「ダイバージェンス・イヴ(TVアニメ動画)」

総合得点
58.1
感想・評価
28
棚に入れた
199
ランキング
6607
★★★★☆ 3.2 (28)
物語
3.0
作画
3.1
声優
3.4
音楽
3.2
キャラ
3.2

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ネタバレ

レトスぺマン さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

もうちょっと評価されてもいいのではないかな?その1

長文のため本文はネタバレで隠します。

{netabare}

本作のどこが良かったのか、というところを語る前に本作がどのようなきっかけで製作されたのかを簡単に解説したいと思う。

まず、本作の制作元である「RADIXエンターテイメント」は90年代~00年代中盤にかけて夕方深夜アニメ問わず、多種多様な作品を生み出してきた制作会社である。
その中でも「天地無用」や「VS騎士ラムネ」などの、90年代中期にヒットを飛ばした実績のあるアニメ監督「ねぎしひろし氏」の元、「BURN-UP Wシリーズ」や「菜々子解体診書」といった美少女系OVAの制作に90年代後半は乗り出すことになったわけだ。
これらはもちろんその後続く萌え系の流行を見越したことであったが、結果として興行的に振るわず、今となってはマイナーどころか、誰の目にもつくことがほぼない更なる極致的な場所へと追いやられてしまった印象である。

そんな中、2002年に比較的若手のスタッフで製作された「灰羽連盟」が放送され、これはRADIXエンターテイメント最大のヒット作となったわけだが、この流れに沿ってもう一度【RADIXの美少女系OVA】を再興させる流れが出来上がったのである。
しかし、女の子がドンパチわちゃわちゃする単純な話ではなく、より視聴者に考えさせるような作品を作って衝撃を与えたいという思惑もあったそうだ。
そのため、アニメ界における物理学の権威と称される脚本家「野崎透氏」を迎えることとなり、複雑なハードSFが展開されることになったのである。

つまり、本作「ダイバージェンス・イヴ」とは、RADIXエンターテイメントをより発展させるための一大プロジェクトでもあり、【当時のアニメ制作ベテラン勢】による極めて力の入った制作が行われたことがわかる。

そのような方々が集まってどのような作品が生み出されるのかということを単純に考えれば「面白くない作品であるわけがない!」というものだが、私自身その通り非常に面白く感じたのである。
というわけで以下、本作の良かった点を2つ挙げる。

①ハードSFとしてはわかりやすい部類の物語が展開されたということ。
本作は、恒星間の移動が実現したことにより、人類の宇宙進出が進む中での世界観の中、未知の宇宙生物である「グール」と遭遇し、それとのバトルを13話をかけて描く作品である。
まず、本作の特徴としてハードSF特有の専門用語がひっきりなしに流れるため、初見何も考えずに視聴するとわかりづらいことこの上ない。
それを視聴者自身で理解するためには、出てくる専門用語を「自分の知っている言葉」に置き換えていく必要が出てくる。

例えば、主人公みさき達が所属することになる「ウォッチャーズネスト」は【宇宙の一部に張り巡らされた恒星間の移動コースを管理する場所】「量子障壁」は【出現したグールを消滅させるためのシステム】、「スペキュラー」は【グールの実体化=人類への直接攻撃が可能になった危険な状態】といった意味になってくる。

さらに、そこからなぜ人類が宇宙への進出をしていくことになったのかの理由を作中から読み解くと、そもそもの地球上が環境汚染や戦争により住めない状況が続いていることが判明する。
つまり、地球上にしても宇宙上にしても、人類を取り巻く状況が極めて危険かつ、かなり陰惨な状況になっていることもわかるわけだ。

このような形で与えられた情報をわかる範囲で読み解くことによって、世界観が徐々に判明していくわけだが、視聴者の知りうる限りでの知識の範疇でハードSFを楽しめるようになっている部分はとても素晴らしいと思う。

そして、SFの物語として陰惨な世界観がそこにある場合、「その陰惨としたこの世界観の状況をどのように変えていけばいいのか?」という事柄がテーマになることが多いが、まさに本作はそれを地で這うようなストーリーが展開されており、舞台装置と登場人物の心理的な状況に論理性を持たせている部分も評価したいポイントである。


②登場人物に対し、好感を持つことができた。
本作の登場人物はSF物には似合わないキャラクター造形と性格をしていることが挙げられる。
まず前者に関してはRADIXが手掛けてきた美少女系OVAの造形がそのまま受け継がれたかのようなデザインということだ。
放送当時としても割と古い絵柄に属するもののように思えるし、SF物としてはアンバランスではないかという意見もあったのではないかと思われる。

しかし、90年代の美少女的な絵柄に慣れ親しんで来た視聴者であれば、陰惨なストーリーを軽減するための良い清涼剤になっていることと、80~90年代にかけてはエログロを真っ向から描写した美少女系のOVAというのも存在するわけで、そこに対しての原点回帰だと思えば、本作のベテラン勢の熱量というものを感じとれる部分でもあるわけだ。

そして後者に関していえば、登場人物の一部を除いて「人間味がある性格」をしていることがあげられると思う。
通常、SF物では機械との融合や格好良さ重視の点から、他人に対して冷徹であったりする人物が多く存在する。
しかし、本作ではドジっ子である主人公みさきの他、キリ、スサーナ、ルクサンドラにしても元気少女や包容力のあるお姉さんといった感じで、一般的に見ても好感を持ちやすい性格を持つキャラクターが多かった。

しかし、だからこそそのようなキャラクターが陰惨な世界観に放り込まれた時の反応が、なお一層恐怖を呼び起こすものであったことは事実で、そのギャップの上げ下げによって進んでいく物語を00年代初期にTVアニメとして行ったことはかなり先駆的であったとも思える。

そして、本作では「陰惨としたこの世界観の状況を変えていく」流れの他、主人公みさきが【自分自身に隠された超大な能力に気づかされる】展開のストーリーもあり、それに対してのネガティブな描写も多いことも挙げられる。

そこから考えるに、本作のEDはみさきが夏のバカンスを楽しむ映像が流れるが(視聴者からするとお世話になるくらいのエロさがあったが)、本編とのギャップを感じさせるネタ的なものというよりは、EDの楽しい映像こそがみさきが望んでいる世界観のような気もして、複雑な気持ちになるのと同時に、よりみさきに対しては感情移入することになってしまう良さがあったと思う。

※これ以上書くとだいぶ長くなってしまうので続きは本作の続編である「みさきクロニクル」の方に記載します。※

{/netabare}

投稿 : 2023/08/02
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サンキュー:

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