「はだしのゲン(アニメ映画)」

総合得点
64.5
感想・評価
31
棚に入れた
174
ランキング
3687
★★★★☆ 3.4 (31)
物語
3.7
作画
3.3
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

まるでそれは教育ビデオ。

【概要】

アニメーション制作:マッドハウス
1983年7月に公開された84分間の劇場版アニメ。

原作は、昭和に『週刊少年ジャンプ』→『市民』→『文化評論』
→『教育評論』にて連載されていた漫画作品。
著者は、中沢啓治。

監督は、真崎守。

【あらすじ】

下駄の絵付け職人の息子で父・母・姉・弟とで広島市の舟入本町に住む、
国民学校2年生の中岡元(なかおか げん)は反戦思想を持つ父親のせいで、
非国民のアカの息子と言われながら、ワンパクなお調子者として明るく生きていた。

戦時中の食糧不足でひもじいながらも、妊娠中で栄養失調の母に食べさせるために、
池の鯉を盗みに行っては、そこの主人に弟と一緒に土下座をして譲ってもらったり、
やってることは決して良いことだとは言えないながらも、
母思いの真っ直ぐな気性を理解してくれる人間の心を打つ優しい子供であり、
頑固な父親から叱られて殴られながらも十分に愛されており、
家族仲良く暮らしていた。

昭和20年8月6日。B29爆撃機「エノラ・ゲイ」から落とされた原子爆弾によって、
広島市内は地獄と化し、中岡一家にも悲劇が訪れるのだった。

【感想】

平和教育の象徴として小学校に常備されていた漫画作品が、「はだしのゲン」

アンチ天皇丸出しな「はだしのゲン」と朝日新聞の主張垂れ流しの「美味しんぼ」は、
後になって振り返ってみれば、特定の価値観に基づいた思想で、
読者を啓発する漫画作品でありますが、
久米宏、筑紫哲也、田原総一朗らが猛威をふるい、
彼らの言う事が正しいと信じられていた時代に、
それらの漫画を読んだ子どもたちへの刷り込みは、たいそう大きかったと思います。

「ドラえもん」をはじめ、藤子不二雄アニメをテレビでほぼ毎日やっていた時代に、
差別や暴力などの描写が多く、原爆投下直後の広島がトラウマレベルな「はだしのゲン」は、
子供には大変刺激的な内容で興味をひいて、政治に興味がない子供にすら、
中岡元が嫌い憎むものが悪いものなんだ!と思い込ませるようになる。
自分がそうなりかけた体験談なので、一般論として扱うのが妥当とは言いませんけどね。

原作者・中沢啓治が自らも出資して作られたアニメ映画の「はだしのゲン」は、
子供たちに見てもらう教材ビデオ的なものを目指したのか、
政治的な台詞や軍国主義者に迫害される中岡一家などの描写がオミットされて、
(ついでに兄の浩二と昭もアニメでは存在しなかったことに)
ただ、一生懸命生きて仲良く生きていただけの中岡一家や、普通な広島の人たちや街並みが、
原子爆弾によって壊されていく様子が静かに描かれていく。

原作漫画と違って、日常アニメみたいな朗らかなタッチの日常描写と、
原爆被害に遭った人たちのリアル調の描写の落差に、
ただただ、原子爆弾の熱線に焼き殺されたり、放射能に苦しめられながら亡くなった、
故郷の犠牲者の無念を語り継ぐ原作者・中沢啓治による鎮魂の意味の純度がより増しているかと。

好みのアニメではないですが、十分に伝わるものがありました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2023/07/21
閲覧 : 114
サンキュー:

10

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