「秒速5センチメートル(アニメ映画)」

総合得点
87.0
感想・評価
3988
棚に入れた
18435
ランキング
173
★★★★☆ 3.9 (3988)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.1
キャラ
3.6

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

野菜炒め帝国950円 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

全書き換え

時金さんとのやり取りで少し気になった部分もあったので改めて見返してみました。

先に断っておきますと無駄に長いです。
書きながらやべえこれ長すぎとは自覚出来てたんですがなんとも・・。

見終えた後にしばし放心状態になった過去があるので二度と見まいとソッと封印したはずが1年と8ヶ月の時を経て魔王が蘇ってしまった。

また改めて見ることで自分の中でも微妙に変化があったのが面白かった。

さて気になった箇所。

1話での2人の駅での別れのシーンと渡せなかった手紙。

改めて見てみてもヒロインのほうはこれ以上の遠距離恋愛?になることに耐えかねて本意ではないものの私たちここまでにしましょうみたいなことが言いたかったように見えます。

今までどこか主人公に依存してきた節があるので今以上離れてしまうことは彼女にとっては冗談じゃないわ!
もうお仕舞いよ!耐えられない!になってもそこを責めるのは酷なのかもしれません。

そして持ってた手紙の内容もおそらくそういうことがソフトに書いてあったのではないかと。多分。

「あなたはこの先も大丈夫」要するに「あなたにはもっといい人がいるわ だからごめんなさい」と同じような意味合いなのではないかと。

自分は相手に依存してるっぽいのに文通内容から察するに1人でもそれなりに充実して逞しく生きてる主人公が羨ましかったというのもあるのかも。
だから今の自分を変えたかった?だから敢えて別れを選ぼうとした?
こっちなら中々大したヒロインなのではないかと。主人公にしてみたら困った理由ではありますが。

逆に主人公が持ってた手紙。こっちについてはどういう内容なのかはさっぱり分かりません。
ものすごく引きずる彼のことですからまさか自分から別れを切り出す手紙を書くとも思えませんが。

おそらくまた遠く離れてしまうけど今まで通り文通続けてたまには会いましょう的なことが書いてあったのかも。

そんな渾身のお手紙も不幸なことにどこぞの駅で風に飛ばされて無くしてしまうわけですが。
多分、赤面するような恥ずかしい内容の手紙を他人に読まれてしまうであろう彼。まさに踏んだり蹴ったり。


んで書き換え前の感想では私はこの彼について理解に苦しむ異星人だと書きました。

だってそうでしょう。高校で3年 大学で4年 社会人で多分3年程度としても合わせて約10年。
その間にも一途で可愛い子や2~3年も付き合ってくれた眼鏡の子がいたのにまだ昔のあの子が振り切れてないのです。

まどか「ダメだよ、こんなの絶対おかしいよ」

そう。おかしいのです。
と思ってたんですが改めて見るとこのヒロイン。当時のロリ補正もあるせいかやたらと可愛いのです。
見た目もさることながらその声と喋り方が反則級なのです。

そりゃね。こんな子なら主人公も特別ななにかだと思い込みもしますわ。

さやか「あー、もう決まりだ。それ前世の因果だわ。あんた達、時空を超えて巡り合った運命の恋人なんだわぁ!」

うん・・・。そう・・・だね・・・。
中学生なんて極端な話、目が合っただけでも好きになるような年頃でしょ。
それを考慮すれば主人公があそこまで引きずる気持ちも今は多少理解出来るんです。あくまで多少ですが。
ひよこか何かが最初に見たものを親だと思い込む。ちょっと違うけどあんなふうなもんかもしれません。


そして高校時代。この大事な時期に彼はとてつもない愚を犯してしまうのでした。

ここで登場するのが真ヒロイン種子島子。勿論本名は違うんですがこっちのが語呂がいいので。

これがまた旧ヒロインに劣らない美少女でしかも一途で性格も多分いいというほぼ完璧超人です。
こんな子に思いを寄せられる憎き主人公。
なんて羨ましい・・・となるはずなのですがなんとこのニブチンはそんな熱い思いに一向に気付きません。

いや気付いてて敢えてスルーしてた? だとすればとんだ食わせ物です。
通常であれば誰でも気付きます あんなの。

まあ気持ちはずっと旧ヒロインにあったぽいから普通に眼中に無かったのかもしれませんが。

そんな旧ヒロインも主人公の知らない見知らぬ男と今頃よろしくやってるんです。
それでいいのか?主人公?
どちらかと言うと弱かった旧ヒロイン。今では段々と立場が逆転しつつあります。

自分は個人的にはこの種子が作中で最もお気に入りな子なのでそれだけに2話の内容は嬉しくもあり残念でもあるのです。
種子の出番が多い。それはとてもいいことだけど結局扱い的にはこんないい子がいるのにそれでも旧ヒロインには勝てなかったよみたいな感じにも取れてなんか複雑な気分です。

身も蓋もない言い方をすれば物語の都合上、種子はああなるしか無かったとも言えます。
2話で主人公と種子が付き合ってハッピーエンド。それはそれでアリだとは思いますがそれだと果たしてこの作品が良作であると評価されたでしょうか?
否。この先に待ち受けるなんとも言えぬ喪失感。やり切れない切なさ無くして秒速という作品もまたあり得ないのです。


結局主人公は卒業と同時に東京へと舞い戻るのですがそうなるとなんだか惜しいことになって参ります。
完全にたら、ればな話ですがもしも高校3年の間も文通を続けていればどうだったでしょうか。
互いに卒業したら東京の大学へ行こうみたいな流れになりそれを励みに頑張れたのではないかと。
そして東京で再会する2人。ハッピーエンド至上主義者も満足なこの展開。どうですか?
確かに美しい展開ではあるけどこれじゃここまで話題にはならない作品に留まったでしょうね。

まどか「間違ってないのに、幸せになれないなんて、ひどいよ」

主人公の今までの選択に間違いが無かったかはなんとも厳しいところですが実際どうだったでしょうか。

そもそもすべての元凶となる転校。これは当時ガキだった主人公にはどうすることも出来ず旧ヒロインも1人で東京に残るわけにも行きません。
それでも東京ー栃木でなんとか繋がりは保ててたあの頃。
ここで無慈悲な主人公の転校。しかも種子島。これも主人公にはどうすることも出来ず只従うのみです。

その後の文通をなんとか卒業するまで継続出来てれば・・・敢えて主人公のミスを指摘するならここでしょうか。

しかしこれも酷な話。

そもそも鹿児島行きが決まってから旧ヒロインと会った時点であちらは別れを覚悟してたと思われます。
この先は1人でも頑張って生きていこうと。

そんな相手に対して恋愛感情を維持したまま3年近くも文通を続けるなど至難の業。
段々と疎遠になっていくのも自然な流れだったと思われます。

なのでここまでは主人公は悪くはないのです。

問題があるとするならやはり高校時代。種子の思いを受け止められなかったことになるでしょう。
このへんは上でも書いたんで省きます。

そしてもう1つ。
時金さんも仰っておられましたがそこまで旧ヒロインが気になるならば卒業と同時に逢いに行けばいいではないかと。
確かにその通りでしょう。
まあ高校での3年間で段々とやり取りがなくなり自然消滅した形になった今となっては今更凄まじく逢い難いというのも当然あったかとは思いますが。

色々ありましたが種子以外での主人公の選択ミスは言うほど無かったような気はします。
ある意味では物語の犠牲者とも言えます。

やはり旧(だるくなったので以降旧で)をいつまでも忘れられなかったことが最大にして唯一の難点だったのかもしれません。
なにが彼をそこまでさせたのでしょうか。もはやトラウマクラスです。
彼女を守れなかったことへの負い目なのでしょうか。
彼の中では旧はあの頃のどこか弱い旧のまま止まってしまっていたとでも言うのでしょうか。
旧のようにある程度早い段階で割り切れていたならば・・。

んで色々あって3話のラストの例の踏み切り。
ご存知主人公と旧がすれ違うあの名シーン。

書き換え前では個人的にはあれは主人公の妄想だと書きました。
あの踏み切りは主人公に取って特別な場所。しかも異常なほどに初恋相手を思い続けてきたのだから妄想が見えても不思議などない。
あのタイミングあの場所で旧が偶然いるというのも出来すぎだし電車通過のあの時間だけでもう姿形もないのも少し不自然に思えるのがその理由でもある。

と言うのがその理由でしたが改めて物語を見直してみていい機会だったので測ってみました。電車通過の時間。

マミさん「うーん、時間計測ねぇ。確かにすごいけれど、タイムが問題よね」

確かにその通り。なんとも微妙なライン約18秒でした。
18秒あればあそこから影も形も残さずに立ち去ることが可能なのか・・。
直進だけなら多分不可能ですがよく見たらすぐに曲がり角があるようにも見えなくもない。

つまりこれだけで妄想でしたと言うには少し無理があるのです。

まあ仮にあれがホンモノの旧だったとして何故そのまま立ち去ったのでしょうか。

見れば分かりますが旧は明らかにこちらに気付いていて振り返ろうとしています。
そこまでして何故そのまま消えたのか。
彼女にとっては主人公などもはや古き良き思い出の1つに過ぎません。
婚約者もいて当然そのへんはとっくの昔に割り切ってます。
ならばこちらに気付いたのであれば「あら久しぶり」と気さくに話しかけても良さそうなもんだと思います。

気まずいから避けるなんて理由はどこにもないはずなのだから。

まあ最も自然なのは「昔のあの人に似てるけどさすがに違うわよね」みたいな感じで立ち去ったと考えるのが妥当かもしれません。

しかしそれじゃ少し面白くない。
映画的にあのシーンに敢えて意味を持たせるとするなら多少迷いながらも前に進んで行った旧と過去を振り返り続けた主人公の対比のような感じでしょうか。

最後の主人公の笑みを「いつまで拘ってんだ 俺も前に進まないと」という前向きな方向に取るか「ついに俺にも幻想が見えるようになったか・・・」という自嘲と取るか。

まあどう考えても前者だしそのほうが綺麗に物語を締めることが出来ます。

結局この作品で何を伝えたかったんでしょうね。

男は女々しく女が逞しい? 男は恋愛を引きずるが女は割り切れる?
うーん。 果たしてそんな単純なもんでしょうか。
男でも割り切れる人もいるし女でも引きずる人も当然います。こんなもんは人それぞれであって男がどうとか女がどうとかそんなもんでも無いような気はします。

え?私? 自慢じゃないけど初めて付き合った子と別れた時は冗談抜きに2年程度は引きずりました。
所謂寝取られに近いもんでしたが思えばそこから私のNTR属性が覚醒を始めたのかもしれませんね。

要するに恋愛なんて思うようには行かないってことです。初めての相手とそのままずっとなんて極めて稀なことでは
ないでしょうか。出会いと別れを繰り返す。それが普通だしそれでいいのです。

そういう意味では妙にリアルなこの作品。そういうところが欝だの虚しいだの言われながらもある程度共感されて話題となり人気が出たのかもですね。

難点を敢えて挙げるなら余りに短くて色々描写が足りない点でしょうか。
ある意味ダイジェストを見てるような気分。特に3話。
しかし足りないからこそ色々考察出来る楽しさがあるとも言えるのでこのへんは良し悪しかも。
只、余りすっきりとはしないでしょうね 視聴後に。

まあそれでも恋愛ものだと最後は必ず上手く行く。
そんな展開が溢れてる中こういう作品があるのもいいもんかもしれません。
そう思いながらもソッと再封印するのだった。

投稿 : 2015/10/09
閲覧 : 495
サンキュー:

69

秒速5センチメートルのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
秒速5センチメートルのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

野菜炒め帝国950円が他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ