「輪るピングドラム(TVアニメ動画)」

総合得点
83.4
感想・評価
2090
棚に入れた
10554
ランキング
322
★★★★☆ 3.8 (2090)
物語
3.8
作画
3.8
声優
3.6
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

蓬(Yomogi) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 5.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

タイトルなし

放送前から「見る人を選ぶ」ともっぱらの噂だった「輪るピングドラム」が最終回を迎えた。
結論から言うと、傑作。
自分はこういう作品を見るためにアニメを見ている。
本当に素晴らしかった。

考察サイトで物語の解釈についてかなり整理されたものが出てきている。
今はネットが発達しているので、みんなの納得できる共通見解というのもあっという間に出来上がるだろう。
おそらく2011年のパラレルワールド物として「まどかマギカ」や「シュタインズゲート」との比較考察がこれから沢山出てくると思う。
しかし、この作品は別格だ。
「この作品は一体私たちを何処に連れていくつもりなんだろう?」
そう思えた作品。本当に何年ぶりかの。
とにかく見れて良かった。もうそれだけ。

さて、客観的に分析。
作品の大きな特徴として、音楽の使い方が絶妙だった。
音楽自体も面白い曲が多かったし、作品テーマを歌い上げるドラマチックなコーラス曲も、挿入されるARBのカバー曲も良かった。
音響監督に幾原さんが関わっていることもあり、音関連については実に見事としかいいようがない。
物語の後半になるとシリアスな話が続くのだが、それでも陰鬱ではなく痛みとして描けたのは音楽の力が大きかった。

シナリオについては奇妙なセリフ回しはなくストレートな表現が多かった気がする。
映像では暗喩の乱れ撃ちとばかりにめまぐるしい絵解きが必要だっただけに、セリフが捻ってなかったので物語が素直に理解できた。
一番凄いと思ったのは20話での陽毬とサネトシの恋についての会話。
好きな人に逃げられたら陽毬は疲れちゃうから追いかけないと言う。
愛を捧げていても報われないのなら、その心は惨めだと。
報われない愛は惨めだとヒロインに言わせる所が凄い。
それに対する答えが、愛を捧げる心それだけが幸福なんじゃないか、と。
こんな正論アニメで聞くとは思わなかった。
それ以外にもゆりの「やっぱり私たちには無理だった」発言など。
耳を塞ぎたくなるようなセリフが紡がれたあとでの最終回の流れは完璧だったと言える。

絵について。
単純に作画のクオリティはちょっとムラがあったが普通に良かった。
所により美麗な作画があってそういうカットは耽美。
動きに関しては特筆する物はなかったが、背景美術は良い仕事をしていたと思う。
オーソドックスな背景は画面に安心感が出るし、アニメらしい世界を構築していた。
色使いも見る人の印象に残るでポップさやアンニュイさの演出が上手かった。
またコンテ演出についてはどの回も抜かりなかった。
特に1話、9話、18話」24話は良い。
24話の晶馬のピングドラム取り出しから深紅のカーテンが閉じるまでは鳥肌ものだ。
晶馬燃え尽きのあたりなんかは死ぬほど美しい画面だと思う。
この物語が小説でも漫画でも実写でも、このアニメより昇華させることは出来ないはずだ。
絵の力が爆発した圧倒的な表現だったと思う。

テーマは愛。
愛って言うのは人それぞれ形が違うから、この物語が全然受け付けない人もいるし、物凄く感激する人もいるし、いい話じゃん程度で終わる人もいる。
年齢や性別やそういったものでも感じ方は変わってくる。
でも一番は「それまでその人がどんな世界を生きてきたか」に左右される。
「大好き」「愛してる」そういった言葉がその人の人生の中でどのくらいの重さを持っているのか。
これは子供とかつて子供だった大人たちが「もう幸せになっていいんだよ」という許しを得る話だったのかもしれない。
「運命の果実を一緒に食べよう」というのは「愛している」という意味。
自分はこの歳になって初めて「誰かと一緒にごはんを食べる」というのは幸福なことなのだ、と心の底から思うようになった。
だからリンゴを分け合った子供たちにシンクロする。
一緒にごはんを食べる日常は愛に満ちている。
かつて私たちが受け取っていた愛ある日常は2011年の今年、大きく揺れた。
だからこそこの作品が多くの人に意味ある物であって欲しい。
私はそう思う。

総括。
幾原さんは12年経ってもやっぱり本物だった。

投稿 : 2014/04/12
閲覧 : 173
サンキュー:

4

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