「海がきこえる(OVA)」

総合得点
68.6
感想・評価
272
棚に入れた
1270
ランキング
1979
★★★★☆ 3.6 (272)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.5
音楽
3.6
キャラ
3.6

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

その人を想いやる優しさがその人を傷つけてしまうこともある…三角関係を題材にしながらも、後味の悪さが残らないさっぱりした仕上げ方が絶妙!

氷室冴子さん原作の小説をスタジオジブリでアニメ化した作品です。
大抵のアニメは地方が舞台だと言っても標準語で固定されてたりしますが
このアニメは違います、バリバリの方言、土佐弁です!
もう声優さんお疲れ様ですと言いたいくらい素晴らしかったです。
スタッフロールに方言指導などという役職があるくらいなのです。
しかもナウシカやめぞん一刻でお馴染みの島本須美さんも指導員の一人に名を連ねてます。
東京育ちの私からしたら方言というのは憧れの的で女性に使われたら可愛いし、
男性に使われたらカッコいいと思ってしまうものです。

この作品は東京の大学に進学した杜崎拓が同窓会に参加するため、
高知に帰省するなか里伽子や松野に関する想い出を振り返っていく回想型のアニメになってます。

杜崎拓と松野は親友同士でそこに里伽子が転校してきたことにより、
このまま変わることのないと思ってた関係に微妙な変化がおとずれるというもの。
作品は杜崎拓の視点で終始回想していくことになるのですが
この杜崎拓という男が非常に好感がもてます。
とても友達を大切にするやつで(主に松野ですが
里伽子のわがままに振り回されながらも彼女の問題にも親身になってやったり、
かと思ったら里伽子とビンタの応酬。
とてもまっすぐ生きてる男ですごく好感がもてました。
里伽子が父親に会いに行くために東京行きを強行しようとした際には、
彼女に付き添い東京まで行きます。
そしてひょんなことから一緒の部屋で宿泊することになったときには、
お風呂場で寝ます、特に彼女に欲情する素振りとかなくそうします。
まるでそうすることが当たり前かのようにです。
そういうことを自然にできるところもまた好感がもてました。

親友の松野豊も非常にいいやつで拓が大切に思うのもわかります。
一目惚れに近い形で里伽子を好きになるのですが、
些細なことでも里伽子と接した時間を拓に報告してきたりして、
キャラに似合わず浮かれてるところが年相応だなと(笑)
声優さんは関俊彦さんでめちゃめちゃカッコいい!
方言もバッチリきまってます。

そして「海がきこえる」の問題児である武藤里伽子。
今風でいえば清楚系ビッチ?とは違いますが
まぁ見た目と中身でギャップのあるキャラという意味ではそういう事になります。
見た目は可憐で清楚でお淑やかそうに見えるのですが結構なわがまま少女で
拓自身も彼女に振りまわされることになるのです。
家庭の事情で高知へ転校してきた彼女は東京に帰りたがっていました。
そのための資金を拓に嘘ついて借りたり、
唯一の友人である小浜裕実まで巻き込んで強行しようとする始末。
「何でこんな女が!」などと同姓には嫌われそうだが
こういった女性が実は男性にモテたりもするんですよね、
小悪魔系に捕縛されてしまうのが男の子の宿命なのだ。
その他にも学校行事の準備にも全く参加しないで、
クラスメイトに囲まれた際の小言には売り言葉に買い言葉で、
それを見て見ぬふりした拓くんは松野くんに殴られ絶縁状態に…
ちなみにここで松野が拓を殴ったのは見て見ぬふりどうこうではなく、
拓が松野に遠慮してるのがわかってしまったかららしいです。
おそらく友人の松野からしたら拓が見て見ぬふりなどありえないと思ったのでしょう。
自分の知ってる杜崎拓という男ならば彼女を絶対に助けていたはずだと。
その行動に隠された拓の真意が見透かされてしまったから殴られたんでしょうなぁ。
そこまで自分を信頼してくれる友人がいるというのは本当に羨ましいです。
まぁ彼女が転校してきて色々なことが様変わりしました。
松野が告白した際には土佐弁喋る人間などあり得ない!などボロクソに言って振りました。
そのことが原因で拓にビンタされるのですが里伽子も後に松野に対する暴言を後悔したらしいです。

後に里伽子も語ってますがそれまでの世界が狭すぎたんですよね。
この時の彼女にとっては東京での暮らしがすべてだったし、
高知のことなんて知ろうともしなかった、東京へどう帰るかしか頭になかったのです。
そんな彼女の気持ちを知らず高知に馴染ませようとするクラスメイトは、
彼女にとって敵でしかなかった…それが高校時代の彼女の世界だったのです。
拓も同様で彼の狭い世界には親友に遠慮することが優しさ…それしか知らなかったのです。
時にはその優しさが人を傷つけるということを理解できてなかった。
拓が里伽子に好意を抱いてるシーンというのが非常にわかりづらいんですよ。
ですが実際は拓も里伽子のことが好きだったわけで、
つまり杜崎拓は本気の本気で松野に遠慮してたんですよね。
好意を抱いてる素振りすら視聴者に感じさせないほど松野の親友に徹していました。

「海がきこえる」というタイトル通り、そんな狭い世界しか知らなかった里伽子や拓たちが
海のように広い世界を受け入れて成長していく物語に思えました。
「海がきこえる」というタイトルはキャラクターたちの成長がもうそこまできてるよ、
という意味もあったのかもしれません。

絶縁状態にあった拓と松野も同窓会を切欠に仲直りし後味の悪さはありません。
拓は東京の大学に…
松野は京都の大学に…
里伽子は地元高知の大学に…行くはずだったのだが
母親には内緒で東京の大学も受けてたらしくそっちに行くらしいです。
最後の最後まで小悪魔のような翻弄のしかたでまわりを振り回していますね(笑)

彼女が東京の大学に行きたいのは会いたい人がいるからだとか。
なんでもその人は「お風呂で寝る人」らしいですよ…

【A82点】

投稿 : 2014/04/12
閲覧 : 329
サンキュー:

7

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