「聲の形(アニメ映画)」

総合得点
88.8
感想・評価
1496
棚に入れた
7401
ランキング
96
★★★★★ 4.1 (1496)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

文葉 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

気持ちを伝える方法は声だけじゃない。人の本当の気持ちも本当に大切なこともきっと目に見えないし、聞こえないのかもしれない。

原作は未読です
題名の”聲の形”の「聲」という字は、声と手と耳が合わさっている。
”気持ちを伝える方法は声だけじゃない”という意味を込めて「聲」にしたとか。

映画の上映前のCMで見かけて、これは重い内容だろうなと思い中々観るのに勇気が入った。
一人で観に行こうとしたら風邪をひいてしまい、延期していた時に思い切って友達に声をかけてみると好反応だったので一緒に観に行きました。

聴覚の障がいといじめ、人間関係、そして恋。
2時間にぎゅっと濃縮されています。
映画館で席を見渡すと、年齢層は様々でカップルもそこそこいて、小学校低学年位の女の子達もポップコーンを手に持って座っていました。
上映する劇場が少ないせいか、人気なのか座席がいっぱいだったので事前に良い席のチケットを取ってて良かったなという印象です。

作画はさすが京アニだなと思う程に素晴らしい。
繊細で一つ一つが心に突き刺さります。個人的に好きなのは雨の描写と涙の書き方。

感想

{netabare}The WhoのMy Generationから始まるイケイケ悪ガキ3匹のOPから心は掴まれましたが、前半のいじめ描写から頭をずっと両手で抱えてしまいました。
補聴器って、めちゃくちゃ高いんだぞ・・新聞広告で値段見たぞ・・というくらい補聴器が壊され、耳から血を流すシーンは”取り返しのつかない事をした”という感じが伝わりゾワッとしました。

石田母が補聴器代170万を持って謝罪に行くシーンで
血みどろで戻ってきて耳のピアスが引きちぎられている部分を見て、
いつか、自分の息子や娘が出来たとして、今までなかったとしても自分が、家族がいつ、いじめる側、いじめられる側になるかわからないと、思いました。

個人的に西宮母が印象に残っています。生い立ち等はwikiを見ないと分かりづらいですが、せめて他の子のように普通に学校に通わせたいという気持ちと、陰湿ないじめを受けているのは薄々感じていてもいつまでもそばにいることは出来ないから、なるべく本人が解決できるように関わらなかったのだろう。仮にお腹痛めて産んだ自分の娘があんな風にいじめられたらすかさずお礼参り(色んな意味で)でしょうね。

自分の娘をいじめた(あの教師が押し付けたのとクラスメイトも悪いですが、)将也が再度関わってくるのと、家でBirthdayケーキ作ってたら嫌というか、なんかヤクでも混ぜたのではないか・・とかよく知らないからこそ疑いますよね・・・。
以前よりやつれた雰囲気とぶっきらぼうながらも、自分の子には弱い姿を見せない母の姿として共感しました。
後に将也の事を受け入れて、自殺騒動で今度は石田母に謝りに行き、いつの間にか仲良くなってサロンで髪を切って貰ってる姿がシュールというか・・(笑)

ブロッコリーみたいな髪型の永束くんがめちゃイイキャラしてて
見てて思わず フッと笑ってしまいましたが、私が笑うと釣られるのか上映会場中笑ってましたw
中には、”あるシーン”で遠くの端の方の席かな?
驚きすぎたのかポップコーンごと落としてました。

観終わった後、一人じゃなくて友達と来て良かったなと思い、
観ながら自分の過去を思い出しとても辛くなってしまいました。

初めて一緒にお出かけした職場が一緒の中学同郷の友達。
中学時代はグループ抗争や私の家庭の事情で学校に行かない時期が多くすれ違ってしまった。
こうして一緒に過ごせたのが嬉しくて、でも映画は重く辛い内容だったね。だけど一緒に観れて良かったねと席で語り合いながら
パーっと気分転換にメシでも行こうか!とお互いの昔話に花を咲かせていました。
{/netabare}

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確かに誰かをずっと憎んで生きるよりかは、許して意識から手放す方が生きるのがラクだと思う。

異質な存在だから、好奇心で反応が見たいから、すごく嫌なはずなのに反面、本当は仲良くなりたいから。だけど、どうしたらいいのかわからないという思春期の葛藤といじめを随分と生々しく丁寧に描いていると思う。

散々いじめて取っ組み合いの喧嘩をしてぶつかりあい、机に落書きされたのを必死に消そうとする硝子の優しさ。そこに気づいた時点で将也は贖罪の感情と淡く小さな恋の感情を両方感じたのかもしれない。
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川に潜って硝子のスカートの中が見えそうになった時や勢いで手を取ってしまった時の反応を見ると、異性に慣れてないというよりか硝子を異性として意識してるように見える。

果たして、硝子が将也に恋をしたのはいつだろう。


たぶん、初めて気持ちをぶつけて喧嘩した時点で恐怖と好意を両方持っていたのかもしれない。
将也の贖罪の気持ちと変化。パンを持って訪ねてくる姿(これがめちゃ可愛い)
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植野からも障がい者としてではなく、恋敵と見られるところは、
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将也を看病したり、硝子に”バーカ”と手話で伝えたのは不器用な彼女なりの気持ちだったのだろうか。

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思春期で照れくさいのか、手すら繋がず先に歩いてく将也を追う硝子が可愛い。
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将也は硝子の気持ちに気づいていない。そして自分の気持ちにも気づいていない。
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そう考えると、EDの原作ファンのaikoさんの新曲「恋をしたのは」が硝子の感情を表してるのなら案外的を得た曲かもしれないと思った。{/netabare}


生々しく、良くも悪くも人間らしいキャラクター達から”人は鏡”と見せつけられ、貴方ならどうするのか?と疑問符を投げかけられたかのような気持ちです。
正直、もう一度観たいか?と聞かれたら頭を抱えてしまいます。
感動したか?面白いか?と聞かれたら、確かに感情移入して涙が出る場面はあるけれど、娯楽映画ではないと言います。
また何年かして、誰かと一緒なら見返したい。
今も、「君に、生きるのを手伝ってほしい」と言うフレーズを心の中で振り返っています。

気持ちを伝える方法は声だけじゃない。人の本当の気持ちも本当に大切なこともきっと目に見えないし、聞こえないのかもしれない。
それでも、寄り添ってみたいな。
人を、可能性を信じてみたいなと思える映画です。

投稿 : 2016/10/18
閲覧 : 374
サンキュー:

52

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