「STEINS;GATE [シュタインズ・ゲート](TVアニメ動画)」

総合得点
92.6
感想・評価
16684
棚に入れた
50813
ランキング
18
ネタバレ

ヒロトシ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

世界は、再構成される!

タイムトラベルを初めて創作に取り入れたのは、H.G.ウェルズによる『タイムマシン』と言われている。この作品で、タイムマシンは主人公自身の知への探求という動機の下に制作されており、作品内のストーリーも、未知の生物との遭遇を軸にする等、所謂エンターテイメント的な要素が濃かった作品だった。つまり、時間移動は最初はSFジャンルを純粋に追求した要素だったわけだ。後にこの作品をウェルズの曾孫が自身でリメイクし、映画として発表するが、原作とは違い、主人公は知的好奇心からではなくて、自分の恋人を失ったショックから、タイムマシンを制作し、恋人を救う手段を模索するといったストーリーにアレンジしている。今までは自己欲求を満たす為に作られたタイムマシンが、時を経て、他人を救う為の動機になっていくのが面白い。元々、間隔の長い時間移動がまるで旅行するようだという意味から生まれた『タイムトラベル』という固定概念だけではなく、間隔の短い時間移動を主とする『タイムリープ』という新たな概念も発生している。単なるSFから解き放たれ、人の心を情で刺激する、ヒューマニズムをも内包した、多面的に楽しめるジャンルに形を変えていったのは興味深い進化と言えるのではないだろうか。

日本でタイムリープというジャンルが受けるのは、原田知世の『時をかける少女』のヒットも下地としてはあるが、そもそもの国民性もあるのかもしれない。お盆の時期に、先祖が一時的に自分達の下に帰ってくるという思想が根付いているように、過ぎ去りし時間の中においても、過去の人間と今の人間は何かしら繋がっているという感覚を持ち合わせている民族ではないかと思うのだ。そういう意味ではタイムリープというジャンルに色々想いを馳せるのは、当然といえば当然なのかもしれない。幾たびなる失敗を経て、つまり多大なる困難にぶち当たりながらも、そして挫けそうになりながらも、経験を糧として、最後まで諦めない岡部の姿も、逞しい日本男子として、好感を持てるのではないだろうか。これから導きだされるように、失敗は成功の母なのだから、日本人も少しくらいのミスは大目に見てやるべきではないだろうか!―そういう話ではないですね。

本作もきっかけこそ、岡部を筆頭とする、ラボメンの知的好奇心から、物語は展開していくが、最終的には大切な人を救い出す為、そしてその過程で、確かに関係を強くしていった愛する人を守る為、自分を偽りの仮面で覆っていた岡部が、段々と素の人格で、他人と接するようになっていく。コンセプトからというか、材料からして、人気が出る要素を持ち合わせてはいるが、素晴らしいのはその調理の仕方だ。{netabare}最初はどうも厨ニ病全開でとっつきにくい岡部が、まゆしぃの死をきっかけに急速に人間らしくなっていく構成自体、ギャップを逆手に取った効果的な演出とも言える。{/netabare}元々の原作自体が素晴らしい作品であるのは間違いないが、アニメ版も只、原作をなぞっているだけでもないのが、高評価のポイントだ。{netabare} 事例としてはフェイリスルートの場面、フェイリスが時間軸を改変するDメールを送信した事で、電気街だった秋葉原が一転するというシーンだ。デジタル機器が所狭しと立ち並ぶ街並みではなく、沢山のアナログな扇風機がひたすら風を送っているシーンは、アニメ視聴者のみならず、原作経験者の度肝を抜いた。{/netabare}これこそ『アニメでやる意味のある』好例で、視覚的に優位に立てる映像作品ならではの特権だ。原作では決してこのような真似は出来ない。

本作はよく、映画の『バタフライ・エフェクト』を参考にしたと言われる。確かに主人公とヒロインの関係性や、ラストカット等を鑑みるに自分としても、影響されてはいないだろうなとはとても思えない。シュタインズゲートの選択に心打たれた者は、もう一組の、世界線に運命を歪められた男女の生き様を追っかけてみてはいかがだろうか。個人的な推薦作品だが、『ドニー・ダーゴ』も結構オススメである。ちょっと癖のある作品だけども。

投稿 : 2013/05/01
閲覧 : 370
サンキュー:

42

STEINS;GATE [シュタインズ・ゲート]のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
STEINS;GATE [シュタインズ・ゲート]のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

ヒロトシが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ