「呪術廻戦(TVアニメ動画)」

総合得点
85.1
感想・評価
849
棚に入れた
3344
ランキング
250
★★★★☆ 3.8 (849)
物語
3.7
作画
4.1
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

「なぜ他人のために戦うのか?」を突き詰めた主人公が魅力

TBSのバラエティ番組『サンデージャポン』から“ネクスト鬼滅”という蔑称を付けられた作品。「あくまで鬼滅の次にブームが来るという意味合いで言っただけで優劣を決めているわけではない」と冷静に努めている者もいるが、通して観た私としては実にTVショーらしい「わかっていない」あだ名の付け方だと思った。
確かに原作は週刊少年ジャンプで連載されており、嘗て「黄金世代」とも呼ばれた著名なジャンプ作品へのリスペクトも感じられる作品だ。その点は『鬼滅の刃』と共通している。とくに自らの内に強大な化物を飼う主人公、加えてメインキャラは男子女子1人ずつに白髪の男の教師────観始めは『NARUTO』を思い起こさせる要素が多分にある。
しかし彼の作品らと比べると、本作は「死生観」を独特かつしっかりと描いており、その点を主軸に据えた物語の展開やキャラクターの人物像がどのジャンプ作品にも無い独創性を生み出している。

【コイツがカッコいい:虎杖悠仁(1)】
見出して感じるのは主人公のデザインの奇抜さだろう。髪型はサイドを刈り上げた短髪で、刈り上げた部分以外はなんと桃色をしている。特徴的な髪色と髪型は武藤遊戯やヒカル、黒崎一護などいい意味で過去のジャンプ作品の主人公を想起させ、只者ならぬオーラを感じさせてくれる。
そんな主人公・虎杖悠仁(いたどり ゆうじ)は運動神経は「おかしい」レベルに高いものの至って普通な高校生だった。この世界で人の命を奪う呪いの塊──「呪霊」──に対抗するには同じ呪いの力──「呪力」──で以て戦うしかない。
そんな呪霊が虎杖の通う学校に解き放たれる。虎杖に呪力は無い。死の恐怖が足をすくめ、出会ったばかりの伏黒恵(ふしぐろ めぐみ)と呪霊の戦いを遠巻きに眺めるしかなかった。
しかし葛藤の最中、「祖父」の言葉が彼の脳裏に浮かぶ。

『お前は強いから人を助けろ』

正しく真っ当に死んだ祖父を目にしたからこそ、「呪い」という正しくないもので死ぬ人を彼は見過ごせない。自分に呪いを祓う力がなくとも、彼は友のため、祖父の遺言という自らにかかった「呪い」で立ち向おうとする。
清々しいまでのジャンプの主人公だ。正しくあろうと、正義であろうとするまっすぐで純粋な主人公。彼は呪霊に立ち向かうため、呪いの力を得るために「両面宿儺(りょうめんすくな)の指」を飲み込む。それは学園に呪霊が蔓延る要因だった物──「呪物」──だった。
自らがどうなるかは後回し、自己犠牲の精神すら頭にない。呪力を得た代わりに虎杖は特級呪霊『スクナ』と身体を共有することになり、全国の呪術師から祓滅(ふつめつ)────命を狙われることになってしまう。

【コイツがカッコいい:虎杖悠仁(2)】
そんな絶望的な状況に猶予を与えたのが呪術高等専門学校(以下、呪術高専)の教師・五条悟。彼は虎杖の祓滅を覆すことは出来なかったが、「どうせ殺すならスクナの指を全部取り込ませてからにした方がいい」と先延ばしを提案し、呪術高専に入学させようとする。この第2話にこそ主人公の真価が問われ、そして描かれる印象的なエピソードだ。
{netabare}
『呪術高専に何しに来た?呪いを学び呪いを祓う術を身に付けその先に何を求める?』

『スクナの指を回収する?事件・事故・病気。君の知らない人間が日々死んでいくのは当たり前のことだ。それが呪いの被害となると看過できないというわけか?』

『祖父の遺言?家族も他人の内だろう。つまり他人の指図で君は呪いに立ち向かうと?君は自分が呪いに殺されたときもそうやって祖父のせいにするのか?』
{/netabare}
呪術高専に入学する以上、生徒はその時から呪いに立ち向かう「呪術師」にならなくてはならない。死とは常に隣り合わせ。そこに身を置く覚悟、そこに身を置く確かな「理由」を学長自らが求め続ける。その問いかけの1つ1つがとても鋭い。
祖父の遺言すら全否定する相手に対し、思わず主人公も『あんた嫌なこと言うなぁ』と返す。そして気付く。自分の今抱く使命感は「誰か」の為でも「祖父」の為でもないことを。
{netabare}
『運動もケンカも昔から人並み以上に出来た。でもそれを1度だって俺にしか出来ないって思ったことは無い。けれど、『スクナを食う』。それは俺にしか出来ないんだ、って』

『死刑(祓滅)から逃げられたとしてこの使命から逃げたらさ、飯食って風呂入って漫画読んで────ふと気持ちが途切れたとき “あぁ、今スクナのせいで人が死んでるかもな”って凹んで、“俺には関係ねぇ。俺のせいじゃねぇ”って自分に言い聞かせるのか?』

『そんなの御免だね。自分が死ぬときのことは分からんけど、生き様で後悔はしたくない!』
{/netabare}
見ず知らずの誰かのために戦う主人公というのは、バトル漫画ではよくいる人物像だ。そんな無償の優しさが、時として他者の目から見れば気持ち悪く映ることもあるだろう。
けれど虎杖は違う。全て「自分のため」だという答えを示した。結果は変わらず死刑(祓滅)かも知れない。けれどそこに至るまでの過程──生き様──で自責の念に駆られたくないという最高にカッコいい「我儘」を言ってのけたのである。
ここまでで非常に丁寧に主人公を魅せている。物語の芯、主軸となる存在の彼がどんなキャラクターなのか、第1・2話をたっぷり使うことで「虎杖悠仁」という主人公に感情移入を生みやすい丁寧な導入を描いている。

【ココが面白い:スクナは“力”ではなく“敵”】
そんなジャンプな主人公が自らの内に『スクナ』という強力な呪霊を宿すことで大きな呪力を得た。現在はまだそのコントロールが難しいものの、呪術高専で呪術を学びモノにしていくことで虎杖は、九尾のチャクラを持つうずまきナルトのように強大な戦闘力を発揮していく────なんて予想をしてのんびり構えていたのが大間違いだった。
スクナは九尾のように気前よく力だけを渡すことはないし、では身体を貸し出せばこちらの都合よく戦ってくれるのかと思えばその度に牙を剥くのは呪術師たちの方になる。呪いの王とも称される両面宿儺は他の呪霊を見下しそちらにも攻撃はするものの、基本的には同胞・仲間として見る傾向にある。
{netabare}1度目は虎杖の意思で10秒だけ交代してきっかり10秒で身体の主導権を取り戻せていたのだが、2度目に虎杖たち1年生が特級呪霊と当たってしまい、已む無く交代した時には身体の主導権を取り戻すのに時間がかかるようになってしまった。これを好機と見たスクナは自分の身体でもある虎杖の心臓を抜き取り虎杖自身を人質にして好き放題に暴れ回る。「交代すれば、その瞬間に死ぬぞ?」と。
残忍で狡猾、かつ最強。20本ある指の内、たった2本だけで器である虎杖のコントロールから外れてしまうのだから、全ての指を取り込んだその暁には決して人間側に付くことがない最強の「ラスボス」となるに違いない。{/netabare}
なぜこんな邪悪な存在に頼ることになってしまったのか。全ては虎杖自身の弱さ・驕りのせいである。
弱い呪術師は強い呪霊に相対したその時に潔く死ななければならない。そうなりたくなければ誰よりも、どこまでも強くならなければならない。『弱者は死に方すら選べない』のだ。
そう悟った虎杖がその後、スクナを2度と表に出すことがないよう己自身で呪力を引き出し、他の様々な呪術師から戦う術や心構えを学んでゆく姿も輝く魅力の一部である。
{netabare}その一方、スクナと虎杖とでは『契闊』という「好きな時にスクナが1分間虎杖の身体の主導権を握る」契約が交わされてしまった。これがいつ発動するのか戦々恐々としながら話を追えるようにもなっている。{/netabare}

【ココも面白い:良い感じの厨二感】
いい意味でこの作品は「厨ニ感」全開だ。登場人物の名前や専門用語、極端なキャラクター描写にどこか遠回しでポエミーになる1歩手前の台詞回しがこの作品を彩ることで「センス」と「おしゃれ」を感じさせてくれる。
『呪法』『術式』『領域展開』────負の感情で引き出すことができる呪いの力を応用した様々な「能力」によるバトルが『HUNTER×HUNETR』や『BLEACH』、『ジョジョの奇妙な冒険』など過去の人気ジャンプ作品を思い起こさせつつ、本作の空気感、呪術廻戦という作品が醸し出す「雰囲気」そのものが本作の魅力そのものだと言わんばかりにキャラクターを語らせ、動かすのである。
とくに戦闘シーンはスロー演出なんてチンケなものを使わずに、キビキビと動き回るキャラクターたちをぐりぐりと動くカメラワークで映すことでハイスピードな戦闘シーンを演出しており、そこからピタッと止めることで戦闘シーンの終わりを盛り上げる。
静と動、それを意識しているからこその緊張感あふれる戦闘シーンが見ているだけでシンプルな「アニメーション」としての面白さを目に味わわせてくれる。
仲間の呪術師や敵の呪霊が『術式』というややこしい物で能力バトルをするのに対し、現在の主人公はシンプルに「殴る」のみ(笑)その対比がいい味を出しており、敵の搦め手も全力も全て正面から受け止めて食らいつくというプロットが主人公・虎杖とその相手の両方の魅力を引き出している。
能力の説明台詞が多いのは、自分の術式を相手に開示すれば効果を高めることができるという設定があるからだ。だからこそ呪術師も意思ある呪霊も意気揚々と自らの手の内を晒し、相手にも視聴者にも「自分」を理解させた上で120%の力を圧倒的な戦闘作画で魅せてくれる。そんな演出が本作に「厨ニ感」を強く感じさせてくれるのだ。

【他キャラ評】
釘崎 野薔薇(くぎさき のばら)
呪いで以て呪いを制する『呪術廻戦』の象徴は、意外にもヒロインたる彼女の術式(バトルスタイル)にある。何たって彼女が武器に用いるのが金槌、藁人形、そして五寸釘。「丑の刻参り」は呪いで人を殺すないし不幸に陥れる呪法の鉄板だ。
金槌を振るい、釘を乱れ撃ち、呪霊の肉片が手に入れば必中の遠隔攻撃までやってのける。近接特化の虎杖や式神使いの伏黒では届かない相手にこそ真価を発揮するということで、戦闘シーンでも全くおざなりにならない出番・活躍を魅せてくれる。
丑の刻参りをモチーフとしたキャラクターは得てして陰気な性格で描かれがちだが、彼女に関しては言いたいことはハッキリ言う、割り切るべきところはきちんと割り切ってみせるとカラッとした印象を抱く。男子を尻に敷く勝ち気が過ぎる部分を除けば、虎杖や伏黒とは性別を越えた「悪友」と言った感じでとても魅力的な「姉御」として描かれていた。

五条悟(ごじょう さとる)
呪術高専の先生、そして同時に作中の「最強キャラクター」だ。最強故に傲慢、傲慢故に最強。この世界において傲慢さは力の象徴でもある。
自らが認めない限りは彼は誰にも己を触れさせない。最強だから五條悟なのではなく、五條悟だからこそ最強なのだと言わんばかりの己のエゴイズムを全開にする戦闘シーンは圧巻だ。
飄々とした態度で敵が目の前に居ても冗談を吐きまくり、主人公が今まで遭遇したものよりも強い呪霊を前にしても「弱い」と嘲け笑うほどだ。
カリスマ性の有るキャラクターの存在は人気作には不可欠だ。呪術廻戦におけるカリスマは「五條悟」であり、そんなメタ的な要因ですら自らの「傲慢さ」に取り込んでるフシが有る。{netabare}2期では色々と不手際を見せてしまうとの噂だが、少なくとも本作にその片鱗は伺えない。{/netabare}
普段は目を隠している彼が本気を出す時だけその目を晒す。その瞳は誰よりも美しい。

【総評】
10年代以降らしいダークでハードな世界観を秘めつつも、きちんと「ジャンプらしさ」も描かれた作品と評する。
人に仇なす呪いと戦おうとする典型的な主人公の決心を今までの作品以上に揺さぶりをかけて確固たる物にした序盤の展開がすさまじく、物語の1話1話を丁寧に見せてくれたので大分、没入できた。
そして祖父のような安寧な死を“正”、呪いによる死を“誤”と定めた主人公・虎杖の内にはスクナという最大の「矛盾」が孕んでいる。これが{netabare}虎杖を1度殺しているのだから{/netabare}人間の味方につくことは先ずあり得ない。なので今までの少年漫画作品を超えた緊張感も備わっている。
それ故に虎杖は、時に自らの「正しい死」の概念に迷うこともある。
「正しい死」とはなにか。常に人は正しい死を迎えるに値するのか。そもそも自分が今生きていることは正しいことなのか。
答えが出せそうにないこの問を追い求めながら、虎杖は人のような意思を持つ特級呪霊の軍団との戦いに臨んでいく。「死生観」のようなものがこの作品のテーマの1つとして備わっており、そこが他作品と一線を画す部分だろう。
癖が強く個性的なキャラクターも魅力的であり、姉御な釘崎や禪院真希(ぜんいん まき)、おにぎりの具しか喋らない狗巻棘(いぬまき とげ)に体術バリバリいけるまんまな「パンダ」、そして「五条悟」というカリスマを中心に印象に残るキャラも多く、そんなキャラクターたちが魅せる「バトル」の魅力をMAPPAの作画クォリティで盛り上げている。
{netabare}強いて欠点を挙げるなら、2クール目から始まる『京都姉妹校交流会』が少年漫画ではありがちなバトル展開で、決着含めてあまり本筋とは関係無かったところだろうか。とはいえ主人公・虎杖の成長には欠かせない「ベストフレンド(笑)」との出逢いがあり、他の京都の呪術師たちもひと癖あったり一物抱えてたりと見所は多いため、決して無下にはできないエピソードではある。
曲者揃いな京都呪術師の中で唯一、常識人で不憫可愛い三輪霞(みわ かすみ)ちゃんが好みだ。攻めの新陰流抜刀術も今後拝みたいのだが、新しい刀用意してもらえるのかなあの娘……?{/netabare}
いい意味でも悪い意味でも「厨ニっぽさ」とジャンプ要素が乱立しており、その部分で好みが分かれるやも知れないが、個人的にはしっかりと2クール楽しませてくれた作品であった。
伏線などのポテンシャルも高い作品なので、系列放送のTBSには変に鬼滅の名前を出したり芸能バラエティに絡めたりするのではなく、本作ならではの特色を押さえた純真な宣伝をこれから頑張ってやっていって欲しい。

投稿 : 2023/10/18
閲覧 : 190
サンキュー:

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