「わが青春のアルカディア(アニメ映画)」

総合得点
65.1
感想・評価
20
棚に入れた
110
ランキング
3401
★★★★☆ 3.6 (20)
物語
3.4
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.8

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ネタバレ

雷撃隊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

キャプテン・ハーロック エピソード0

もともと「わが青春の~」というのは短編集「ザ・コクピット」に収録された一編のタイトル。本作はハーロック&トチローのファーストコンタクトと「ザ・コクピット」の「わが青春の~」の映像化だ。宇宙戦艦アルカディア号の初陣だ。

公開当時はガンダム・ブームに押され気味だったらしいけど僕はリアルタイムじゃなかったのでゼンゼンOK。むしろ懐メロとして認識できたのでダサいと感じなくて済んだ。

ハーロックという男は999では無敵の先輩ぶりを見せるけど主人公となると結構弱さをみせる。彼もまた苦悩する若者であり歳相応の無力感にブチ当ることもある。遠目に見ると無敵でも話してみると意外と親近感のある兄ちゃん、というのが彼の魅力だろう。ちなみに大山一族や台場一族とは先祖代々の付き合いのようだ。

キャプテン・ハーロックのご先祖様であるファントム・f・ハーロックはドイツ軍のパイロットで愛機はメッサー・シュミットBF109。胴体にARCADIA
とマーキングされている。バトル・オブ・ブリテンやアフリカ戦線に参加とのこと。ハンス・ヨアヒム・マルセイユやエーリッヒ・ハルトマンの同僚ということになる。このメッサーの照準器が大山家の家宝となり宇宙戦艦アルカディアに搭載される。

ガンフロンティアに登場するハーロック&トチロー~「ザ・コクピット」の短編を経て宇宙海賊と家系が続いてゆく。ちなみに999のトレーダー分岐点はガンフロンティアの世界。コミック版宇宙海賊~にも登場する。映画の冒頭でハーロックが乗っているのはデス・シャドウ。999でトチローの墓所となる戦艦だ。続編のSSXでトレーダーに墜落する様子が描かれている。
宇宙海賊~の子孫でハーロック家の末代は「帰らざる時の物語」に登場する全身サイボーグのハーロックということだろうか。

ハーロック&トチローのコンビはさながら敗戦国であるドイツと日本の敗残兵だろう。トチローの「一人きりの叛乱さ」なんて痛々しい。松本零士の父親はレイテ沖海戦を生き残った零戦のパイロットで戦後に自衛隊から誘いがあった時、「敵(アメリカ)が作った飛行機に乗るなんてまっぴらだ」と断ったそうな。この逸話が恐らくハーロック&トチローのコンビに影響を与えていると思われる。

この頃の東映動画の劇場アニメの作画レベルはやたらと神がかっていてクオリティーが高い。小松原一男や金田伊功がいい仕事している。メッサー・シュミットの空中戦やアルカディア号の発進シーンとか迫力満点だ。豪快にコンクリートをブチ破るアルカディアの発進シーンは最高だ。エメラルダス号が活躍しないのがやや残念だけど。

もう一つ、本作は艦コレやってる提督さんたちに見て欲しい作品だ。後半にアルカディア号が敵の戦艦と1対1のガチンコバトルをやらかす。この戦闘シーンでは二隻が平行に並び主砲を撃ち合う。アルカディア号はターレットを横に向けて一門づつ主砲を打つがこれは日本海軍の片舷相互撃ち方という射撃方法だ。戦艦(バトルシップ)の戦いは平行に並んで二の字を描くのがデフォルトだ。そうすると主砲の全門が使用可能となる。提督方、憶えておくように。でもアルカディアは正確には戦艦ではなく「戦艦的な機能を持った自家用船舶」らしいけど。


音楽は木森俊之氏。「聖母たちのララバイ」の作曲者といえばわかるかな?楽曲提供には平尾昌晃とくる。いやはや渋い。でもカラオケで「白夜にひとり」とか歌ってもわかってくれる人がいなくて少し寂しい。

キャストも文句無し。井上真樹夫さん、富山敬さん、田島玲子さん、やはり最高だ。コミックを読んでいると声が聞こえてくるようだ。「私と共に青春の野を駆けたアルカディアよ、男の約束は守らねばならぬ」「敵に背を向けて海に出たくねーな」とかダサいけどカッコイイ。痺れる憧れる。「総員戦闘配置につけ、機関、レッドスロットル75000回転、目標、敵旗艦」名台詞多いぞ。ラストの「わが青春のアルカディア号、発進」に痺れない奴は男じゃねーぞ。

アニメ、コミックの世界から男の尊厳が失われ、戦車や戦闘機や戦艦まで女共に奪われた今日、女には理解できない男のロマンとガチな艦艇、航空機のバトルがムショウに恋しくなる。ゴツいものをゴツいものとして愛でる心を取り戻したい時に見たくなる名作だ。ヤマトやハーロックを始とする松本ワールドは和製アニメ文化の基礎問題集みたいな作品群なのでアニオタを名乗るなら押さえておくべし。


突っ込みどころ満載でも理屈を超えたロマンと格好良さ、戦艦による迫力満点のバトルがあれば満足なのさ。もともとオイラはこういうのが好きだったのにいつから萌え豚になってしまったのか・・・我ながら情けない・・・

投稿 : 2015/01/05
閲覧 : 496
サンキュー:

15

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