てとてと さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
戦争への怒りと心の貧困への嘆き。横溝サスペンスばりの狂気と怪奇ホラーも凄い
鬼太郎6期の前日談で、生前の目玉おやじ(イケメン)と水木(戦争帰りの会社員)が、因習と怨念渦巻く村の秘密に挑む。
【良い点】
横溝正史作品もかくやな閉鎖的村と一族の因習を追うミステリー、人間の醜い欲望と狂気が怨霊となって襲い来る恐怖感。
サスペンスとして見ても非常に怖く引き込まれる上に、怨霊ホラー系として見ても凄まじい内容で全く飽きさせず。
…放送中でそろそろ終盤?の「ダークザギャリング」を超凄まじくした感じ。
サスペンスと、妖怪物、怪奇系ならではの悍ましさあり、欲望の為に人間はここまで邪悪になれるのか。
中ボスの陰陽師、ラスボスの邪悪ジジイの極悪っぷりも王道を極めていて非常に良かった。
内容は悍ましいがバトルは王道で決着も友情の勝利なので割と清々しい。
昭和30年代や、因習村の描写も非常に良い。
喫煙シーンが昭和の分かり易い特徴として印象付けられる。
列車内で喘息の少女に全く配慮しない水木含めた大人たちのシーンは、時代性と風刺が効いていた。
人間の水木と幽霊族のゲゲ郎の友情も良かった。
当初は人間と妖怪反目し合っていたのがベストパートナーになっていく。
ゲゲ郎と共に人間の醜い狂気に抗いながら、ゲゲ郎との交流で水木の心境の変化が良かった。
戦争でお国から無駄死に強いられ戦後も変わらない不信感が、因習村の超濃密な欲望と狂気それに抗い愛を求める相棒との関わりで我武者羅に立ち向かう。
言下に水木作品の根柢に流れる戦争への怒りと戦後日本の心の貧困への嘆きあり、これを愛と友情で立ち向かう話にする事でエンタメ作品としても見やすかった。
生前目玉おやじの飄々としたイケメンぷり、水木の人間に絶望しつつも葛藤する人間らしさなどキャラも魅力的。
悲劇のヒロイン沙代もかなり可愛いく、陰惨なドラマに華を添えていた。
一族もすぐ死ぬ割に各キャラインパクトは強い。
いぶし銀のベテラン声優陣も素晴らしい。完璧な布陣。
特にラスボスの白鳥哲氏久々の怪演聴けたのは嬉しかった。
楽曲も雰囲気良く、またBGMが煩くない点も良かった。
【悪い点】
特に無し。
強いて言うと、おやじさんあんまり強くなかったような。
また作品への評価ではないが、戦後全否定な日本の心の貧困論もやや納得いかず。
祖父たちの世代が醜くても余裕が無くても頑張ったから今の物質的に豊かな日本があるわけで。
本当に完全に心が貧しいならば、今こうして沢山のアニメ作られて楽しめてないと思う。
【総合評価】9点
鬼太郎ファン必見、そうでなくても戦後日本人のアニメ好きならば見て損はしない傑作映画。
評価は最高でもいいんだけど「とても良い」