦って負傷したところをホッチンズに助けられています。
原作者も匂わせる発言をしていますが明言はしていません。おまけで記した中でベネディクトがヴァイオレットを気にかけている…のでもしかしたら…ね。

投稿 : 2022/09/14
閲覧 : 161

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

ページの先頭へ