「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(アニメ映画)」

総合得点
69.0
感想・評価
462
棚に入れた
1771
ランキング
1873
★★★★☆ 3.3 (462)
物語
2.9
作画
3.9
声優
2.9
音楽
3.7
キャラ
3.2

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ネタバレ

M.out さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

これは不意打ち

 これがシャフトなのだろうか。
 普通の魔法少女モノだと思って見たら不意打ちを喰らうまどマギのように、君の名は。と同列の作品だと思って見ると楽しめないかもしれない。
 あれだけ君の名は。に似せた宣伝をしておきながら、エンタメ性をほとんど振り払ったようなその内容に驚かされるばかりであった。
 内容は極めて単純に「駆け落ち」の物語だ。
↓勝手な解説
{netabare}
 ヒロインの「なずな」はかなり成長している。典道や祐介なんかよりも身長が高いし、教室で生徒がふざけていても(先生へのセクハラ的な行為など)にも、一人笑わないでいる。笑わないのは成長しているから、だけでなく複雑な家庭事情があるのかもしれないが。とにかく、「同級生よりも少しだけ精神的に大人になっている存在」として描かれているのは確かだ。

 大人になるとはどういうことか、というと「自分の意思による選択と行動」が可能になるということだろう。これは私が勝手に思っているわけではなくて、本作を見ていて思ったことだ。友人は何故、祐介がなずなに花火に誘われたのにあんな行動をするのか分からない、と言っていたが、それは子どもだからである。子どもだから自分の感情に従えない、子どもだから行動ができない。よく好きだからいじめてしまう、とかそういうのを聞くが、この時の祐介はその類の反応を見せている。

 しかし、なずなも完全に大人に成り切れているわけではない。プールのシーンで「どちらか勝った方を花火に誘おうと思った」ということを言うわけだが、こういう理由を作って行動を起こさなければいけないところを見るに、まだ子どもである。
 そんななずなは家庭事情的に複雑で、逃げてしまいたいと思っているし、親に縛られないようになりたいと思っている。こんな感情も大人になりかけている持っているのかもしれないが、まだ子どもであることを自覚しているため、完全に成し遂げることは出来ないと分かっている。大人に成り切れてない故の悩みがここにはある。

 ここで、ようやく主人公、典道である。典道はなずなが好きである。だから、なずなの境遇が悪くなる度、ガラスの「玉」みたいなのを投げて時間を巻き戻して、オール・ユー・ニード・イズ・キルみたいな、リゼロみたいな、試行錯誤を始めるのだ。その中で、選択を迫られる。駅のホームのシーンが印象的だろう。親に取り押さえられるなずなを前に、耳を塞ぎ、目を閉じる典道。こういうイベントを乗り越えて後半に向けて成長していくわけだ。
 
 ここからは余り自身がないのだが(上記の説明も十分に間違ってる可能性あります)典道はイフ世界を体験する中で、自身の行動次第では在り得たかもしれない可能性があることを知った。これは今後の行動次第でどんな世界にも行くことができる、ということでもある。それは「行動すること」の肯定であり、大人への成長を促したと思う。典道に限らず、「玉」を酒飲み花火師によって打ち上げられ、弾け飛んだときに降った欠片は、その一つ一つがあったかも知れない世界であり、それを見た人達も救われただろう。特に祐介は。なずなと結びつくことができる未来があった、という救いである。
 話は典道に戻るが、だから最後教室から消えるのだ。降った欠片の中で、典道が掴んだのは「駆け落ち」をした後の未来であったから、駆け落ちした説が自分の中では濃厚なのだが、どうでもいい。
 明示しないことで、二人の可能性を示す。これがラストシーンではないかと思う。

さらに、だ。「別に花火の形なんてどうでもいい。私はあなたと居られればそれでいい(意訳)」というなずなの台詞は自由になりたいことの告白だ。誰が見ても花火は丸い。どこから見ても花火は丸いのだ。しかし、現実でないイフにおいて花火は奇怪な形状を見せる。しかし、なずなは「花火なんてどうでもいい」だ。
現実でもイフでも仮想でもなんでもいい。花火の形状なんていう客観で決められてしまう、大衆に決められてしまうものなど関係ない。何者にも束縛されず、あなたと居たい、好きなことをしたい。つまり、自由になりたい。

 ついでに。時系列的には、なずなの父の死のときに「玉」が最初に見つかっているが、あれが「もしも」の始まりなのではないか。物語の発端はなずなの家庭事情であり、その始まりが父の死であり、だからあの玉が生まれた。
{/netabare}
↓勝手な感想
{netabare}
  と色々書いたが、なんとなく推進力不足感は否めない。原作にあたるドラマは見てないがイベントの配置が機械的というか、完全理詰めで作りました感があったからなんとなく、好きじゃない。
 でも勝手に感じ取ったテーマ的には好きだし、これだけの公開規模と君の名は。を期待されてる川村元気がこれを作るのか、と大変感嘆していたので満足です。
{/netabare}

投稿 : 2017/08/22
閲覧 : 278
サンキュー:

6

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