「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~(アニメ映画)」

総合得点
67.1
感想・評価
153
棚に入れた
575
ランキング
2526
★★★★☆ 3.5 (153)
物語
3.3
作画
3.8
声優
3.3
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

近未来技術のプロジェクトX的な技術者の夢を題材に、ジブリっぽい活劇を「ヒロインがアグレッシブ」に見せてくれるSFファンタジー

「攻殻機動隊」や「精霊の守り人」「東のエデン」を手掛けた神山健治監督のオリジナルアニメ映画です。
岡山県倉敷市の女子高生が「昼寝」して「夢の中の物語」と「現実の陰謀事件」がリンクする形で活劇していく…
ファンタスティックな一方で「自動車の自動運転技術」という現在進行形の技術開発を題材にしたSFとしても優れている。
王道で分かり易く、適度にハラハラ、父と娘の家族愛、躍動感ある展開など、110分飽きさせぬ良作でした。

配信時期が近い「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール」と並び、「現在進行形の近未来技術」を夢見させてくれる、面白いです。

{netabare}『物語』
平凡な(というか精神的に結構しぶとい)女子高生・森川ココネが、悪者の陰謀に巻き込まれるけれど、「昼寝して夢の物語中で魔法使う」&「現実では幼馴染の大学生モリオの協力+アグレッシブな行動力」を駆使して元気に立ち向かっていく。
舞台が2020年(東京オリンピックが近い)の倉敷で、悪者の陰謀は「自動車の自動運転AI」に関わる等、「ジブリ的な王道ヒロインを現実路線でやっている」感じ。
けれどココネちゃん、自力で突き進む強さとそれを可能にする力に説得力があって良かった。
狙われるヒロイン、何となくルパン三世辺りのゲストヒロインにありそうなストーリーなんですが、そこに「昼寝の夢の世界の力」と「現実での自動制御技術」をフル活用して、ヒロイン自身が頑張って道を切り開いていく。

夢と現実が連動していく摩訶不思議な展開で最初戸惑いますが、基本ストーリーは結構王道で分かり易い。
夢の世界「ハートランド」は自動車産業が高度に発達し過ぎたディストピア、ここでの寓話により「機械と人間らしさの在り方」とか「自動制御AIの可能性や夢」をファンタスティック活劇に絡めて見せつつ…

現実パートでも自動車の自動運転制御技術絡みの陰謀である事や、ココネの素性や両親(と大手自動車産業の会長)の秘密などが、次第に判明していく。
夢世界の寓意も決して分かり難くはなく、ごく自然と事件の真相が分かってきて飽きさせない。
悪党な渡辺も現代日本の企業重役に過ぎず、あんまりムチャな暴挙(銃撃したりとか組織力動員したりとか)は出来ないのも、昼寝と自動AIはあれど平凡な女子高生(と男子大学生)がムリなく逃避行しつつ適度な緊張感と呑気さ両立していた感じ。

呑気で真っ直ぐなココネが「渡辺から逃げる」→「父を助ける」過程で、過去の両親の絆、自動運転技術開発にかける夢、ロマンスと家族愛に繋がっていく。
東京オリンピックという直近の近未来に向け、現在進行形で技術者たちが夢見ているであろうセカイの一端を垣間見せてくれる。
終盤に向けて夢世界も現実も活劇が加速、高所に飛び乗ったり飛び移ったりのジブリ的な大活劇の末…
しっかりと家族の絆を感じさせる大団円で後味も良かった。

奇抜に見えて案外王道で安定感ある良作なんですが、難を挙げると…
ヒロインと男の活劇な割に、ラブコメの波動やドキドキ感はやや薄かった。
抜きん出て盛り上がったり感動する程の名場面はあまり無い。
…ただ、それでも終始面白かったし、ココネちゃん特有のキャラと雰囲気が良い塩梅、本作特有の良さに繋がっていた。


総じて、夢のファンタスティックな世界観も面白いのですが、それ以上にSFとしても良かったです。
「心根一つで、人は空も飛べるはず!」
ココネちゃんが多用するキャッチフレーズにも込められたテーマも、自動運転AIへのポジティブな夢や憧れを感じさせてくれてよかった。
最初こそ夢と現実の交差に戸惑うものの、次第に分かり易く真相が判明して行って終始飽きさせず、良質なテーマと家族愛も素晴らしかったです。

…「ココネの夢は結局何だったのか?」
最後まで謎のままなのですが、色んな解釈ありそう。
別の方の見方ですが「攻殻機動隊的なSF要素」とか、色々な仮説があるっぽい。
私はあまり深く考えず、物語の都合とか、父と母の夢の物語をココネちゃんの深層意識が覚えていたのかな?とか、まあ理屈はどうでも良いです。
メタ的には、現実の自動運転技術の可能性への挑戦の意志、自動AIへのポジティブな夢を、寓話で見せてくれたのだと解釈。
テーマは「心根一つで、人は空も飛べるはず!」というフレーズや、クライマックスで、AIに過ぎぬハズの自動運転車が、まるで自分の意志を持っていたかのようにココネを救ってくれたシーンに象徴されている気がする。
※余談ですが同時期放送中の「けものフレンズ」のボスとも重なるかも…
本作のテーマは機械知性の在り方、というわけでは無いのでしょうけれど、もしかしたら…という夢と憧れをちょっぴり感じさせてくれるのも魅力だと思う。
「優れたSFはファンタジーと見分けが付かない、逆もしかり」
本作は一見ファンタジーだけどSF、そしてやはりファンタジーでもあり、そのどちらも良かった。

※余談
「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール」の「仮想現実・拡張現実」に対し本作は「AI、自動運転技術」
どちらも現在進行形で発展途上の近未来の夢の技術です。
2017年のアニメ作品がそれぞれ題材にして近未来への可能性を夢見させてくれる、これは後世振り返って意味のある事かも知れない。

※余談2
「飛び降りる宮崎駿、飛び降りない押井守」
とある方の論説で両監督の作風の違いを的確に指摘されておりますが。
神山健治監督は両者の中間だったように思える。
クライマックスでココネと父が高所落下→助かる過程で、ショッピングセンターの垂れ幕で何度も減速する描写など、怪我せず助かる説得力を感じる。
でも押井監督よりはファンタスティック。
神山監督も攻殻機動隊を手掛けた方、ここら辺のコンセプトも注目して見ると面白いかも。


『作画』
ココネちゃんが美少女とは言い難いのは残念。
十分可愛いし、平凡な女子高生らしさは良かったかも。
でもヒロインは美少女なのに越したことはない…
夢の世界描写、大迫力のバトルシーン、高低差でハラハラさせる活劇など、劇場版として引き込まれるに十分な魅力あり。

『声優』
俳優中心だが概ね配役は良かった。
ココネ役の高畑充希さん、方言もバッチリはまっていた。
モリオ役の満島真之介さんは、まぁまぁ。キャラには合っていたのでは。
古田新太さんの悪役っぷり、高橋英樹さんの頑固老会長など。
江口洋介さんの父親役が一番良かった。渋い。
…俳優陣に混じって本職の釘宮理恵さんは一発で分かる♪

『音楽』
ココネ役の高畑充希さんが、60年代アメリカのポップス「デイドリーム」をカバー。
本作のテーマにしっかり合致していて良い感じの余韻ありました。


『キャラ』
森川ココネちゃん、呑気だがアグレッシブなヒロインでした。
大企業の会長の孫という、現実でもある意味お姫様であった。
メンタル強い。「どこにでもいそうな普通の女子高生!」※いません。
…半ば夢見る強メンタルが独特な魅力ありましたが、難を言えば普通の少女では無かったような。
エンシェン姫はかなり可愛かった。
マスコットのジョイはプリキュアのマスコットばりに健気であった。くぎゅぅぅ。

モリオは「君の名は」だと勅使河原ポジのヒロインお助け役。
近年のテンプレになりつつある感じ。
彼もまた強メンタル、順応性高くスムーズにココネをサポートして活躍。
見所は夢の世界でも冷静に対応するシーン。中々面白い男だった。
…ただ、便利キャラの域を出なかった感も。
クライマックスでココネ助けるのはココネ父ではなく、彼の役目だろうに。

渡辺は定番の悪役、序盤から分かり易くって良い。
権力も実力も限定的なので小物ではありました。

父がワイルドでカッコ良い。モリオより断然主人公っぽかった。
技術開発にまつわる母とのロミオとジュリエット、ステキです。{/netabare}

投稿 : 2017/03/23
閲覧 : 344
サンキュー:

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