どらむろ さんの感想・評価

3.7
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

ホラーバトルだけど完全ギャグ寄りな紙芝居。豪華声優の一人芝居が凄ェ！

原作は2002年から連載され続けているホラーバトル漫画で、（一応）真面目に吸血鬼相手に死闘を繰り広げる…のですが、長期連載の間に、独特過ぎる作風が読者からギャグと取られ、色々なネタが派生していった…
このショートアニメはそんな彼岸島の（ネット民による）ギャグ面、ネタ面を全面に押し出して完全に笑わせに来てます。
…速水奨さん→千葉繁さん→関智一さん→山寺宏一さんが3話ずつ一人芝居、その演技力とシュールさも笑い所ｗ

「みんな！丸太はもったな！」「灯油あったよ！→でかした！」
原作のネタ的な側面を知っている方が笑えますが、そうでない人も「スプラッターやホラーを、無双ギャグで茶化す」芸風を面白いと思えるならば。
…無論、グロ注意です。

{netabare}『物語』
一年中、彼岸花が咲き乱れる孤島、彼岸島。
この森と海しかない島は、血液感染する不可解な病気により、凶暴な力を得た吸血鬼たちが支配していた。
生き残った人間たちは、吸血鬼壊滅を願い、果てしない戦いに挑む！
（冒頭ナレーションより）
…まあ、ウソは言ってないです。実際、残虐な吸血鬼たちによるスプラッターホラーや、死闘を演じるバトル漫画なのは事実ですから。

アニメとしての作風は「ニンジャスレイヤー・フロムアニメイシヨン」っぽい。
主人公の宮本明は完全に吸血鬼スレイヤー＝サン。
丸太一本で吸血鬼どもを蹴散らす様が実にシュール。
…原作では別に丸太だけで戦ってるわけでも無いのですが、長期連載中に読者からは「丸太こそ最強兵器」な感じのネタに昇華されてしまい、ギャグと化してしまった。
「みんな！丸太は持ったな！行くぞォ！」「凄ェ！なんて丸太だ！」
この他にも、長年の連載中に読者が（ネット上で）ネタにしてきたシュールな迷場面（作者の松本光司先生は大真面目にホラーとして書いているし、連載中は実際違和感感じない）の数々が、完全ギャグ寄りに再現されてしまっている。

（○○を探している）「○○あったよ！」「でかした！」というご都合主義と様式美
「森と海しかない孤島」のハズなのに、連載が進む程にオーストラリア大陸か！？と思う程拡大していたり。
吸血鬼の血飲むと感染して危ないのに、すぐそばの川上に吸血鬼死んでいるのに川下で水飲んでしまったり（気付けよ！）
この他にも原作独特のコマ割りや擬音の使い方のシュールさ（明の刀が折れて、刃がクルクル回転→足にプスッと刺さったり）
…ここら辺文章にしても面白さが伝わらないかもですが、「作者が大真面目に怖くて緊張感のある場面」として書いているはずなのに、結果的に（ネット上の）シュールネタになってしまう、稀有な事例なんですな。

これらツッコミ所満載のスプラッターギャグに加え、ベテラン声優の一人芝居が醸すシュールな可笑しさ、雑魚吸血鬼の死亡フラグ発言→明さんが即回収などのスピーディーなコント等々でも笑わせてくれる。
極めつけは明とラスボスの雅（ミヤビ）の一騎打ちを、人間・吸血鬼の敵対陣営が仲良く観戦（お前ら敵同士だろ！）

…総じて、長年読者からネタにされてきた迷シーンは大体盛り込んできた感じでした。
読者側が育んだネタ方面に全振りしてギャグアニメに仕上がっており、声優の熱演も相まって、笑えます。

※余談、原作は決して単なるギャグ漫画ではない
私は連載当初からずっと追ってますが、彼岸島は名作漫画です。
実際凄く怖いし、凄く残虐だし、悲しさや感動的な名場面も多々あり。
ネタにされがちな諸要素も、普通に読み進めると違和感は無い…いや、無い…？
このアニメを観て、あるいはネット上のネタだけを見て「彼岸島はギャグ」一辺倒な評価には賛同できない。
…まあ、良くも悪くも、長年愛されている作品なのです。


『作画』
「ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨン」路線の紙芝居です。
まあ、ちゃんと彼岸島らしさ（主にネタ方面）はバッチリ。
ニンジャスレイヤーよりも潔くギャグ特化なので、これでも許される。
構図で完全に笑わせに来ている点は凄ェ！


『声優』
本作最大の見所。
はやみんファン的にはやはり速水奨さんがベストでした。
明も雅も雑魚吸血鬼も雑魚村人も、そして女性や女の子も…色っぽい！
「昭和元禄落語心中」の石田彰さんの女役も見事でしたが、速水さんもヒケを取らんです。

千葉繁さんは、吸血鬼が北斗の拳のモヒカンっぽくてナイス。
師匠の貫禄も良かったけれど、明はややイメージに合わない。

関智一さんの明が一番カッコ良かったかも。やはり演じ分け凄い。

山寺宏一さん、ラストは圧巻の50人演じ分け！
声優のエンドロールが山寺宏一で埋め尽くされるｗ
「昭和元禄落語心中」の助六も、その気になれば菊比古師匠（石田彰さん）を上回る女役が可能だったのか…
いや、助六の女役も実際凄かったですし。

…5点満点でも良いのですが。千葉繁さんはやや苦しかったかも。
明、関智一さん　雑魚、千葉繁さん　師匠、山寺宏一さん　雅、速水奨さん
のオールスターがみたい！


『音楽』
BGMがそれっぽい感じ。


『キャラ』
やはり明さんは凄ェ！流石は明さんだ！
丸太強ぇーぞ！丸太一本で無双しまくります。
（ネット界隈では）代表的な無双主人公の一人だったり。

雅や師匠などキャラ濃いのですが、それよりも雑魚吸血鬼や雑魚村人の方が印象的だった。
尺の都合で、隊長など魅力的なキャラの出番殆ど無いのが残念。{/netabare}