「メアリと魔女の花(アニメ映画)」

総合得点
67.1
感想・評価
143
棚に入れた
651
ランキング
2526
★★★★☆ 3.5 (143)
物語
3.2
作画
4.1
声優
3.3
音楽
3.5
キャラ
3.3

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

魔法ファンタジーなのに魔法に夢が無い為か、ワクワクが萎んじゃうのが難

「借りぐらしのアリエッティ』」と「思い出のマーニー」の米林宏昌監督の、ジブリ退社後の初監督作品、上映時間102分です。
原作はイギリスの児童文学で、ジブリっぽい魔法冒険ファンタジー。
(ジブリ作品では無く、スタジオポノック作品)

11歳の元気な女の子が前向きに頑張るファンタジー活劇としては、ジブリっぽいハイクオリティーで102分間飽きさせない見事な内容ではありましたが…
本作の「魔法」に込められた思想が後ろ向き過ぎて、なんだかガッカリ。
…内容自体は普通に良く、不快さも少ないのですが、正直、好きにはなれない作品でした。
(否定寄りレビュー)

{netabare}『物語』
赤毛(コンプレックスある)でドジっ子なメアリちゃんが、魔法の国のアイテム「夜間飛行(という花)」ゲット、それをきっかけに、魔法の国に関わる陰謀に巻き込まれてしまい、それでも魔女の力で元気にがんばるのだった…

原作がイギリスの児童文学らしく、古き良きイギリスの田舎の雰囲気がまず魅力でした。
霧が出たり、森に入るのは危なかったりも、イギリスらしい。
優しい大叔母シャーロット、やはり優しい家政婦のバンクス、ドシばかりだけど礼儀正しいメアリちゃん等々の優しい世界も良い。
良い意味で児童文学っぽい雰囲気は好感触。

ジブリっぽさは、むしろ好意的な要素。私はジブリっぽいのは好きだし、テンプレラノベ石鹸枠も大好物ですし。
良き王道お約束に何の問題も感じない。

冒険は完全巻き込まれ型。
大叔母様たちが優しい世界だけど、現実に微かな不満あり、夜間飛行ゲットをきっかけに、魔法の非日常の世界に…
巻き込まれ、非日常のピンチに必死に付いていく感じ、ワクワク感はやや乏しいけれど、ハラハラドキドキ感は十分、丁寧な描写もあり、物語には終始引き込まれたです。

ハリッポッターやリトルウィッチアカデミアっぽい魔法学校展開か…?
と思いきや、調子に乗ってたら、実は陰謀の陰が…!
…本作で一番面白かった場面が、メアリちゃんが夜間飛行補正と悪運で無双しちゃう流れだった。
ここでもっとメアリちゃん調子に乗った暴走が見たかった。(アッコみたいな)

以降はひたすらシリアスに。
ヒロイン(男の子のピーター)囚われ→乗り込めー!の王道展開。
不屈で聡明なふたりが力を合わせて危機を乗り越える活劇は、中々良かったです。
伏線回収(キーアイテムの魔法の本の使い方)も上手い、ふたりが互いに出来る事を駆使しての逆転劇はお見事でした。
ラストは「日常→冒険→日常に帰る」児童文学の王道ファンタジーらしい良いラスト。
王道冒険ファンタジーとして非常に安定感あり、普通に面白かったのは確かです。


以下否定的な感想
根底に感じる「魔法」への否定的な想い。
メアリにとっての魔法は、偶然巻き込まれたトラブルで得てしまった戸惑い、迷惑感の方が大きく、魔法に対する楽しさが乏しい。
魔法学校も、入学案内での楽し気な描写以外では、悪者に追われたりボーイフレンド囚われちゃう、メアリにとってはイヤな場所でしかない。
箒で飛ぶのはそこそこ楽し気だけど、前半振り回されて戸惑う、後半ピーター救う為必死と、楽しむ余裕が無い。
極めつけは「魔法なんていらない」という終盤のセリフ…
趣旨やテーマは分かりますけど…
えぇー…魔女ヒロインがそれ言っちゃダメでしょう…。夢もキボーもないわ…
某落ちこぼれ魔女見習い「信じる心があなたの魔法!」みたいな、魔法って楽しい♪ワクワク感が無いのは、魔法ファンタジーとしては悲しいです…。

悪者の魔法実験を通して、魔法=人が扱うべきではない怖い力の象徴?
男の方は科学も専門、科学妄信への風刺(変身魔法はバイオテクノロジー?暴発は原発かも?)が、かなり露骨に感じられる。

それ自体は別に悪いテーマではない。
ジブリだって、ナウシカやラピュタ、もののけ姫など、大概が似た路線…でも、これらは同時にワクワク感や浪漫もバツグン。
本作が微妙なのは、否定すべきネガティブなモノを「魔法」に込め、主人公はその魔法を使い、否定する、これでは魔法ファンタジーとしては楽しくないじゃないか…
例えば、悪の組織の陰謀を、メアリが魔法楽しく使って阻止する!みたいならともかく、悪に自身の魔法も含まれてるのは悲しい。
ラピュタはパズーがラピュタに憧れワクワクの大冒険、本作はとばっちりで仕方なく頑張った印象。
…それとボーイミーツガールのドキドキ感も足りない。
そこは児童文学的なお行儀の良さだから仕方が無いのかも。

総じて、魔法ファンタジーなのに、魔法の楽しさ否定する、後ろ向きなお話でした。
私がジブリっぽいファンタジーに期待する要素は「ワクワク」や「浪漫」なので、それに水を差すような思想の作品は、楽しくないです。
…本作が厄介なのは、内容自体は普通に良いところ。
良質な児童文学としては非の打ちどころが無く、ジブリ路線の作劇もハイレベル、102分飽きさせないだけの良さはあった。
なので良作か駄作か?と問われると、良作寄り(なんだろうなぁ)、否定的なのは私の好み(ジブリの旧作みたいなボーイミーツガールでファンタスティックにドキドキワクワク大冒険!)に根底の部分で相反するから。
足りないのではなく、ここまで徹底的に相反する作品は、中々無いです。


『作画』
流石に見事。古き良きイギリスの美しい風景や、魔法の壮大なファンタジー感、アクションも中々。
アニメーションの魅力が、王道的な展開を飽きさせない力あり。
キャラデザは萌えないが、作風に合っているのでまぁ良し。

『声優』
杉咲花さん初め、本職声優ではない俳優陣、配役は作風に合っていたです。
神木隆之介さんは流石に本職並みの安定感。

『音楽』
主題歌はまぁまぁ?
BGMや音響は流石の劇場版クオリティー。


『キャラ』
全般に児童文学的な優等生な印象。印象は薄いけれど、良キャラは揃っている。
メアリちゃん、ドジっ子だけど非常に良い子。もっと「あざとく」ヤンチャさが見たかった。

ピーターはやはり優等生的なジェントルマン、知恵も勇気もあり頼れる。
優等生過ぎて印象はそこそこ。

保護者の老女ふたりは大らかで優しい理想の大人たち、帰るべき場所が優しい世界なのは和みます。

黒猫のティブは喋らないけれど、結構印象的。

マダム・マンブルチュークとドクター・デイは悪党というより、求道者的なマッドサイエンティスト。
マダムは悪い魔女としての怖さと脅威中々でした。

箒の番人・フラナガンさんが印象的、テンドンなセリフでいつも味方してくれる。
…変化への否定と見てしまうと、やっぱりネガティブなんですが、これくらいなら、良き教訓として丁度いい。

MVPは、箒君でした。
よくがんばりました。{/netabare}

投稿 : 2017/07/12
閲覧 : 264
サンキュー:

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