「シャインポスト(TVアニメ動画)」

総合得点
71.0
感想・評価
138
棚に入れた
320
ランキング
1396
★★★★☆ 3.7 (138)
物語
3.6
作画
4.0
声優
3.4
音楽
3.8
キャラ
3.6

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ネタバレ

ゲリオ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

この完成度に何が足りなかったのか

夏アニメのアイドル枠。
アイドルは既に食傷気味ということに加え、オンエアも後発の日テレ深夜枠であったことから、視聴をスルーするところだったが結果的に見て良かった。
ストレートにアイドルを題材とした作品としては、おそらく歴代で一番面白いアニメで、もっと話題になって然るべきだったと思う。

制作を務めたのは"ウマ娘シリーズ"の及川啓監督とスタジオKAI。
さすがは神アニメ請負陣というべきか、活き活きと躍動するキャラクターとテンポのいい会話劇は、まさにアイドル版ウマ娘を彷彿させた。
ストーリーもアイドル物と侮るなかれ。それぞれコンプレックスを抱えるメンバーの葛藤が毎回分かりやすいヒューマンドラマに描写されており、視聴者にしっかりと感動を与えてくれる。
ここ最近のシナリオでここまで心に響いたのはウマ娘Season2以来じゃないかと。
単純に同じ制作陣様なので演出の仕方が自分好みだったこともあるが。

キャラクターについて、主人公の青天国春が実は最初からステイタスMAXの完璧超人で、むしろ欠点のある他のメンバーを補完する形のエピソードから描かれる。
具体的には第3話の杏夏回からメンバーの成長描写が始まるのだが、見視聴の人はとりあえずそこまでは視聴してもらいたい。
第2話は正直なところ特徴のないテンプレアイドル回だったので、そこは乗り越えて3話以降までぜひ…
そして5話~6話の理王回はまごう事なき神回(ウマ娘で例えればライス回やターボ回に匹敵)。
アイドルとしてのパフォーマンスが出来ない劣等感とメンバーに対する申し訳なさから、表面上だけはいつも自身満々キャラを演じるも、内心ずっと悩んでいた可哀想な理王たん。彼女が初めて報われる感動エピが第6話であった。
よく考えれば「長らく地下アイドルやってて今更歌が上手いことが判明」なんて虫のいい話があるかって感じだが、そんな些細なツッコミは演出力でカバー。
理王役演じる夏吉ゆうこさんが歌う特殊エンディングも素晴らしかった。この方、こんな歌唱力があったとは知らなかった。
キャストを全員新人声優にせず、春と理王にはそれなりに実力実績のある声優さんを起用した点はバランスが取れていたと思う。

メンバーのエピソードが一通り終わったところで最後に訪れるのが、パーフェクトアイドルであるが故の春の葛藤だ。
アイドルアニメで在りがちな終盤の主人公の闇落ちはシナリオ的に失敗するケースが多々あるが、本作は失速することなく抜群の安定感で乗り切った。
そんなシナリオを支えたのが優秀なアニメーターが死力を尽くした作画力だ。
特に本作のライブシーンは(皆さんが嫌いな)3DCGではなく、丁寧な2D作画で描かれたことは特筆すべきであろう。
しかも全員一律のキレッキレのダンスではなく、ダンスが苦手なキャラはそれと分かるようにスピードや角度をズレさせるなどして、メンバー間の実力差を明白に映像で表現している。
テンプレと化したアイドルアニメにおいて、ここまで映像に拘りを示した作品がかつてあっただろうか。いやない。
このように単純にアニメーションとしての出来が抜群であり、アイドルアニメ好きの人にも、普段アイドルアニメ見ない人にも、絶対おすすめしたい作品だ。

べた褒めレビューになったので少し不満というか「?」と思った点をひとつ。
視聴者の大半が感じたことかもしれないが、マネージャーの特殊能力は必要だったか?ということ。
嘘をついてる人が光って見えるという、作中で群を抜くフィクション要素に序盤は注視されたが、終わってみれば別に意味なかった気がする。
マネジメント力に大きく起因したわけでもないし、う~ん。
この辺はシナリオを担当したラノベ作家さんの手腕が足りなかったと思う。
あとは最終回がそれまでに比べて少し味気なくて喪失感みたいなのがあまり感じられなかったのがな…まぁ、同クールの某アイドル作に比べれば何十倍も良かったけど。

最後に何故この作品が「ウマ娘になれなかった」あるいは「リコリコになれなかった」について述べたい。
第1にアイドル物が飽和状態であることから0話切りされてしまったこと。
第2に不運なことに昨今の社会情勢から制作に大幅な遅れが生じてしまったこと。
第3に上記2点に起因してSNSで話題にならなかったこと。が挙げられる。
毎クール数十作品もある今のアニメ業界で、大多数の視聴者が取捨選択するポイントは「話題になってるかどうか」だ。その点でシャインポストは同クール"リコリス・リコイル"に敗れてしまった。
終わりの方になってネット上にも本作を絶賛する声がチラホラと散見されるようになったが、もはやあまりにもエンジンが掛かるのが遅すぎた。

新規参入が極めて厳しいアイドルアニメでこれほど完成度の高い作品を生み出したことは称賛に値する。が、現状から新たなムーブメントを創り出すことは、やはり無理なのではという諦めも同時に感じた。
メディアミックス作品として来年ソシャゲがリリースされる予定だがどうだろう。
半年でサ終という悲劇が待ち受けてる気がしてならないし、本作を評価してる自分だってソシャゲはやろうとは思わない。そのビジネスモデル自体が今や通用する手法ではない。
結局、優秀だったのはアニメの制作陣であり、シャインポストという企画自体は最初から無謀な取り組みだったのかもしれない。
こうなったらこれまで数多現れたアイドルアニメの最終完成形として、ひっそりと存在する隠れた名作みたいになるも一興ではないかと。
以上長文レビューでした。

投稿 : 2022/10/19
閲覧 : 154
サンキュー:

6

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