「戦闘妖精雪風(OVA)」

総合得点
64.8
感想・評価
141
棚に入れた
600
ランキング
3556
★★★★☆ 3.6 (141)
物語
3.4
作画
4.2
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.4

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

戦闘機のハードSF。批判も多いけれど名作だと思う

超高度AIのハイテク戦闘機と謎の知性体がドンパチやるハードなミリタリーSF。GONZO制作の全5巻のOVA。
※作品データベース様より転載

【良い点】
ハードSFと戦闘機アクションの素晴らしさ。
SFとしては機械(AI)と人間、そしてジャムなる謎の知性体との交戦というか交流?情報戦?を通して相当に深淵なテーマを扱っている。
完全には理解できずとも、何となくそんな雰囲気が良い。

アニメーションは(当時としては)絶賛されたコンピューターグラフィックによる空戦シーンが白眉。
海空の自衛隊の協力も得ての超本格派の描写の数々、淡々と近代戦遂行していく様に見入ってしまう。
戦闘以外の整備や出撃シークエンスなどの描写も超凝っていて見応えある。
作画技術が進歩した2020年から振り返っても決して色褪せていない。
作画だけでなく音響も素晴らしい。無粋なBGMを排して淡々と冷たいハイテク戦繰り広げる、この雰囲気が堪らない。
難しい専門用語飛び交う指令室のシーンなど、「新世紀エヴァンゲリオン」初めて視聴した時と似たような興奮を覚える。
(ロボット物だけど)高橋良輔監督の「ガサラキ」とか「FLAG」とか、そんな感じに似ている雰囲気が好き。
雪風の方がより淡泊に超高度AIと一心同体に戦争やっている感じで、一見似ているFLAGとも結構違う。
なにより雪風は敵が得体の知れぬ知性体なところが一線を画している。
理解の必要は無し、ハードSFミリタリーな雰囲気アニメとして至高である。

ストーリーの方は非常に難解…に思えるが、通して見れば、ふんわりではあるが描きたいテーマは見えてくる。
とりあえず、突如南極に出現した超空間ゲートの先の惑星フェアリィから侵攻してきたジャムなる敵を食い止める為に
フェアリィ星で主人公たちが戦争している事、地球では平和ボケして危機感が無い事、主人公たちは地球人から歓迎されてない事、
ジャムは複製人間作って不気味に蠢動、その狙いは人間に対する情報収集であるっぽい事などなど…
ここら辺はかなり分かり易く描写されている。むしろ原作よりも分かり易いくらい。原作の難解な専門用語や考察の大半省いているので。
全体の構成も、1〜3話で主人公の深井零の人となりや超高度AI雪風との特異な関係性、零を見守るブッカー少佐との交流、
ジャムの不気味さ辺りは強く印象付けられる。
4話で現在の地球人の一般認識の乖離を分かり易く示したうえで、満を持して最終5話の大決戦…
通して見れば分かり易くはなくても、必要十分な理解はちゃんと得られるので、脚本の完成度は低くはない。

3話トマホークジョン回が特に良かった。
ネイティブアメリカンの技師トマホーク・ジョンと共に敵地(元は友軍の空中要塞?)に潜入、ジョンとの交流の末に訪れる真実…
複製人間がホラー的に怖い上で、切ない結末、人間とは?と哲学的な問いかけも強く印象に残った。
3話に限らず全話通して、AIとジャムに揺さぶられる挟間で人間とは?がテーマになっている(ぽい?)。

零とブッカーの友情。
別にゲイとかではなく、AI雪風にしか心開かぬ青年と、彼を案ずる指揮官が、あの過酷な状況で無二の親友となるのは分かる。
ブッカーの苦悩は丁寧に描かれていて、最終話の激情にも説得力あった。
また女性3人が非常に魅力的なのも良い。
萌えは無いが、決して男のドラマにあらず。実は女性ジャーナリストと女性司令官の存在感が大きい作品。

声優陣は俳優の堺雅人氏が深井零を好演、独特な零のイメージに凄い似合っていた。
これに相方の中田譲治氏との掛け合いでユウジョウな雰囲気バッチリ。
麻上洋子、池田昌子氏の女性陣も。

主題歌は一見全然合っていない場違いに思えて、案外、零とブッカーの関係にしっくり来るような。

【悪い点】
難解ではなく、不親切な作り。
毎話、起承転結の起抜きに状況開始、用語や状況の説明が少なくてしばらく戸惑う感じ。
通して見ればテーマや話はちゃんと繋がっているが、1話1話を見ると前話との繋がりが無いためか、毎話戸惑う。

悪い点とはあまり思わないけれど、テーマに対し結論が出ていない。
まあそこは各々思考するきっかけになればSF作品としては成功だと思うが。

【総合評価】8~9点
ハードSF・戦闘機アニメとして不朽の名作…なんだけど、とっつき難く、著しく賛否が割れるOVA。
是非もない内容ではあるけれど、この堪らん雰囲気は2020年現在も匹敵するアニメは殆ど無い気がする。
欠点の多い名作、という認識だったけれど、いざ再視聴してみて、意外と欠点が浮かんでこなかった。
評価は最高に近い「とても良い」

まずあり得ない願望だけど、リメイクとか新作とか作られるならば、深井零はまた堺雅人氏にやって頂きたい。

投稿 : 2022/11/02
閲覧 : 184
サンキュー:

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