「School Days-スクールデイズ(TVアニメ動画)」

総合得点
80.9
感想・評価
3070
棚に入れた
14073
ランキング
425
★★★★☆ 3.4 (3070)
物語
3.5
作画
3.3
声優
3.4
音楽
3.4
キャラ
3.4

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ネタバレ

さとうR さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

名作

この作品は傑作だ
ハイスクールDDで爆笑して暫く経ち、名前からして似たようなハーレム学園ものかな?などと思って見事にハマった
全くの基礎知識無し、予想は大ハズレだったがww観たのは大正解だったと言わざるを得ない



この作品のメッセージは警鐘だろう
・誠意の無い性と逃避
・自分さえ良ければいいという考え
・他者への依存と狂気

メイン3人の末路は、これら避けるべきことを犯した結果として示されている
しかし犯した、とはいえ罪ではないし(もちろん殺害を除く)、十分酌量の余地がある
16歳の自分がもし、3人の立場になった時…果たしてしあわせな結末になるだろうか?

今、10代は7割が浮気を経験しているという情報もあるらしい
それが本当か否かは疑問だが、置かれた環境を考慮すれば現実でも十分ありえる話だろう

そういった小さな過ちの積み重ねであるがゆえに、やるせない
そのリアルさが本作品を際立たせている
まさに現代に必要なメッセージであると言えるだろう



史上最低最悪という烙印を押されているらしい誠であるが、根は悪い奴じゃないというのは同意する人も多いのではないか?

最初に言わなければならないことは、基本的に、事実として、男は女に求められて拒否するのは非常に困難、ということだ
まして誠はまだ16歳であり、社会経験も恋愛経験もほぼ無いに等しい状態である
恋愛のルールは知っていても、理解できていない。それを破ったら自分と周りを傷つけるということも

最終的にはおそらく理解しつつあったと思うが、もう自分では制御できないし、何より向き合えない
諦めに似た感情。それを責める相手からは逃げるしかなかった

11話で誠は「片っぱしから女に手を出す」ことが語られている
それがリアルでないと思う人は、「誠のアレが大きいのが広まった」とか、「処女捨てブームが起きた」とか、イジメ3人組の言い方から類推できる設定でも補完するといい

また世界、乙女、刹那はもともと誠を好きだったため、言葉との進行に紛れがあったとしても、誠と他の3人が関係するのは回避できないように思う
⇒言葉との別れは必然
⇒世界との確執も必然
⇒言葉が狂い、世界が引きこもり、誠が性に溺れる
ということだろう

もちろん思いやりやケアなどは全くない、最低な奴である。しかし悪意があった訳ではない。そこは理解したいところだ
おそらく制作側の意図として、そういった誠の心情の描写は大きく省かれている

世界に乙女との嘘を暴かれて責められ、自分ひとりを見るよう詰め寄られる誠
誠が言葉より世界を選んだ理由は、性欲を満たせることと、一緒にいて楽だったからだ
11話では性欲を満たせる乙女がおり、世界は重荷になった。理由は失われている

この後、誠が世界を傷つけるような態度をとったことは容易に想像がつく
そして世界は引きこもり、誠は性への逃避を加速させることになった。「もう何もかんも面倒なんだ」と

誠が「妊娠は世界のせい」と言っているのは大方、「ゴムを使おうとしたが世界がつけなくていいと言った」とか、そんな類いの話があったのだと推測される
もちろんそれが真実だったとしても、完全に両者の責任である

ただ、そういった種の伏せられた話を考慮すべきとは思う
つまり誠だけが悪いわけではないということだ
極論するとモテすぎたのが主たる要因である。誠に群がった女たちすべてにも、大きな原因があるのだ

誠はモテすぎ、高校生男子の性欲に抗えず、経験不足と未熟なため自分のことに一杯で、対応が幼かった
最後はもう、どうすればいいか分からず、ひたすら逃げた

最低でも言葉と世界に対して「俺は求められたら拒否できない。誰かを選ぶなんてできない」ぐらい言って相手に選ばせれば良かったのだが、誠にはハードルが高いか…

しかし、こうして類推できる設定を追加しても、誠の擁護はかなりキツイww
ただ、世界と言葉を救えるのがこの男だけだったことを考えると、なんとか惨劇が回避できなかったかと
虚しさに似た努力を、止めることができない



世界はどうも世間で策士という扱いのようだが、それはどうかと思う

刹那は、入学から二学期開始までの約半年、特に誠との進展は無かった
世界に対しても誠への意思を表していなかったのだろう。逆に、世界の誠に対する思いは高まっていった
おそらく刹那は、二学期始めの頃はすでに転校の話は決まっていたと思う
だから世界に誠のとなりの席を譲った。自分がもう世界を支えることができないから。

世界が言葉を誠に紹介したのは誠に感謝されたいため。そしてもし誠が言葉とダメになったら次は、という期待。
しかし誠が言葉と上手くいってしまったため、逆に欲求を抑えられなくなって「特訓」に及んでしまう
誠が欲しい、という想い

それは成功したのだが、そのことは即ち、誠が誠意のない人間である可能性を示す、ということを分かっていなかった
言葉と別れようとしない誠。罪悪感と逡巡に、世界は苦しむ
刹那の尽力により、ようやく誠は言葉と別れるが、直後に乙女との裏切りを知る。そして刹那はいなくなった

12話で世界は「私だって誠の彼女になりたかった」と言った
確かに、誠が言葉と別れたのは乙女と関係した後だったため、世界が求める形での「誠の彼女」だった時期は、存在しないのかも知れない
ずっと「代用」的な位置という思いが拭えず、苦しんだのだろう

世界が誠との確執により学校を休んでいた期間は、学祭とクリスマスの間
出席日数が厳しいことから考えると、1ヶ月強くらいだろうか
すでに誠とは終わっている。それを世界が理解するのに十分な期間だ
本当に留年するなどして誠から離れられれば良かったのだが、妊娠が発覚してしまう

ただ、世界は妊娠により、やっと誠の彼女になれると確信したはずだ
そして学校に行く。世界を放置して性に溺れている誠は、まともに挨拶もできない

誠の現状は、光から仄めかされているし、世界の家にも来たがらないため明らかだ
だから学校で妊娠を宣言し、他の女を遠ざけた。学校生活や自分の立場を犠牲にして
これで誠の心は自分に戻ると思ったのだろうが…

皮肉なことにそれは、より誠を遠ざけてしまった。世界から逃げることしか考えられない誠。
さらに悪いことに、誠は、忘れていた言葉への想いと、言葉から寄せられていた愛情に気づくことになってしまう
世界は、このとき誠と言葉の情事を見たのではないだろうか

結果として、刹那に続き、学校での立場、誠、そして堕胎によって誠との子を失うという未来に至る
希望はもう無い。
なぜなら相手が言葉だからだ。邪魔する女ももういなくなってしまった
すべてを失い、追い詰められた彼女は凶行に及ぶ
あるいはせめて誠の子を堕胎から守ろうとしたのかも知れないが、それが語られることは無かった

…こんな考え無しな人間を、果たして策士と呼べるのだろうか?
やってることはいけないことだと知っていた。でも抗えなかった。

自己中なのは間違いないが、俺には、ただ素直な情熱を必死に傾けた、脆くて愚かな、かわいい少女にしか見えない
俺は世界のために涙した。

誠とじゃれ合う笑顔はしあわせそうで、とてもお似合いだった
でも誠でなくてもいい。楽しい未来を築くべき人だったと思う。本当、何度助けてあげたいと思ったか知れない



言葉は可哀想、という表現がぴったりだ
対人恐怖症から他人と壁を作るために友達がおらず、特に同性から嫌われている
そこまで陰湿ではないもののイジメを受けており、やっと出来た友人と恋人に裏切られる

が、言葉も誠との直接的な意思の確認は避け続けた。信じている、というのは言い訳であり、依存であり、逃げだ。
学祭前なら、まだ大きな傷は無かったはず

「私は誠くんの彼女です!」と強弁するも、図らずしてイジメグループの指摘の方が正しかったという事実がなお、言葉の哀れを誘う。怒りを覚えるほど上手い演出だ
そして望まぬ初体験、世界とのフォークダンス、誠からの別れにより、精神崩壊を招く

包丁を持ち歩く姿やエア携帯は狂気そのもの
言葉のグレーアウトした瞳から見る景色の中で、偶然出会った誠はどのように映ったのだろうか
一時だけ誠に救われるものの、すぐに世界によって、誠は永遠に失われる

誠の頭はヨットに持って行くためだろうが、屋上で世界が犯人であることの確認に使ったのには、寒気がした
しかしいや、言葉ならやるだろう。そう納得する演出の秀逸さは、もう恨めしい
世界の腹に関しては、もちろん世界の嘘と自分の正しさを証明する意図があるだろうが、それはたぶん「ホラ、誠くんは騙されていただけなんですよ」と誠に伝える目的があったのだろう

…狂おしいほどに、狂っている
狂っているのだが、愛するものを殺されれば狂いもするだろう。

言葉側の視点では、この惨劇を回避できたのだろうか
やはり、屋上で誠と世界の裏切りが発覚した後の早い段階で、誠と直接話をすべきだったと思う
あの時点では別れを告げられるかも知れないが、あんな状態を続けても余計悪くなるだけだ

しかし誠にも世界にも言えることだが、口で言うのは容易い
自ら進んで捨てられることを選ぶというのは、16歳、しかも依存症の言葉ではなかなか出来ることではないと思う

結局誠も世界も言葉も、この状態を明らかにすることを避け続けた
ハッキリさせられるほど大人ではなかった

どうしても3人がこのままの状態なのだとすれば…いっそ言葉も誠の子を孕むべきだったかも知れない
そうすれば言葉も世界も、譲らなければ両者産む選択になる
誠は二人以外の女から相手にされないだろうし、誠の性欲的にも悪くはあるまい
苦労はするだろうが、惨劇は回避できたと思う
うむ、これが唯一の解のような気がするなww

刹那による解決は誤りだったのだ
あくまで3人が自らの意思で決着をつけるべきであって、刹那が無理やり誠を言葉と別れさせたことによって、世界が重い女になり、言葉は精神崩壊し、誠が性に逃避するきっかけを作ってしまった
…まあ友達を思うなら、普通ああいう判断になるだろうし、あくまできっかけに過ぎず、刹那の責任ではないとは思うが

言葉の優しい笑顔、純情、包容力と可憐さ、そして一途な愛情には正直、やられっぱなしだった
俺が誠なら間違いなく捨てられない、そんな事はもっての他である

6話の商店街、誠の顔色に怯え、転ぶ言葉。12話の電車、誠の腕に顔を埋めるように、もう離れないようにと…
とても見ていられない。心が締め付けられるようだ。
言葉にも、しあわせになってもらいたかったと心から思う



しかしコメントを見ると引き合いに昼ドラが出ているが、単にドロドロ感が似ているだけである
賢い大人では、こんなある意味純粋な物語になるはずがない

また作品自体にかなり拒否感、嫌悪感を抱くコメントが多い
拒否感、嫌悪感自体はごく自然で当たり前、きわめて正常な反応だと思うが、この傑作に触れてそれだけで終わらせては、全くもったいない

この作品はリアルだから、拒否するだけの人は、俺には嫌な現実から逃げる誠と被ってしまう
自らの望む終わり方でないからと言って嫌悪するだけの人も同様に、自己中さが被る
まあ、12話は確かにやりすぎの感がある
こういったグロやバッドエンドを受け付けない人にはかなり厳しいだろう

でも、ちょっと観れば分かるが、これは観て楽しくなるアニメではない
だからそれでも最後まで観たのなら、拒否や嫌悪だけで終わらせて欲しくないのだ
この作品のメッセージ、教訓を受け取ってほしいと思う
嫌な思いを我慢してでも見るべき、非常に教育的な作品なのであるww

なお、グロやバッドエンドもストーリーがしっかりしていれば問題ない自分としては、我慢など微塵も無かった
見ていて「なんだコイツ?ほんと最っ低」と、誠への面白いほどのイライラ感、「そりゃ自業自得だわ」というラスト
秀逸だ

目が大きすぎるところや、部分的な作画の粗さ、世界の誠殺害はもっと説明が欲しかった、などちょっと残念なところはあったものの、それらを差し引いても、この完成度からすると些末といえる



この作品は悲劇なのだ
ここまで長々と改めて考えてみたが、大人がいない環境で、3人が悲劇を回避するのはかなり難しかったように思う

素直な情熱、抗えない欲求、思いやりのない自己中、誠意とは何かね
逡巡、踏み外した道、次々に失ってゆく大切なもの、依存、そして逃避、狂気
名曲の数々によって3人がいた頃がフラッシュバックする
これ以上の学園ものは、現状、自分が知るかぎりヨスガくらいかも知れない

自分は世界も、言葉も大好きである
あんなに人を好きになれ、情熱をぶつけられるのは羨ましい
二人を愛さずにはいられない

世界にガミガミ世話を焼かれたいし、困らせて叱られたい
言葉に手編みしてもらいたいし、離れないように腕に顔を埋められたい
二人に盲目的に愛されたい

しかし、けれども、そんな世界と言葉は失われてしまった
言葉はもし生きていても、人生は終わっている
二人をしあわせにできる誠もいない

心に空いた虚ろなこの喪失感は、歴史の中で古典となった後に評価される美しさなのかも知れない
語り継ぐ昔話の悲劇のように

投稿 : 2015/11/01
閲覧 : 345
サンキュー:

12

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