「バブル(アニメ映画)」

総合得点
67.7
感想・評価
80
棚に入れた
272
ランキング
2281
★★★★☆ 3.6 (80)
物語
3.1
作画
4.3
声優
3.3
音楽
3.8
キャラ
3.4

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

うた∽かた

【概要】

アニメーション制作:WIT STUDIO
2022年4月28日にNetflixで先行配信を開始し、
2022年5月13日に公開された100分間の劇場版アニメ。

監督は、荒木哲郎。

【あらすじ】

未知の力を有した泡が降り注ぐようになって世界中が大混乱。
東京タワーで謎の大爆発があり、爆心地である東京は巨大な泡のドームに包まれた。
それ以降は世界各地で泡の現象が収まったが、東京中心部でのみ泡が止まること無く、
積もった泡が潰れて水没して、泡の影響の重力異常で事故死が多発した東京は首都機能を失った。
東京に住んでいた人々は各地に散り、東京23区は居住禁止区域に指定された。

そんななか、泡による災害で親を失った孤児たちが、東京で徒党を組んで暮らしていた。
孤児である若者たちは、食料品などの生活物資を賭けの対象にして、
5対5のチーム戦で廃墟を駆けて相手陣営の旗を奪う、
パルクール(=東京バトルクール)で競うようになっていた。

東京タワーでの爆発事故から5年後。渋谷のパルクールのチームであるブルーブレイズのエース、
ヒビキという少年は鋭すぎる聴覚であることから、人間が苦手で仲間とも距離を置いていた。

そのヒビキが、ぼろぼろになった東京タワーから聴こえる歌声の正体が気になって、
タワーを探索していたところ、アリ地獄と呼ばれる重力異常の渦に引っ張られて、
水面上昇している海に落下して飲み込まれた。

水中で意識が遠くなっていたところを人魚のような謎の少女に助けられたヒビキは、
彼女を連れて仲間たちと一緒に暮らしている「令洋」という廃棄船に戻るのだった。

【感想】

人魚姫をモチーフにしたSF作品。

「デスノート」「進撃の巨人」の荒木哲郎監督。
「魔法少女まどか☆マギカ」が代表作の虚淵玄氏らによる、ニトロプラスのシナリオ。
キャラ原案は「ヒカルの碁」「デスノート」「バクマン」などで有名な漫画家の小畑健氏。
数々のドラマやアニメで知られる作曲家の澤野弘之氏。
京アニ出身で退社後のキャリアのほうが長いアニメーターの門脇聡氏が作画のトップ。
他にも川村元気氏が企画とプロデュースの担当であったり、
「響け!ユーフォニアム」の原作者の武田綾乃さんがノベライズ担当であったり、
必勝の布陣でクオリティにこだわって作られたアニメ映画らしいです。

キラキラしていて好き嫌いが分かれるでしょうけど間違いなく映像は美しく、
廃墟と化した水浸しの都心に瓦礫や廃車が浮遊している幻想的な風景。
そこに「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」でも見せた立体的なカメラワークが激しく動く、
パルクールのアクションシーンは流石と言えるでしょう。
もっとも、設定ありきで東京を壊滅状態にして少年たちの遊び場にしているのは疑問ですが…。

一方でこのアニメは説明不足過ぎるであるとして、あまり評判が良くはないですね。
他の方のレビューを拝読して知ったのですが、
小説などで開示してある泡(バブル)のSF設定であるとか、
それに基づく物語の流れの捕捉をせずに、アニメでは敢えて全部説明をせずに、
表情やキャラの雰囲気でヒビキとウタの気持ちを含めた概ねの内容を観客に察して欲しいという、
ボーイ・ミーツ・ガールものになってしまいました。このあたりは川村元気氏の入れ知恵で、
新海誠的なアニメづくりを志向したのでしょうか?いつもの虚淵脚本ではないですね。

この場合はキャラの内面を理解して共感するのが重要であると私は思うのですが、
主人公とヒロインの声優が経験が浅かったり初挑戦だったりで、演技力がイマイチ。
コミュ障な主人公のヒビキくんが心の壁を取り払う成長?の話がありきたり過ぎますし、
ヒロインのウタも声は綺麗なのですが彼女の自己投影の人魚姫のあらすじを口ずさむばかりで、
拙くても自分の言葉で自分の気持ちを伝える話が好きな自分としては、
演技の問題もあって、それぞれのキャラクターに魅力が感じられなかったりです。
小畑健氏らしくバクマンの福田に良く似たキャラがいたのは笑いましたけどね。

最近のアニメの流行りのスタイルを踏襲して、一部のマニアだけを対象にせずに、
普通の若者を取り込むべくして『考えるな!感じろ!!』的な作りのアニメですが、
クリエイターの頭の中にある作品の全体図から映像で見せた部分が氷山の一角であり、
視聴者に感受性のセンサーを全開にして説明してない部分を察することを強いてしまったのか、
その手法のアニメは他にもありますが、このアニメの場合は特に説明が不十分であったのか、
映像の中で設定を消化しきれずに意味不明に感じられた視聴者が多数派になってしまいました。
魅せたいシーンありきで構成の客観性を欠いたのは、
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の二番煎じを狙って意味不明な脚本で失敗をした、
「うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー」みたいなものでしょうか。

理解を阻む不親切なシナリオが、情報の集合体として作品を食ってる類のアニメマニアに納得されず、
袋叩きに遭ってしまったと思っています。と言いつつも、
感覚派の自分は視聴中に何度も寝てしまいまして、映像には作品としての美点はあるものの、
楽しかった!もしくは感動したとは素直には言いづらいですね。

有名なクリエイターを集めて、きれいな作画と大ヒット前提の広告戦略でも、
必ずしもヒットするとは限らず、また、「バブル」と違い人気が出た作品は、
それぞれに作画だけではないプラスアルファがあるわけでして、
どんな作品でも評価に毀誉褒貶があるのが常ですが、そうはならなかった「バブル」は、
個人の価値観に依存した評価の偏りと統計的な価値のある一般的な評判との乖離が小さい現実に、
ドリームチームで作っても必ずしもいい結果で終わるとは限らない創作活動の難しさを感じました。


あまり内容について細かい言及が出来ていませんが、これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2023/08/01
閲覧 : 115
サンキュー:

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