「甲鉄城のカバネリ(TVアニメ動画)」

総合得点
87.4
感想・評価
2068
棚に入れた
10010
ランキング
149
★★★★☆ 3.8 (2068)
物語
3.5
作画
4.1
声優
3.6
音楽
3.9
キャラ
3.6

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ムッツリーニ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

走るゾンビが好きな人にオススメ

久しぶりにちゃんとしたゾンビものを見た気分です。
近頃のゾンビものと言えば「がっこうぐらし」や「ハイスクールオブザデッド」や「これはゾンビですか?」等で、映画では「ゾンビランド」や「バイオハザード」や少し古めの所で言えば「28日後」等が有名ですが(邦画ゾンビ映画?知らんな)、まぁこの「ゾンビ」という題材は「バタリアン」を始めとして色々味付けがされ尽くしているジャンルで、喋ったり走ったり忍者になったりストリッパーになったりともうゾンビと聞くだけで食傷気味になるほどで、挙句「ゾンビVSゾンビ」なんてZ級映画も出る始末。いわば語り尽くされているジャンルな訳です。

ではこの作品はどうかというと、作風としては「28日後」にほど近い内容で、ゾンビ系作品において重要な「終末感」が冒頭でしっかり描かれているのが良いですね。
具体的にはゾンビではなく凶暴化ウィルスというのも「28日後」によく似ていますが、アクション性を高めるためなのかゾンビの心臓は鋼のように堅いという設定を付加してオリジナル要素を出しています。しかしこの設定がどのように生きてくるのかは不明ですから、一旦忘れるのが良いでしょう。
あと、学者タイプでありながら血気盛んなバイタリティ溢れる主人公というのは良いですね。世界設定的に当然の帰結ではあるのでしょうが、画面に一番映っていれば主人公とさえ言えるこの時期に、自分で物語を動かしていくタイプの主人公というのはかなり新鮮な気持ちになれますし、好感を覚えます。
ただこの系統の作品は往々にして話が同じ方向に行きがちなので、そこが少し不安ではあります。

最後に、この作品のジャンルはスチームパンクと言われていますが、蒸気を使っているのが列車と主人公の武器だけなので、スチームパンクの要素はほぼ無いです。
というかそもそもがスチームパンクは逸脱した蒸気科学文明を描いたSF作品群なわけで、この作品をスチームパンクと分類するのは無理があるかと。
あえて分類し直すなら、「バイオハザード」等のサバイバルアクションホラーの方が近いでしょう。

↓見終わって↓

上記ではこの作品は「28日後」に近いと言いましたが、完全に間違いでした。すみません。
ゾンビが合体したり、主人公が超能力使いだしたりするとか、これ完全にバイオハザード(ハリウッド版)ですね。続編があったら分裂するんでしょうか?
素朴な疑問は置いといて、作品の出来は悪くないです。
ゾンビ作品として基本は抑えていますし、見せ所もキチンとしていてちゃんと面白い。
主人公達が街に着く→何か事故か事件が起きてゾンビ大繁殖→街滅亡→主人公達は脱出→何度かループの後にボスっぽいの(ただの大群の場合もある)が出てきて倒す→俺たちの戦いは続く
という基本の流れは他のゾンビ映画でもお決まりのパターンで、良く言えば様式美。悪く言えばベタ。
ゾンビ系作品に対してよくある批判として、もはや定型文となりつつあるこの流れに飽き飽きしたというのがありますけど、他に考えられるエンディングってなんでしょうね?
全滅エンドか殲滅エンド? 前者はゾンビ3とかありますが後味が悪すぎるし、後者は知る限り見たことありません。なぜか? 不可能だから。
(え? バタリアンがあるって? あれは全滅と殲滅のハイブリットやし……)
そういう意味では解りやすい悪役を倒して一件落着的なエンディングは一番良い落としどころではあるし、だからこそ定型句として成り立ってきたわけです。
まぁ他にも「アイアムレジェンド」みたいに主人公が自爆して残された人は血清を持って安全な街に逃げるというエンディングもありますが、この作品では街もけして安全ではないと散々語られていますから、アイアムレジェンドと違って希望はないわけで……
それこそ「ウォームボディーズ」みたいにゾンビと愛を語らってみるとか? またまた冗談を。
そういう意味では私はこの作品に不満はないし、むしろ満足できました。
欲を言えば、悪趣味な笑いが込み上げてくるようなギャグっぽいシーンが欲しい。つまりゾンビ映画ではお約束の「アホな死に方をするゾンビ」が欲しかった。
あれってゾンビ映画の醍醐味でしょ? じゃない?

逆に不満があるとすれば、最後の「一番の悪は他人を疑う心だ!」みたいな説教臭いのはいらなかったかなと。
あといくら「スチームパンクだから」という言い訳をしても、さすがに完全に電気で動く物を出しちゃうのはダメでしょ。通信機とか。
そういうのを作るならせめて「チャールズバベッジの解析機関」みたいなよく解らんガチャガチャした物の方が「何かわからんけどそういうもの」っていう不思議な説得力が生まれたんではないかな。
それと元のゾンビを強くしすぎ&人間を弱くしすぎじゃないかなと。
主題のカバネリを無敵の超人みたいな位置づけにするために必要な設定だったんでしょうけど、「そもそもこいつら頭潰されれば普通に死ぬんじゃね? なんで頭狙わないん?」っていう突っ込みが入るのがいかんともしがたい。

総評としては、「ゾンビって付くだけでなにもかも許せちゃう作品」
ご都合展開とか、血飛沫がグロいとか、人の死に感情移入しちゃうとか、そういう人は見ないほうが良いです。
ゾンビ作品ってそもそも「どうにもならない状況でパニックを起こす人々やなんとか生き抜こうと足掻く人々をシニカルな笑いを込めて見つめる娯楽作品」な訳で、感動的な物語とかはなっから求めていない非常に悪趣味なジャンルですし。(求めていないだけで否定しているわけではない)
そういう意味ではこの作品は正しくゾンビアニメですし、私を含めた悪趣味な方々には楽しめる内容かと。
ただ、舞台が江戸末期(?)の日本なのと、劇中にたびたび顔を出すスチームパンク要素がほんとに謎です。
うーん、個性を出したかったのかな?

投稿 : 2016/07/04
閲覧 : 204
サンキュー:

4

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