「氷菓(TVアニメ動画)」

総合得点
90.4
感想・評価
8341
棚に入れた
35302
ランキング
55
★★★★★ 4.1 (8341)
物語
4.1
作画
4.4
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

ヒロトシ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

京アニが贈る珠玉の青春物語

ミステリーとして見てしまうと肩透かしを食らってしまうが、高校生達の青春物語としては至高の出来。思春期特有の鬱屈した感情の表現が抜群に上手く、古典部の面々の挫折や成長が非常にリアリティに描かれている。元々テーマ自体が『青春は優しいだけじゃない、痛いだけでもない』となっているので、ミステリーは奉太郎達の学生生活を彩るスパイスでしかなく、本当に伝えたい事は思春期の若者の複雑な感情を創作物として作者が表現して見たかったというのがあるのではないだろうか。一部キャラの設定にあざといものを感じるのは事実だが、日常作品という扱いが難しいジャンルをここまで料理出来たのは偏に作者の力だと思うし、映像作品としてここまでの水準に引き上げることが出来たのは、原作付なら最高の仕事が出来る京都アニメーションの実力といってもいいだろう。

古典部の面々の精神的な挫折と成長に関しては割愛するが、特筆すべきはその古典部の面々以外の人間に関しても、きちんと表現が成されている事だ。個人的に感心したのは『クドリャフカの順番』に出てくる本郷真由だ。彼女は2年F組の劇の脚本家として事件の中核に関わっているが、奉太郎達の前には姿を一度も現していない。そして視聴者の前にも、変わって彼女の心情を教えてくれるのは、『女帝』入須冬実の証言と本郷が参加しているチャットのみである。本郷の出番は僅かながら、彼女の劇に対する責任感と苦しみ、つまり精神的な挫折が短いながらも表現されているレベルにまで達しているのには驚いた。一部奉太郎による推測という部分を鑑みても、出番の多い・少ないに関わらず、メインとされる人物の感情の揺れ幅を描いているのは、本質を掴んでいるからに他ならない。本郷だけじゃない、文化祭の睦山会長と漫研の河内は本郷とは違い、古典部の面々と会話はするが、出番としてはかなり少ない。しかしその少ない所で、彼らの抱えているトラウマを抉り出し、視聴者にぶつけてくるのだからこの無駄がない演出や構成は舌を巻くばかりである。これは人間だけに留まらず、ミステリーのネタとしても充分に活かされている。『心あたりのある者は』の話はまさにそれ。僅かな情報で結論を導き出す。探偵としては安楽椅子探偵になるかもしれない奉太郎だが、奉太郎はあくまで代弁者。氷菓の世界におけるこの方法論を創造したのは勿論原作者である。そして方法論魅力としてを原作者が認識していただけでなく、アニメ制作陣も熟知していたからこそ、本作の映像化は成功の部類に入っているのではと考えた。

惜しむらくは作品の宣伝にミステリーの色を強く出してしまったことだ。これによって期待外れという印象を幾人かに与えてしまったことは否めない。しかし氷菓のアニメ自体の評価としてはこの点を含めるのはナンセンスというものだろう。そういう点を踏まえて、氷菓は最高の作品と言わせてもらう。

投稿 : 2013/02/04
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サンキュー:

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