てとてと さんの感想・評価

3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

jRPGのOVAで洗練された良作

jRPGの代表的タイトルの一角、テイルズシリーズ、の第一作、のOVAアニメ。全4話で121分。
勇者一行が魔王倒すべく時代を超えて戦っていく、王道的ファンタジー。
※作品データベース様より転載

【良い点】
古典的、コテコテなjRPG感。後続の凝った作品群に比べて素朴さが好ましい。
90年代のRPGファンタジー風味なOVA路線を引き継いだ作風で、キャラ配置やストーリー、作画など洗練されている。
ストーリーが王道的で分かり易く、人物の描写や関係性などが最小限のやりとりからちゃんと伝わる。
主人公たちの目的や行動原理が明快で、時間移動展開もシンプル、3話4話のニンジャちゃん以外は特に分かりづらい点は無し。
主人公たちが時代を超えて魔王ダオスを追っていく際、現地の時代の人々が即信用してくれて展開がスムーズ。
2時間あまり退屈させず見せてくれる内容はある。

また、魔王含めて嫌なキャラがおらず、不愉快な場面がほぼ無くて気分良く視聴できた。
1話で嫌味と思われた騎士団長が、過ち犯した後に改心して協力してくれたり、性善説的な作風。

キャラクターは悪戯っ子な魔法使いのアーチェちゃん可愛い。随所に茶目っ気あり見ていて楽しい。
かと思いきや被差別種族ゆえの悲哀もあるなど、ヒロイン度高かった。
ここは1話の騎士団長の掘り下げも活きている。(ハーフエルフの立場)
掘り下げが足りない主人公よりも、主人公の友人の弓使いチェスターの方が主人公ぽかった。
このふたりの、3話以降の交流掘り下げが良い感じ。弓使い君と魔法使いちゃんが主人公ヒロインでよくね?と思った。
年長者だがちょっと抜けてる召喚士のクラース先生も面白い人物だった。

キャラデザ、RPG風ファンタジー感、18世紀っぽい砲撃戦闘、剣と魔法のバトルシーン、殺陣などの作画は申し分ない。
1話の魔科学の超兵器発射シーンなど、良きレトロ機械文明感ある。
戦闘描写は良くも悪くもRPG風味、各々の得意分野で連携したパーティー戦闘見せてくれる。
主人公のピンチに弓使いが颯爽と援護したり、ヒーラーのミントちゃんがヒールしたり、RPG戦闘アニメはこういうのでいいんだよ感。
(2020年度のRPG原作アニメの大半より良い、というより、近年の似た路線のアニメが劣化して不甲斐無いと見るべきか)

テーマも素直で分かり易い。
人は過ち犯す、戦うことでしか解決できない?それでも精一杯、仲間とともに!分かり易くて好感持てる。
魔科学でマナ枯渇させるのは愚かである、これも分かり易い。

豪華声優陣。

【悪い点】
尺が圧倒的に足りてない感。キャラクター描写が最小限しかないので全然物足りない。
特に主人公クレスが一番地味。一応の目的意識や経緯は分かり易いが、掘り下げが全然無いため、無個性な勇者主人公な印象。
ヒロインと思われるヒーラーちゃんも役割は果たしていたが、クレスとの交流シーンが乏しくやはり地味。
3話から唐突に登場したニンジャちゃんに至っては、主人公たちとの絡みが皆無、何やりたかったのかサッパリ分からん。

展開のスムーズさと裏腹、時代を超えて冒険する躍動感があんまり無い。
魔法使いと弓使いの交流シーンで少し世代差感じさせるが、それだけ。

話の分かり易さと裏腹、展開が単調、意外性や盛り上がりどころが少なく、地味。
魔王も悪い奴じゃないのは、盛り上がりに欠ける面も。
また、説明セリフに頼り過ぎなきらいがある。

テーマは良いが、浅い。
主人公の魔王に対するセリフは熱血だが、肝心の主人公の掘り下げが無いのが微妙。

【総合評価】6～7点
古き素朴なjRPGアニメの佳作。
惜しい面も多いけれど、圧倒的に足りない尺で上手く纏めた感じ。
評価はとても良いは無理にせよ「良い」は十分付けられる。

本作を振り返って、2020夏の「アラド:逆転の輪」、2020秋から放送中の「キングスレイド」は本作の影響モロに受けてるというか、
展開やキャラ配置が似通っているというか…
近年の後追い作品がイマイチ淡泊なのを踏まえると、古い本作の評価が相対的に上がった。