「あの夏で待ってる(TVアニメ動画)」

総合得点
83.9
感想・評価
2729
棚に入れた
13509
ランキング
303
★★★★☆ 3.7 (2729)
物語
3.6
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

観たかったものとは違った。

アニメーション制作:J.C.STAFF
2012年1月10日 - 3月27日に放映された全12話 + 特別編のTVアニメ。
監督は長井龍雪。

【概要/あらすじ】

舞台は、長野県小諸市の山と田圃だらけの地域。
主人公の、霧島 海人(きりしま かいと)は両親をずっと前に亡くし、
姉と二人で一軒家で暮らしている高校1年生。

海人は、ある夜に8mmカメラを手に湖周辺の夜景を撮影していたが、
その時に光とともに落下する謎の物体の衝撃に巻き込まれてしまう。
血塗れで湖に吹き飛ばされたはずだったが、海人は気がつくと自室で寝ていて目覚めた。
あれは、夢だったのか?

その朝、姉の七海のボリビアへの3ヶ月間の海外出張の話を海人は聞かされる。
そして、学校へ。友人の谷川柑菜(たにがわ かんな)と石垣哲朗(いしがき てつろう)
と北原美桜(きたはら みお)との変わらない日常。
変わったことと言えば、3年生に赤い髪の転校生が来たこと。

赤い髪の彼女の名は、貴月 イチカ(たかつき イチカ)で本作品のメインヒロイン。
イチカをひと目見たときから、何かを感じている海人。
そんな海人を横目に哲郎はイチカの情報を手に入れ、自主制作映画のグループに彼女を誘う。
イチカが転校してきて初めての友達、山乃檸檬(やまの れもん)もイチカについてくる形で参加。

その日の帰りの経緯が発端でイチカは、姉の不在の夏の間の海人の家に姉公認で二人で同居生活することに。
更にはイチカには海人に隠し事をしている様子、そしてそのことに絡んで海人の身体に異変が。

海人、イチカ、柑菜、哲郎、美桜、檸檬の6人による映画製作を通じての青春と恋が主軸であり、
SF(少し不思議)なひと夏の物語が始まるのだった。

【感想】

アニメ脚本家・黒田洋介が主導のオリジナル作品であり、ジャンルは青春ラブコメ。
『おねがい☆ティーチャー』『おねがい☆ツインズ』でも黒田洋介と同じく主要スタッフだった、
羽音たらくが今回もキャラ原案としての参加が企画時の会話の流れで決定。そして音楽担当は、I've sound
キャラも、性格やデザインの変更があるものの立ち位置的には、

草薙桂→霧島海人、風見みずほ→貴月イチカ、縁川小石→谷川柑菜、森野苺→山乃檸檬、水澄楓→北原美桜

と対応しているのが興味深く、『おねがい☆ティーチャー』のオマージュ作品であるので意識しない訳にはいかない。
しかしながら、監督は“おねがい☆シリーズ”の井出安軌ではなく、
『とらドラ!』『とある科学の超電磁砲』で人気監督であった長井龍雪であることに世知辛いものを感じたり。
前年の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』で長井監督と組んでキャラデザインを担当した田中将賀が、
キャラデザや総作画監督などを担当しているあたり、『おねティ』と『あの花』が合体したような作風と言うべき?

作風としては、“おねがい☆シリーズ”がエロゲ的なシチュから始まって、お色気成分が強めに対して、
こっちでは同居という状況は同じものの普通の青春モノっぽく舵を切っている感じ。

個人的には、キャラデザが気に入らない。
『あの花』は好きな作品であり、ヒロインの本間芽衣子は好きなキャラであるし、
『あの花』のキャラデザには文句ないのだが、
『あの夏で待ってる』では、キャラ原案の羽音たらくの持ち味を完全に潰して田中将賀の画風で描いている。
特に「ハア?」とか感情を表現する顔の動きが、羽音たらくのそれではなくて田中将賀のものとなっている。

羽音たらくによるキャラ原案を観たら海人もイチカも檸檬もアニメで目にするより数段美形なのであるが、
そこは親しみやすさ重視でわざとアニメでは顔を崩しているのかもしれない。

羽音たらくといえば美少女描き!であり、モブのひとりひとりまで全員が美少女!という拘りがある人だと思ってたが、
今作品で哲郎の姉やイチカの姉の顔を観るに、羽音たらくではあり得ない美人ではない正真正銘のモブ顔なのである。

キャラ原案とキャラクターデザインの役割の違いで言えば本来それで正しいのかもしれないが、
羽音たらくがキャラ原案を担当した過去の作品『R.O.D』『おねがい☆ティーチャー』『かみちゅ!』では、
キャラデザに不満がなかった身としては、『あの夏で待ってる』では互いの持ち味を潰し合って、
羽音たらく的な造形が薄れて平面的であっさりした顔の描き方になっていてダメに見えるのである。

『おねがい☆ティーチャー』から10年が経過して進歩した作画技術という点では、
こちらが圧勝ではありキャラ崩れもしてはいないのだが、上記の理由で残念でならない。

やはり、羽音たらくを最大限に活用できる監督は舛成孝二であると思った。

シナリオやキャラの話に移る。

イチカの性格は古典的ヒロインであり、なるべくして海人と惹かれ合いストーリーが進んでいくのだが、
ヒロインとしてのオーラが無い。いわばヒロイン役を与えられ冴えない男と恋を演じているようにしか見えない。

『おねがい☆ティーチャー』では、ヒロインの風見みずほ先生の美人力と正妻オーラとギャップ萌えが圧倒的であり、
草薙桂くんとのバカップルのラブのオーラが半端なく、美少女・縁川小石が桂くんを好きでも入り込む隙間が全くない。
赤い髪とメガネでヒロインのキャラを態々かぶらせてあるのだから、比較してしまうのも無理からぬ事である。

対しイチカはヒロインの座に甘えて冴えない男・海人を相手にして恋を演じているだけであり、
当て馬として海人に振られて涙を流す噛ませ担当のヒロインがいて、彼女はイチカとどこで差がついたのか?

青春の儚さや恋の痛みといった失恋ストーリーを楽しむ以前に、
この作品の神である脚本家の都合で踊らされているのを観ていてちょっとつらかった。
さらには海人が何故モテるのか?キャラの造形と人柄の描写でもうちょっと説得力が欲しかったかな?
噛ませ担当少女が海人に惚れたきっかけも、ぼんやりとし過ぎて伝わりにくい。
海人は恋愛を意識するとアグレッシブになるのではあるが、普段は基本的にはモブ同然な人物でしか無いし。

正直な話、おねティを意識させる要素は、このアニメには要らなかった。
と、15年ほど前のリアルタイムの視聴者としては偽らざる気持ちである。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2017/09/21
閲覧 : 384
サンキュー:

44

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