「言の葉の庭(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
1994
棚に入れた
9500
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (1994)
物語
3.9
作画
4.6
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.8

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しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

歩き方を忘れた誰かに見てほしい

2013年5月末日から物語冒頭と同じ梅雨の季節に公開された50分未満の短編映画。
2011年の「星を追う子ども」以来2年ぶりの新海誠監督の劇場アニメです。

靴職人になる事に夢を見つつもその夢に現実味がないことも
理解している大人びた中に純情を秘めた少年、タカオ。
雨の日の午前中だけ学校をさぼっていたタカオが庭園で出会う
不思議な女性、ユキノと交わす束の間の交流を描いた物語。


本作の見所はやはり監督の過去作と同様、同時期に並ぶ物の無いほど
洗練された美麗な風景と、こだわりぬかれた光の表現です。
さらに本作では丁寧に描写された雨の表現が印象に残ります。
雨粒のしぶきや水たまりからの反射などの細かな雨の表現が見物ですが、
個人的に一番印象に残ったのは雨上がりの、雨が止みきらない時間帯の
風景が今までアニメで見た事が無いくらい奇麗に思えたことです。
自分が一番好きな光景だからかもしれませんが…。

人物の描き方にしても庭園で交流するタカオとユキノの二人の輪郭が
周囲の木々から反射したような緑色を加えた形で表現されていて
本作の持つ新緑の季節のイメージを形作っているように思えました。


さて、映像部分はともかくなかなか物語の面で万人受けしないイメージのある
新海監督のアニメですが、本作はだいぶ過去作と趣を異にする物じゃないでしょうか。

過去作は時間の流れの中で何かを喪失していく事の
受入れ方ばかりに意識が行っていた印象があります。
おかげで視聴後にはいつも胸の中心に穴があいたような空虚な感情に
支配されていたのですが、本作においてはそれがありませんでした。

本作も形の上での落としどころは過去作に近いのかもしれませんが、
もっと前を向いて動いて行けるような暖かさが残った感覚があります。
言葉遣いや構図の見せ方などの表現がわかりやすく感じたからかもしれません。
タカオ役の入野自由さんとユキノ役の花澤香菜さんの体当たりの演技が
そう感じさせたのかもしれません。

個人的にはいつも男性主人公に共感しようと努めていたのが、
今回はユキノの言う「27歳の私は15歳の頃の私より少しもかしこくない」等の
台詞に共感を覚えてしまって視点が変わったからそう感じたという部分が大きい気もします。


ともあれ舞台が近かった「秒速5センチメートル」とは少し印象が
変わって見えた事だけは確かです。
秦基博さんの歌う主題歌「Rain」が相応しい良いエンディングでした。

これまでの新海監督作品が好きな方も、過去作を観た事が無い方も
気が向くようであれば観てみてはいかがでしょう。
好みは分かれるでしょうが一見の価値があると言わせていただきます。

投稿 : 2013/06/11
閲覧 : 360
サンキュー:

29

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