「アルスラーン戦記(TVアニメ動画)」

総合得点
74.3
感想・評価
1087
棚に入れた
5920
ランキング
901
★★★★☆ 3.8 (1087)
物語
3.9
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

前半と後半ではテンポ感が違う

 原作は未読。
 魔法が出てきたりで一種のハイファンタジーではあるのだろうが、魔法を主体としたものでは
なく、あくまで人の力と頭脳を駆使したやり取りという点ではタイトル通り、戦記であり、
架空の歴史ものとも言えそう。
 前述のように本作自体は未読だが、他の田中 芳樹作品は幾らか既読。作品によっては
ファンタジーだったり、SFだったりと体裁は様々だが、この手の歴史ものは氏の得意技と
いった印象が強く、ストーリー展開自体は安定の面白さを感じる。
 主舞台であるパルスはペルシアをモチーフにしたようだが、敵対するルシタニアは
中世ヨーロッパの国を思わせる。そして、ルシタニアの宗教であるイアルダボート教は
キリスト教を、パルス遠征は十字軍をモチーフにしたようだが、攻められる側にイスラム教的
存在はないようで、世界観的には現実の歴史をそのままモチーフにしたのではなく、時空を
越えて色々な要素を組み合わせたものみたい。

 序盤にいきなりパルスの歴史的大敗から始まり、アルスラーンとダリューンの二人だけと
いう状態になるが、この辺からは一種の貴種流離譚といった趣きに。
 ナルサスを始めとする、徐々に集う仲間達という展開は王道とはいえ楽しいもの。またこの
キャラ達が非常に魅力的。
 ストーリー展開以外にもダリューンとナルサスの軽口のやり合い、ナルサスを巡っての
エラムとアルフリードの可愛い喧嘩、ギーヴの口説きとそれをいなすファランギースといった
キャラ同士のやり取りも楽しい。
 不幸にして流浪の旅をすることになったアルスラーンだが、この旅が学びの場となった
ようで、奴隷制を始めとする様々なことを考えて、成長していくアルスラーンが序盤の
頼りなさもあって、一層頼もしく感じられる。

 アルスラーンに敵対するルシタニアだが、イノケンティス七世を王としながらも、王弟
ギスカール、大司教のボダン、客将のヒルメスなど、それぞれが思惑があって一枚岩ではない
ところが興味深く、それぞれが悪役としての魅力を感じる。
 もっとも個人的にはボダンに関してはやり過ぎてギャグに映ってしまった感が強い。
 このボダンに代表されるように随所に描かれるのがイアルダボート教の融通の利かなさゆえの
残虐性などで、元ネタであるキリスト教が歴史上おいてこういった面があるのは確かだが、
ここまで露骨に、一方的にイアルダボート教のみを悪として描いているのを見ると、
田中 芳樹氏はキリスト教が嫌いなのかなと思ってしまう。
 イアルダボート教の熱心な信者としてはエトワール(エステル)が印象的で、それぞれの身分を
知らぬまま、何度もアルスラーンと接触することでアルスラーンの思考に好影響を与える
存在ではあるが、そのアルスラーンを変えた言葉の数々が自己矛盾しているところが興味深い。

 そして、アルスラーンのライバル的存在のヒルメス。
 先に悪役と書いてしまったが、ヒルメスと、彼に従う者達の血統としての王位の正当性と
いった考え方は、当時の倫理観としては決して間違っていないわけで、彼らは彼らなりの正義が
あるところが面白いところ。まあ、それ以上にヒルメスやザンデなどは私怨を強く感じて
しまうが。
 余談だけどザンデ役の森田 成一氏は本作放映時前後、このザンデ役以外にも「黒子の
バスケ」の灰崎 祥吾、「ベイビーステップ」の高木 朔夜など、逆恨みに近い感情を持つ
キャラが多かった印象が強い。

 他に印象的だったのは、中盤のシンドゥラでの中心的役割のラジェンドラ二世。
 何度もアルスラーンを騙そうとして失敗するも、懲りないところや抜け目ないところなどが
なんとも憎めない感じ。
 特に何かに秀でたところはなさそうだが、前述のような特性が結局、彼を王に
のし上げたのかなという気もする。

 前半部はじっくり描かれており、なかなかいい感じだったが、中盤以降はやけに駆け足に
なった印象で、原作未読でも随分とはしょられたのが判るような展開。
 あとで知ったが、後半はアニオリ色が強いみたいね。
 そのために話の整合性は幾分無理が出てきたようで、キャラの性格や行動にもブレを感じる
ようになった。
 話を早く進めるためか、ダリューンを始めとする猛者の一点突破色が強く感じられたが、
その分ナルサスなどの知略などは薄れてしまった感がある。

 作画はやけに気合いが入ったところと、手抜きとしか思えないところの格差が激しかった。

投稿 : 2017/06/12
閲覧 : 285
サンキュー:

8

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