「STEINS;GATE [シュタインズ・ゲート](TVアニメ動画)」

総合得点
92.6
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18
ネタバレ

OZ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

緻密に練られた現代SFドラマ

原作のゲームは未プレイだけれど
評判が良いと耳にしており
キャッチしている人達の評価も高いので
観てみたらお気に入りとなった作品

■緻密に練られた現代SFドラマ■
ADVゲームでも評価の高かった『Steins;Gate』
アニメ版はどうなのかな?と
シナリオ面を期待していたが
見事に応えてくれる内容でした。

まず評価したい点は原作を知らなくても
アニメだけで理解出来る点にある。
どの作品にも言えるけれど
原作を完全に再現するのは難しい。
ましてや今作品の様な
周到に作られたストーリーだと尚更だが
問題無く楽しめるのは高評価に繋がった。

これまでもタイムトラベルやタイムリープ
いわゆる時間遡行作品は沢山出ており
実写映画ではDメール(デロリアンメール)の名称元になった
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をはじめ
『バタフライ・エフェクト』『サマータイムマシン・ブルース』等ある。
アニメでは『時をかける少女』『魔法少女まどか☆マギカ』なんかも
それらに当たる作品だろう。

初回の視聴では気付かない事に
2回 3回と観返す度
「これがあれに繋がるのか!」
「あの時の行動はそういう意味だったのか!!」と
新たな発見を以て楽しめる作りになっている。

それ以外で特徴と言えば
伏線の張り方と回収が抜群に優れている事である。

張り方一つとっても無理がなく自然なのだ。
この手の作品で重要なのは
それとなく仄めかしたり 軽く匂わせたり
含みを持たせる程度に抑えておくのが不可欠で
「それはないよ」「今のは怪しいな」なんて
バレバレだと分かってしまった途端
伏線は伏線で無くなり醍醐味が薄れてしまう。

"いかにも伏線を張りました"的な行動は見られない為
観てる側の意識を上手く逸らせる事に成功している。

また 回収に関しては
頭の片隅に薄っすら留めてある出来事を
忘れた頃のタイミングに入れてくるので
「ここでそうくるか!」と驚かされる。

特に第1話で紅莉栖が血まみれで倒れていた事なんかは
全て解決したと思われた第20話ラストに
「最初のDメールか それってアレでしょ?
 私が刺されてたとか何とかっていう」
そう紅莉栖が口にするまですっかり忘れており
岡部と同じく「はっ!?」とさせられたものだ。

話の区切りがついたと思った矢先
二転三転していく構成は
良い意味で期待を裏切ってくれ
特にラスト3話の展開は圧巻である。

秋葉原を舞台にラジオ会館や
10年以上前にアメリカの掲示板に現れ話題になったジョン・タイター
スイス ジュネーヴ郊外にある
素粒子物理学研究所SERN(実在する正式名称はCERN)等
現実で起きた出来事や存在する研究機関により
物語が深みを増している。

一言でSF物と括る事は出来ず
キャラクターそれぞれの抱える悩みが色濃く組み込まれ
緻密に練られた現代SFドラマが『Steins;Gate』なのだ。

■引き込まれたきっかけはまゆりの死■
最初から楽しんで観ていられたが
なかなか面白くならないとよく耳にする。

確かに序盤がだらだら展開なのは否めないけれど
第12話ラストでまゆりが萌郁に殺されてしまう場面から
一変してシリアスへと軌道を変えるのだ。

萌郁の凶弾に倒れたまゆり
鈴羽は「42 ブラウン管 点灯済み」それだけを伝え
意図を察した岡部と紅莉栖はタイムリープを試みる。

だが 岡部の身を案じる紅莉栖も撃たれてしまい
後が無くなった岡部渾身の叫び
「跳べよおぉぉっっ!! 」から
OPへの入り方は素晴らしく
毎回 飛ばせなかったOP「Hacking to the Gate」だが
第13話で完全にお気に入り曲となり
第12話~第13話の展開で
以降 ガッチリ心を掴まれてしまった。

平穏な日常生活は突然終わりを告げ
急展開に頭が追いついていけないものの
ショッキングな出来事を境に
気付いたら物語へ引き込まれていたのである。

■主人公に相応しい孤独の観測者■
のめり込めたのはストーリーだけでなく
キャラクター達の存在も大きい。

ネットスラングを交えた
キャラ同士の掛け合いが面白く
登場人物全員に愛着が湧いているのだけれど
誰が1番好きなの?と問われれば
ダントツで鳳凰院 凶真こと岡部 倫太郎である。

狂気のマッドサイエンティストと名乗り
中二病全開で時に痛々しくもあったが
その振る舞いには何度も救われた。
頼り無く見えてもやる時はやる男なので
最初と最後で印象がまるっきり変わっていた。

α世界線ではまゆりを
β世界線では紅莉栖を救う事が何より最優先にしている。
守りたいものは
まゆり=紅莉栖>世界であり
第3次世界大戦だろうとディストピアだろうと
彼にとって未来の在り方は二の次なのだ。
仲間思いなのがよく分かる。

中でも惹かれたのは最終回。
中鉢博士から紅莉栖を守り そして自分自身を騙す為に
自らの血を用いて血まみれの紅莉栖を仕立て上げる岡部。

一見 無茶をしている様に映るが
β世界線で岡部の死亡が確定しているのは2025年。
つまりこの場で死ぬ事は無いと
分かっていたからこそ出来る行動であり
逆転の発想を以て紅莉栖を守る。

しかし 紅莉栖を助けた結果により
世界線がシュタインズ・ゲートへと再構成されたので
未来を観測してる人物は現在誰もいない。
深い傷を負った岡部は
もしかしたら鈴羽とタイムマシンに乗っている間
息絶える可能性もあるのだが
全て覚悟の上でやってのけるのだから
凄まじい精神力である。

最も響いたのが元の世界に戻る直前
過去の自分に向けて陰からエールを送るこの場面

「頑張れよ これから始まるのは 人生で一番長く 一番大切な3週間だ」

今までどのくらい現実から背けたくなる瞬間を
目の当たりにしてきたのだろう
最後まで自分を見捨てないのは自分であり
最後まで自分を信じられるのは自分なのだ。

何度も 何回も悲痛で残酷な世界線を越え
ようやく辿り着いた岡部の言葉に重みを感じ
BGM「GATE OF STEINER -Piano- 」も相まって
知らず知らずの内に涙が溢れていた。
今作品のベストシーンはここでした。

岡部 倫太郎並びに鳳凰院 凶真は
主人公に相応しい魅力を備えた孤独の観測者なのである。

■結末について■
敢えて前置きを書いておきますが
今作品は良く作られているし名作だろう。

けれど 観たかったのは
紅莉栖を助ける事が出来ず
まゆりを救出した結末の方なんだよね。

元を辿ると岡部が自らの意思で
世界線を飛び越える引き金になったのは
まゆりの死を回避する事である。

その過程で紅莉栖に惹かれていくのは分かるが
恋愛関係にならないにしても
まゆりの存在が薄まっている様に見えてしまうかな。
「まゆりって結局何だったんだろう?」って。

途中まで"何かを得る代わりに何かを失う"を軸に進んできたので
皆の想いを犠牲にして辿り着くまでは同じだけれど
ここにきて両方助かるのは少し綺麗過ぎる気もする。

勿論 紅莉栖は好きだしまゆりも好きだ。
だからこそ感動のラストシーンとなり
特別編第25話に繋がる訳だが
キスシーンを経ての別れがあまりに刹那的だったので
バッドエンドだとしても
こちらの結末もアリだったのかなと感じたね。

と言いつつも ラストシーンで紅莉栖との再会は
文句無いハッピーエンドだった。

本編も無数にある結末の一つ
何が正しくて何が間違っているのかなんて誰にも分からない
ただ一つだけハッキリ分かる事がある。

これがシュタインズ・ゲートの選択なのだと。

■あとがき■
また一つ名作を観終わった感覚で
本編24話+特別編1話の全25話は期待以上であり
話題に挙がるのも頷ける面白さでした。

気になる所が無かった訳じゃないけれど
強いて言うなら紅莉栖の作画が
安定していなかった事くらいで
細かい矛盾点はあっても
それらをカバーしてしまう程
非常に完成度の高い作品だったね。

後日 ゲーム版をプレイしたが
アニメ版を観ていたせいもあり
すんなり世界観に入り込めたよ。

ゲーム版とアニメ版を比べると
アニメはかなり削られている印象(特にフェイリスとルカ子)を受けたが
ドラマチックな演出面はアニメの方が好きでした。
反対にラストシーンはゲームの方が
じわぁっと込み上げてきたね。

話は逸れるけれど
ふと PC版やセガサターン版で出ているゲームソフト
『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』を思い出した。

こちらも時間軸を行き来する
時間遡行物であるが
『Steins;Gate』が気に入った人は
是非ともプレイしてみて欲しい一品だ。
少々古臭さはあるがおそらく楽しめるだろう。

『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』も
観るのが楽しみになってきたよ。

観終わってからしばらく余韻に浸りつつ
選ばれし者の知的飲料
そうドクターペッパー片手に
愛すべきラボメン達との日々を振り返りながら。

満足度 ★★★★★★★★★☆ (9)

投稿 : 2014/07/26
閲覧 : 633
サンキュー:

99

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