「地球へ…(テレビ版)(TVアニメ動画)」

総合得点
67.3
感想・評価
227
棚に入れた
1473
ランキング
2445
★★★★☆ 3.8 (227)
物語
4.0
作画
3.8
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

売れ筋から外れているが、不朽の傑作SF

2007年のアニメだが、原作は1977年の古き名作SF。
遥か未来、マザーコンピューターに支配される人類と、超能力を持つ新人類ミュウとの長きに渡る苦悩と戦いを全24話で描いた壮大なストーリー。
2000年代のアニメとしては非常に古典的題材が、逆に新鮮さも。
近年の人気アニメの主流から外れている為か、遺憾ながら注目されないが、(作画の古さに目を瞑れば)「もっと評価されていい」名作だと思います。


{netabare}『物語』
荒廃した地球を捨て宇宙に進出した人類が、完璧なるマザーコンピューターに完璧に管理される超管理社会、という所謂ディストピア系SF。
最近から見ると「レトロフューチャー」な古典的SFだが、近年のアニメでは滅多に見られない程に壮大な世界観で、逆に新鮮な驚きに満ちている。
その普遍的なテーマ性は今尚色褪せず、不朽の名作の一つだと思う。

物語の主軸は二人の主人公の成長と葛藤そして邂逅と対立…を経ての和解にこそあり。
物語開始時に13歳だった少年達は各々の立場と視点で、実に数十年に渡り対峙していく。
最終的に二人とも45歳、ジョミーは孫世代からグランパ(お爺ちゃん)と慕われる等、時間的にも壮大なストーリーを全24話に無理無く詰め込んでいるのも見所。
(近年のアニメで、開始時の少年が孫世代に渡って成長する物語は滅多に無い。ガンダムAGEは…うーむ?)

序盤は、ミュウと呼ばれる超能力者の新人類に覚醒した少年ジョミー・マーキス・シンの視点で超管理ディストピアの怖さや違和感が、視聴者にもジワジワと分かってくる。
確かに完璧なるマザーコンピュータに全てを委ねた人生は安楽だろう。
だが、それで良いのか?何かが異常だ…と。
マザーコンピュータに反逆しないように子供を教育(と称しての洗脳・記憶操作)等々、古典的ディストピアSFの怖さは、近年だと逆にあまり見られない世界観だろう。
ジョミーは覚醒する前は普通の模範的な人類(マザーの構築したシステムの歯車)なので、ミュウに覚醒した当初は大いに戸惑いアイディンティティの喪失に苦しむ事になる。
そしてもう一人の主人公、ジョミーと同い年の少年キース・アニアンの視点でも物語が進む。
キースは旧人類のエリートとしてマザーコンピューターに寵愛され、コンピュータの課す適性試験で頭角を現していく。
能力的にも人格的にも完璧で理想的なキースは正にマザーが求める理想の人類だった。
キースは感情の無いロボットではない事が、友人のサムとの心温まるエピソードからも伝わってくる。

中盤は、ミュウの指導者として成長していくジョミーと、人類のエリート街道をひた走りつつも、ジョミーやミュウ達との邂逅や戦いを通しての葛藤が描かれる。
ジョミーの指導者としての成長が見所で、当初は粗暴で指導者失格な子供に過ぎなかったジョミーが、次第に指導者としての資質を備えていく過程が、応援したくなる。
2クールで少年が45歳まで指導者として成長していくアニメは、本作くらいのものだろう!
強力な超能力を持つミュウは一見強い種族だが、引き換えに精神力や肉体的活力が乏しい設定で、どんなに文明や超能力があろうとも、ジョミーのような強き意思が大事だと思わせてくれる。

キースとシロエの物語も重要で、キース同様の人類のエリートでありながらコンピューターに反逆的なシロエ少年と、コンピューターに模範的なキースとの対比や関わり。
コンピュータの僕としてシロエを倒したキースが、我知らず涙を流したのが印象的で、この時点では自覚が無いキースが、最終的にジョミーとの和解に至る重要な一要素であろうか。

地球への帰還を一時は諦め、ナスカという新惑星を安住の地に定めたジョミー率いるミュウのテラフォーミングが興味深い展開に。
ここら辺の描写も、戦闘だけではないSF作品ならではの面白さがある。
だが!人類(というか狂ったマザーコンピューター)の脅威はミュウの生存を認めず、凄惨な殲滅戦で悲劇的な結末に。
マザーコンピューターだけが悪かと言えば、果たしてそうか?
異なる存在、理解できない力への拒絶。
共存が出来ない理由は普遍的で、本作に限らず多くのアニメで描かれているが(ガンダムシリーズ等)宇宙を舞台に種族まるごと滅ぼすに至るスケールの大きい悲劇は、やはり息を飲まずにはいられなかった。

その後もミュウ、人類双方の指導者となった二人の激闘が続き、激しい対立と葛藤を経て、マザーコンピューターやミュウ誕生の真実そして、人類とミュウ共存の未来への可能性と挑戦が始まる。
ミュウvs人類の決戦では人類側のドラマも熱く、マツカとセルジュの絆や、当初キースに反発する嫌味な先輩と思われていたマードックの意地、マードックを愛し運命を共にするミシェル等々、胸に刺さるドラマを見せてくれる。
マードック等、アニメオリジナルのキャラがナイスな存在感見せているのも、テレビアニメ版の見所だろう。

終盤に向かう展開は正に怒涛、ジョミーがミュウの、キースが人類の想いを背負い対話し、そして結論に至る流れは圧巻。
ジョミーは力尽きても、彼の孫(実の孫じゃないが孫世代)トォニィが未来を引き継いでくれる。
少年が成長し、その孫が未来を受け継ぐ壮大な物語(全24話)!!!
数十年に渡る対立と葛藤を経てついに分かり合えた事が、未来への新たな希望を感じさせてくれる素晴らしいラストだった。

古典的なSFだが、全く古さを感じず、普遍的なテーマを持った名作。
全24話という長過ぎず短過ぎない絶妙の尺をフルに使い、最初から最後まで物語に引き込んでくれた。
私が見る限り、物語面では非の打ち所無しの5.0点です。


『作画』
原作が1977年と古く、2007年アニメ化の本作も原作のキャラデザ重視な為か、些か古臭さは否めない。
動画的にも若干の難がある。
が、個人的に悪くないと思えるキャラデザで、古典的SFアニメとしては十分だと思う。
バトルシーンは決して派手さは無いが、双方の種族の命運を賭けた超能力と科学の衝突は迫力十分。
人物の感情表現も迫力がある為、必ずしも絵的な古さが欠点にはならないと思う。

『声優』
ジョミー役の斎賀みつきさん、キース役の子安武人さんどちらも素晴らしかった。
感情を爆発させるシーンも多く、特に終盤心に迫る圧巻の名演技多数。
他にも好演が多く、マツカの死を悼んだセルジュ(岡本信彦さん)「ばかやろう…」が心に響く。
マードック役の成田剣さんもラスト非常に渋くてカッコ良かった。
(成田さんは放送当時、犬夜叉の殺生丸のイメージ強かった)
セキ・レイ・シロエのクソ生意気な小僧っぷりを井上麻里奈さんが、サムの幼児退行シーンの羽多野渉さん等、随所に名場面があるのも、声優さんの力量が活きている気がする。

『音楽』
1クール、2クールそれぞれにOP・EDがあるが、いずれもテーマ盛り込んだ良曲。
作中BGMもクオリティー高い。

『キャラ』
ダブル主人公が13歳から45歳まで成長する過程が素晴らしい。
キースは一見人間味乏しい感じだがサムへの友情など人間的にも立派な男だった。
原作には居ないオリジナルキャラクターが好人物多く、特にグレイブ・マードックが好き。
当初は後輩の優秀過ぎるキースに嫉妬する嫌味な小物先輩めいていたが、人類陣営の良識家としてキースを補佐したり、人格者として活躍、最終戦では特攻して意地を見せたナイスガイ。
ミシェルとの恋愛やセリフ回しも小粋でカッコ良かった。
ジョミーに想いを託すソルジャーブルーや旧世代、ジョミーをグランパと慕うトォニィら若き孫世代それぞれの想いもしっかり描かれていた。
マツカ(39歳とは思えん!)も健気、マツカの死を悼むセルジュなど、本作のオリキャラが大活躍。
ミュウ側のシャングリラ乗組員らも含め、キャラクターの層は抜群だろう。

忘れてはならぬラスボス「マザーコンピューター」、怖かった!{/netabare}

投稿 : 2014/08/27
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サンキュー:

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