ふりーだむ さんの感想・評価

3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態：観終わった

「よだれの絆」で結ばれた、普通の男子高校生と謎の彼女の青春恋愛物語。

普通の高校生・椿明はいたって普通の学園生活を送っている。そこにある日転校生の女の子が現れる。髪の毛はボサボサで前髪で目を隠した少女・卜部美琴。転校初日の授業中に突然椅子から転げ落ちるほどの大笑いをして周囲を唖然とさせ、他人に関心を持たないことから、「変わり者」として扱われるようなり、クラスで孤立する。ある日の放課後、教室で寝ていた美琴を起こした明は、美琴の去ったあと、机に残された「よだれ」を舐めてしまう。このひと舐めから明と美琴の不思議な恋愛関係が始まっていく。

よだれという部分を差っ引けば、至って普通の学園恋愛もののような作品。ただこの「よだれ」がその「普通の学園恋愛」作品に強烈なアクセントをつけています。
主人公・椿明は至って普通の高校生である。中学の頃、憧れていたクラスメイトのあこがれの娘の写真を今でも持ち歩き、いつかする恋愛に憧れる普通の少年。女の子の「よだれ」に興味を持ったり、美琴と付き合ってからも様々な「いかにも男子高校生らしい」欲求や妄想をする男の子である。
もうひとりの主人公・「謎の彼女」卜部美琴は、すべてが謎の転校生。家族描写もなく、家でも一人の姿しか描かれておらず、「よだれ」の絆で結ばれた明以外にはまったくもって興味のない少女。泳ぎが得意だったり、足が速かったり、パンツに挟んだハサミの早業でモノを切り刻んだりと運動神経は抜群のようである。多くを語らないが、少々独自性があるものの思考は普通の女の子の感性を持っている。まれに常軌を逸した行動もする。

手をつないだり、好きな子を抱きしめたい、と思ったり、キスがしたいと思ったり、体に触りたいと思ったりと、彼女がいれば満たしたい欲求を求める明と、すべてを悟っているように見えて、独自の恋愛感を持ち明を一目見て運命を感じた美琴。階段を飛ばしがちになりそうな高校生の恋愛を美琴は階段を一歩一歩踏みしめるように上がって行きたいと思っているようですね。「よだれ」を通して気持ちを確かめ合い、少しずつ、少しずつ互いの距離を縮め、いっときの熱病にならないように、後悔しないように、未来に向かって着実に歩を進めているようにも見えます。

まぁ最初は「なぜよだれ？」とも思いましたし、流石に舐めるのは、、とも思いましたが、女子のこと、好きな子のことなら尚更、女の子に興味深々な男子高校生なら起こしてしまいがちな行動のようにも思えます。ただ、思ったのはある意味便利だな、とも思います。人の心なんてわからないし、尚更好きな子の心なら知りたいと思うし、それが「よだれ」を舐めることで分かるなんて、なんて便利なんだと思ったりもしました。
通じあえば嬉しくなったり、考えが違えば不安になったりと、明は一喜一憂しますが、美琴はすべてを悟ったように「よだれ」を舐めて、舐めさせて、泣いたり、恥ずかしがったりしながら少しずつお互いの理解を深めていく行動をとっています。

「よだれを舐める」と表現は少々嫌悪感を抱いてしまう行動ですが、この作品に関しては、「心を通じ合わせて相互理解を深める」ために使っています。恋愛作品をリアルに描くときに現れる、気持ちを理解できずにモヤモヤしたり、すれ違ってしまったりする表現を、このよだれでドロドロせずにある意味、爽やかに描けていたと思います。（まぁ設定とは言え反則とは思いますがw）先に書いたとおり「よだれ」という部分を差っ引けば普通の爽やかな学園恋愛作品だと思います。高校生同士の恋愛のぎこちなさや甘酸っぱい感覚も良かったと思いますし、まさに一歩一歩踏みしめて近づいていくような爽やかさも良かったですね。ただ、パンツ描写とか裸の描写が多かったのは気になりますがw

「よだれ」で通じ合う気持ち、その気持ち一つ一つを大事にして、確かめ合ってこの先も二人は進んでいくのでしょうね。続きがあれば楽しみですが、ただこの作品はここまでで上手くまとまっているようなので無理に続きは描かなくても良いかとも思います。

先に見た「好きっていいなよ」のような、ちょっと「よだれ」は気になりますが、爽やか青春恋愛作品、楽しませていただきました。