「もののけ姫(アニメ映画)」

総合得点
90.5
感想・評価
2047
棚に入れた
13281
ランキング
52
★★★★★ 4.2 (2047)
物語
4.2
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

四文字屋 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

もののけ姫は、宮崎駿氏の監督作品における、紛うことなき最高傑作であり、日本のアニメーション作品のひとつの到達点であることは疑いようのないところで、

「未来少年コナン」でアニメの演出をスタートして以来、
一貫して追い求めてきた、
Boy Meets Girl の幸福なあり方と、
日本型社会主義の実現した姿と、
自然回帰による人類と地球との幸福な共存を、
ずっと夢想してきた宮崎駿氏が、
人類と社会のあり方について、
それまでの人生を通じて結論づけた物語が、
ここにあります。

もののけ姫を制作するにあたって、
宮崎駿氏は、
男性と女性の幸福な婚儀は幻想にすぎず、
社会制度は人間個々にとって有益な存在たり得ず、
自然と人類は根本的には共生できない、
という冷厳な現実を、
自身の精一杯の残虐性描写によって提示しました。

自然と、自然に属する霊的な存在の描写は美しくかつ恐ろしく、
人が、同じ人同士で差別し合い、反目し合い、戦い殺し合う様は
息を飲む迫力に満ちており、
時代のうねりの中で苦難に打ちのめされながらも己を全うしようとする
サンとアシタカの姿は崇高に映ります。


宮崎駿氏は当時、この作品をもって、
アニメ映画の演出からは引退すると公言していたし、
実際そのつもりであったのだろうからこそ、
ここまで痛烈に、文明批判と
人類の進化の否定を明示できたのだろう、と思います。

実際に作品の中において、
アシタカとサンは幸福な家庭を築くことは叶いませんし、
自然という貴重な存在の象徴であるデイダラボッチは滅してしまいますし、
それでも再生しようとする自然を前に、
人類は、文明の進歩という歩みを停滞させることは出来ないのです。


これは、諦観ともとれる、宮崎作品のひとつの到達点にして、
宮崎駿氏の人類に託した遺言ともいうべきものです。




ここからあとは、作品についての言及ではありません。
{netabare} しかし、この作品が未曽有の大ヒットをしてしまったために、
宮崎氏が望んでいた引退はかなわず、
すべてを出し切ってしまった宮崎氏が、そのあとは、
それまでのアニメーター人生で蓄積してきたおもちゃ箱から
ガラクタを引っ張り出しては駄作を連発しながら、
興行成績だけは無遠慮に絵空事のように亢進して行き、
経済的には成功するという悪循環に陥っていったのは、
まことに皮肉なこととしか言い様がありません。{/netabare}

投稿 : 2017/12/07
閲覧 : 362
サンキュー:

27

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